3月は金の買い時?“ゴールド・サイクル”
「インフレ率が金価格に与える影響は、動物の足跡を追うようなものだ」
– ジュリアン・M・スナイダー
多くの金好きはインフレ率が高くなりそうなときは、いつもこの引用を持ち出します。
ただ、これを持ち出す理由がないわけではありません。
1970年1月から1980年1月にかけて、金は1オンスあたり36.56ドルから677.97ドルまで急騰したのです。
およそ1,754%の上昇。
当時、米国のニクソン大統領がドルと金の交換を停止したことで、ブレトンウッズ協定に加盟していた国々の貨幣価値が低下し、インフレが暴走していました。
そんな中、インフレ対策として金を保有しようとする人たちが増えたのです。
そこで、大きな富を手にした人たちは「このトレンドはいつまでも続く」と思っていました。
では、現実はどうでしょうか?
過去、「この上昇はいつまでも続く」と考えられ、その後、暴落した例は数多くあります。
・1637年のチューリップバブル
・2000年のドットコムバブル
・2008年の不動産バブル
などなど…
金も同様なことが言えるでしょう。
金はインフレヘッジではない
金はインフレを先取りします。
金の上昇は、これから起こることの前兆と言えるのです。
ただ、ほとんどの投資家がこのことを理解していません。
見落とされがちなのが、1980年以降、貴金属とインフレの相関関係が無くなってきているということ。
そして、消費者物価が急騰すると、金のパフォーマンスを低下させることになります。
貴金属はインフレが起こる前に動き出すのです。
例えば、2019年6月末、金はじりじりと上昇し始めました。
2020年3月、世界の株式市場が暴落した際、貴金属は“救命いかだ”の役割を果たしました。
そして、2020年8月までに金は61.3%上昇し、史上最高値を更新したのです。
しかし、米国のインフレがピークに達したのは2022年6月でした。
このように、金価格はインフレ発生前に上昇をし始めるのです。
また、もし金とインフレに大きな関連性があるなら、金の価格は“月まで”高騰しているでしょう。
ただ、貴金属は2020年8月から今日まで6.5%、つまりオンスあたり100ドル強しか上昇していません。
そして、金価格の動きを予測するために、他の方法もあります。
ゴールド・ウェーブ
金の動きには波があります。
コモディティスーパーサイクルや通貨サイクルのようなマクロ経済の流れがあるのです。
また、中央銀行、消費者、需要サイクルなど、より短い波もあります。
こうした短い波が「金の季節性」を生み出しているのです。
これは過去50年間の金の値動きを月別で比較したものですが、これを見ると3月、6月、10月は価格が下落していることが分かります。
さて、私は投資家たちに、史上最高値で買うのではなく、価格が下落している時に「安く」買うことを目指すのがいいと言えるでしょう。
もちろん、下落しているタイミングは少し恐怖を感じるかもしれません。
ただ、下落した後もまた価格が元に戻ってくることがわかっていたらどうでしょう?
そこで、過去の貴金属の価格の動きを見てみると、特に7月、8月、11月、12月、1月は価格が上昇していることが分かります。
つまり、過去下落していた3月は逆に“買い時”のチャンスと言えるかもしれません。
覚えておいて欲しいのが、このサイクルは偶然起きているものではないということ。
というのも過去30年間、世界の人口の3分の1以上を抱える中国とインドが、金の主要消費国として台頭してきました。
実際、中国の金需要は1990年代から5倍に爆発し、貴金属の世界最大の消費国となっているのです。
そして両国には、貴金属購入にまつわる祝日や伝統があります。
例えば、インドの消費者の金購入の50%は、11月から2月にかけての結婚シーズンに行われるのです。
同時に、10月中旬から11月中旬にかけては毎年恒例のディワリの祭典があります。
また、その直後にクリスマスとハヌカ*があります。
*ユダヤ教の祭典
そして、クリスマス・イブ、クリスマス当日、大晦日はプロポーズに最も人気のある日。
その後、毎年1月から2月にかけて旧正月もやってきます。
これがゴールド・ウェーブに拍車をかけることになるのです。
実際、第4四半期の中国の金宝飾品需要は金価格が高騰しているにも関わらず、17%増の148トンとなりました。
また、同国の年間金需要は10%以上急増し、600トンを超えたのです。
さらに、2月の年末年始には、ゴールド・ジュエリーの需要が24%増加。
このように、金価格の季節性があるのは、ただの偶然ではないのです。
このようなことを知った上で、金の購入タイミングを考えてみるといいかもしれませんね。
マシュー・カー
P.S.
~編集部~
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