米国株投資ガイド

出口戦略:いつ売るかはいつ買うかより重要

買った銘柄はいつ売ればいいのだろうか?

Oxfordクラブには「いつどのような形で売るかを考えずに、買ってはいけない」という教訓がある。

もしそういった「出口戦略」を持たずに買ってしまうと、ちょっと値上がりしたらすぐに売ってしまう(そしてその後どんどん上がり続ける株価を見て悔しい思いをする)、あるいは、値が下がっても「すぐに復活する」「いずれ復活する」と思いながらズルズル値下がりが続き塩漬けになってしまう・・・というようなことがあり得る。前者の場合は本来得られるはずの利益を逃すことになるし、後者の場合は資金効率が悪化してもったいない(資金を別の成長銘柄に振り分ければ、大きく利益が得られるかもしれないのに)。

そのため、特定の戦略を持ったポートフォリオごとに個別の出口戦略を持つことが重要だ。出口には例えば以下のようなものがある。


出口1 トレーリングストップ(TS)

トレーリング(Trail トレイル)とは追跡するという意味。

購入時点の株価から一定の割合株価が下がったら売る、という損切りラインを決めておくことは損失を限定させるための有効なルールのひとつだが、この考え方を「利益を最大化する」という目的のためにも使う。株価が値上がりするたびに、その売却ラインを引き上げるというもの。直近の最高値から何%下がったら売り、というのを決めておくのがTSだ。

たとえば20ドルのトレーリングストップを設定し、ある株を100ドルで購入したとしよう。値上がりを期待しての購入だ。しかし損失を抑えるため20ドルのTSを設定する。最初は購入時点の株価は100ドルだから、20ドル下の80ドルが売却ライン(損切りライン)ということになる。しかしあなたの目論見通りこの株が値上がりし150ドルになったとしよう。その場合の売却ラインは150ドルから20ドル下がった130ドルとなる。株価の上昇に合わせてトレーリングストップのラインが購入価格より高い金額に引き上がったことで、この時点であなたは30ドルの利益が確定したことになる。もしまだ株価が上がるのであれば、さらにそれに合わせてTSラインも引き上がる。

この例のようにTSは金額で指定(指値)するものと割合で指定するものがあるが、損失を限定させ、利益を最大限にまで伸ばすという目的は同じだ。「ルール」を決めることで投資から「感情」を排除することが可能となる。主な感情とは「今は下がってるけどそのうち上がるだろうから持っておこう→塩漬けの原因」「よし上がった!早く売りたい→大きな利益を逃す原因」だ。

なおTSには安値もしくは高値を「その日の終値」で見る方法と「その日の日中(ザラ場)でつけた最も安い(高い)株価」で見る方法の2種類がある。Oxford Clubでは主に「その日の終値」をベースにTS引き上げおよびTSにタッチしたことによる売却判断を行っている。

トレーリングストップについてその他のポイント

ザラ場ベースと終値ベース

ザラ場(市場が空いている時間)の値動きに合わせてTSをリアルタイムで引き上げる(もしくは下がった株価がTSにタッチした(下回った)かを見る)パターンと、その日の終値でTSを引き上げる(もしくは株価がTSにタッチした(下回った)かを見る)パターンがある。

 メリットデメリット
ザラ場ベース急な株価下落時にすぐに売却できるためリスクを抑えられる一時的に下げてすぐに上げた場合などにも売却してしまうため利益を取り損なう可能性がある
終値ベース一時的な株価の下げで売却しなくて良いため利益を最大限にまで伸ばせる可能性がある設定したTSの金額よりも1日の間に大幅に下落した場合、TS金額以上の損失が発生する可能性がある

ファンドなど大きな資産を運用するプロは、1日の間の急な値動きで拙速に優良株を売却してしまわないようにするため、終値ベースのTSを採用することが多い。Oxford Clubの売却アラート(助言サービス)も終値ベースを採用している

自動TSと手動TS

証券会社によっては自動TSを設定できるところがある(米国株が買える証券会社一覧)。自動TSは一度設定すればあとは自動的に売却金額の引き上げを行ってくれるので便利。

手動TSとは保有している銘柄に対して「逆指値売り注文」を行うことである(100ドルで購入した株に20ドルのTSをかけるときは、80ドルで逆指値売り注文を行い、株価が110ドルに上昇した時には金額を90ドルに修正した注文をする)。あるいは単純に、TS価格になった時に売却を行ってもよい。

意図的にTSの深さを調整する

株価が大きく変動しながら上昇していく場合など、通常よりもTS価格を深く設定し、タッチしにくくすることで大幅な価格上昇を狙うことがある。逆に株価がそろそろ下落しそうだと思った時には、通常よりもTS価格を浅く設定することで利益確保を狙うこともある。

Oxford Clubの助言サービスでは個別の銘柄や株式市場の状況を見ながらTS価格の引き上げに関する助言も行っている。


出口2 買ったら売らない

ウォーレン・バフェット氏は、理想の銘柄保有期間を聞かれたとき「永遠」だと答えた。もし徹底的に調べた企業の株があり、それが優良だと信じるなら、株価が下がったとしてもその株を手放す理由はない。むしろ逆に、配当が安定して見込める、あるいは利益の成長とともに株価の成長が見込める、と思うなら「保有し続ける理由」の方がたくさんある。

この「買ったら売らない」出口戦略は、資産形成ピラミッ®︎の一番下にあるコア・ポートフォリオで主に使われる戦略で、長期保有に値する優良株(資産株)やある特定のETF(上場投資信託)への投資で有効な戦略だ。

安定した銘柄を「買ったら売らずに持っておく」この戦略は、Buy and Holdと呼ばれる、米国株投資で最も簡単でベーシックな戦略だ(投資初心者はまず、Buy and Holdに値する優良銘柄からなるポートフォリオを組むことからはじめたい。Oxfordインカム・レターの複利成長インカムポートフォリオやOxfordキャピタル・レターのバケーション・ポートフォリオがそれに当たる)。


出口3 人生の目的に合わせて売る

繰り返し言うがOxford Clubでは単に資産の最大化だけを目的としているわけではない。欲しいものややりたいことがあってその資金を作る目的で投資をはじめ、達成したら株を現金に変えるというような出口もあってよい。例えば住宅を購入する頭金にするとか、海外旅行にいくとか、子供の学費に使うとか・・・。達成したい金額がありそれを達成したのなら売却して現金に戻す。人生を豊かに生きる上での素晴らしい出口戦略だ。


出口4 購入時のストーリーや前提が崩れたら売る

配当狙いの株にもかかわらず配当が停止されたあるいは減配となった。急成長を見込んだベンチャー企業への投資なのにもかかわらず、決算がいつもパッとしない。Buy and Holdのつもりだったがその企業が伝統的に持つ重要な強みが失われた。など、投資戦略や個別銘柄ごとの売る理由が出てきた場合、売却する。

投資するときにはいくつかの前提を置いているはずだ。配当が継続的に得られるだろう、この企業はイノベーションを起こして急成長するだろう、長期間安定しているだろう、など。そういった前提、投資する理由、ストーリーが崩れたとき、それはその銘柄を手放すときだ。

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