トレンド投資

不安定な市場で優良企業を見つける方法

ネット証券で企業の株を購入するのは、ピザを注文するくらい簡単です。

・企業名の略称である「ティッカーシンボル」
・購入したい株数
・注文期間(いつまでの買い注文にするのか?)

などのいくつかの項目を入力して、「注文ボタン」を押すだけ。
基本的にはこれで株を購入することができます。

とても簡単な作業です。

しかし、人生を変えるような高いリターンをもたらしてくれる優良企業を見つけて投資すること…

これはとても難しいことです。

そこで、その企業が優良であるかどうかを判断するために使われるのが、「株価指標」と言われるものです。

これは、株価から直接求められる数値のことだけではありません。

例えば、収益と業績が予想を上回るかどうか。
また、経営陣が優秀かどうか、競合他社が抱える課題を克服しているかなど、多くのものが挙げられます。

しかし、株価指標は万能ではありません。

例えば、あらゆる指標が完璧だと判断できる企業があったとします。
しかし、突然その企業に予測できなかった不祥事が起きたらどうでしょう。
一瞬にして優良企業ではなくなってしまいますよね。

このように指標だけを見ていると、せっかく掴みかけたチャンスを台無しにしてしまう可能性があります。

では、高いリターンをもたらしてくれる可能性がある優良企業を見つけるためには、何を見ればいいのでしょうか?

そこには、“ある重要な指標”があります。

50年かけて築かれた突破口


1968年、ジェームス・ローリーとビクター・ニーダーホッファーという2人の人物がある論文を発表しました。

これは、その後の投資家たちの判断に大きな影響を及ぼすものでした。

あなたは彼らの名前を聞いたことがないかもしれません。

ウォーレン・バフェット、ベンジャミン・グレアムや、チャーリー・マンガーのように誰もが知っているような人物ではありませんからね。

しかし、発表から半世紀以上たった今でも、彼らが作り上げた戦略は非常に有名です。

その論文の題名は、「Predictive and Statistical Properties of Insider Trading(仮邦題:内部関係者による取引の予測・統計的特性)」。
これによって、当時の常識を覆すような結果が明らかになりました。

それは、企業の内部関係者の自社株買いに便乗することで、利益が得られるというものです。

内部関係者は自社の状況を誰よりもよく知っています。

そんな彼らの行動に注目することで、企業の業績を予測できる可能性があると学術的に示されたのです。

そして、1980年代から1990年代にかけて、ネジャット・セイハンという人物が、ジェームス・ローリーとビクター・ニーダーホッファーの研究を引き継ぎ、いくつかの論文を発表します。

彼がしたのは、6万件以上の自社株買いと売買取引を調べ、内部関係者の動向を見ること。

その結果、将来の「異常なまでの」大きなリターンを予測できるという結論にたどり着きました。

例えば、企業の株価が大きく上昇する前には、内部関係者が株式の購入数を増やしている傾向がありました。

そしてセイハンは、このテーマに基づいて書籍「Investment Intelligence from Insider Trading(仮邦題:内部関係者による取引から得られる投資情報)」を執筆しました。

この書籍の出版から10年経ちましたが、内部関係者による取引の影響に関する研究はさらに進みました。
そして、いずれの研究も内部関係者による取引に便乗することは、平均以上のリターンをもたらすという同じ結論に至っています。

実際、カスパー・ダーダスの記事 「Identifying Profitable Insider Transactions(仮邦題:利益を生む内部関係者による取引の見極め方)」によれば、信頼性が高い内部関係者による自社株買いは、最初の12ヶ月間で約20.94%以上のリターンを生みだしているのです。

しかも、「Cluster Trading of Corporate Insiders(仮邦題:企業関係者によるクラスター買い)」と題された30年にわたる研究論文では、さらにリターンを得やすい内部関係者の自社株買いの特徴が明らかになりました。

それはクラスター買い(複数の企業関係者がごく短期間に株式を購入すること)であることです。

これは大きなカタリスト(株価上昇の材料)になりやすいのです。

実際、クラスター買いに便乗した場合をシミュレーションしてみると、最初の21日間で、通常の自社株買いの場合と比べて約2倍のリターンが得られたそうです。さらに時間が経つにつれ、そのパフォーマンスの差は広がっていくのです。

どんな時でも明確な指標


投資家は先行きが見えないことを嫌います。

だから、不透明性が高くなると市場の価格が変動するのです。

現在のように先行きが見えない情勢になると、ボラティリティ(価格の変動幅)が急速に大きくなる可能性が高くなります。

しかし、投資家が信頼できる指標の1つとして、内部関係者による自社株買いがあります。

内部関係者の動きを追うことは、企業経営が健全かどうかを知るための最適な方法の1つです。

そして、1968年のローリーとニーダーフォッファーによる独創的な論文が発表されて以来、半世紀以上にも及ぶ学術研究が行われました。

その結果、内部関係者の自社株買いに便乗することで、とても大きなリターンが得られるという結論が何度も示されたのです。

市場全体を見ずに個々の企業に注目することは、他の投資家が底で買い逃したのか、天井で買ってしまっているのかを見極めることにつながります。

そして、自社株買いの動きに注目することは、このことにさらなる手がかりを示してくれるでしょう。

ハイリターンを願って。

 

~編集部コメント~

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Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

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