トレンド投資

冷めやらぬSPACブーム

『Journal of Accounting and Economics』の2016年10月号で、ローラ・ディミトロヴァ博士は、特別買収目的会社 (SPAC) を「貧乏人のプライベート・エクイティ・ファンド」と揶揄しました。(編集部注:プライベート・エクイティ・ファンドとは、複数の機関投資家や個人投資家から集めた資金を未上場企業に投資し、経営支援など経営に関与することで企業価値を高め、IPOや売却によって利益を得ることを目的としたファンドのことです。) 

私はSPACを掘り出し物ではなく、投資機会だと思っています。

企業が上場する前に早期に投資すれば、莫大な収益を得る可能性があることは誰もが知っています。

しかし、プライベート・エクイティ市場は、主に米国証券取引委員会によって非公開企業やヘッジファンドの未登録証券に投資する事を認められた適格投資家を対象としており、一般人は参加できません。更に困ったことに、企業が非上場でいる期間は長くなっています。これは、最も収益を狙える分野から締め出されている一般投資家にとっては「泣きっ面に蜂」です。

ここでSPACの出番なのです。

SPACは、目立った事業を持たずに上場します。IPO (新規株式公開) で多くの現金を手に入れた後は、通常2年以内に次なるポテンシャルを持つ破壊的企業やイノベーターと合併もしくは買収することになります。

SPACは目新しいものではありませんが、SPACへの関心が高まったのは最近のことです。

2003年から2016年にかけて、SPACは約310億ドルを調達しました。そして、2007年から2009年までの金融危機に至るまでの数年間、SPACは米国のIPO市場の3分の1以上を占めていました。その後数年間はブームが去っていましたが、再びSPACは巻き返しを図っています。

2020年、SPACは830億ドルという記録的な額を調達しました。当時、SPACのIPOは238件あり、2019年の前回記録より4倍増加しました。

2020年にドラフト・キングス (Nasdaq: DKNG) 、ニコラ (Nasdaq: NKLA) 、クアンタムスケープ (NYSE: QS) や他の注目企業がSPACを介して上場した後に、投資家の関心が一気に高まりました。というのも、2020年には二コラだけでなく、26社もの電気自動車会社がSPACで合併したのです。

しかし、SPACのブームはまだピークには達した訳ではありません。2020年のSPACの合併記録は、2021年には間違いなく塗り替えられるでしょう。実際、現時点での状況から考えて、記録が更新されないことはほぼありえません。 

と言うのも、2021年に入り最初のたった2か月で188ものSPACが上場し、600億ドルを調達しました。そして次なる大きな「獲物」を探し求めているのです。

個人投資家 (ディミトロヴァ氏が言う「貧乏人」) は、長いこと締め出されてきた市場に踏み込む投資機会としてSPACに注目しています。SPACに議論すべき点が無いとは言いませんが、適切な「破壊的企業」と合弁することで、投資家に莫大な財をもたらすでしょう。それは2020年にクアンタムスケープが投資家に1,000%以上の収益をもたらしたという事実からお分かりでしょう。

ですから、投資家はポートフォリオにSPACを加える余地を持たせておくと良いでしょう。しかし、どんな投資の時期であっても言えることですが、やみくもに株を買い漁ってはいけません。しっかりとデューデリジェンスを行ってから購入しましょう。

ハイリターンを願って。

マシュー

Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

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