米国配当株投資

なぜ、チャートを見るのか?

私のオフィスでは、ティッカーシンボルや価格が次々と目の前を通り過ぎていく中、トレーダーたちが売買注文を連呼していました。

私は、トレーダーたちが画面上を飛び交う情報をどのようにして理解し、売買の判断をしているのか理解できませんでした。

今から25年前、私は小さな企業でトレーディングアシスタントをしており、その場で何が起こっているのかを理解しようと必死になっていました。

それからしばらくして、友人が株価チャートに関する本を見せてくれたことがありました。私はそこに書かれた手法に夢中になっていきました。これこそ私が探し求めていたものだと。

そして、チャートを見れば、どの銘柄が勝つのか、逆にどの銘柄が負けるのか。それが分かるのではないかと思っていました。

 

しかし、実際はそんなに単純なことではありませんでした。

私は20年以上、株価チャートやテクニカル分析を研究して使ってきました。当時の私も含めて、この概念を知らなかった人は、チャートは未来を見せてくれるものだと勘違いしていますが、実際はそうではありません。

チャートが非常に有効なのは、長年にわたって何度も繰り返されてきたパターンを明らかにすることです。

考えてみれば簡単なことです。株式市場は「欲」と「恐怖」をあらわすものです。株価が上がっているときは、「恐怖」よりも「欲」が強い人が多く、株価が下がれば、その逆のことが起こるのです。

チャートは、その2つの感情を視覚的に表現したものなのです。

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クロロックス

テクニカル分析が最も得意とするところは、投資家が自分のリスクを理解し、株価が上昇、下降、または横ばいになると確信できるタイミングを見極めることです。

最も理解しやすい概念の一つが支持線と抵抗線です。

 

支持線=株価の「底」


支持線とは、株価がそれ以上下がらなかった価格水準のことで、これは「底」のような役割を果たします。何らかの理由で、株価がその水準に到達すると、買いが入って下落が止まります。

下の図はアッヴィ (NYSE: ABBV) のチャートです。株価が100ドル程度まで下がるたびに、反発しているのがわかります。なぜその水準で買いが入ったのかはわかりませんが(というかあまり気にしていませんが)、買いが入ったことで、株価は最終的に上昇しました。

つまり、例えば3月に103ドルで購入した後、株価が何かしらの理由で100ドルを下回った場合は、株価の回復を期待するよりも小さな損失とともに売却するのが良い選択になるかもしれないということです。

アッビィ

以下は、支持線のラインで買い手が買うのをやめてしまった、つまり支持線を抜けてしまった例です。ドラフトキングス

支持線を使ってリスクを把握するというのは、こういうことです。ドラフトキングス (Nasdaq: DKNG)の場合、57ドル付近が支持線になっていて、57ドルまで下がるたびに反発しました(2月下旬と3月上旬に支持線を突破したときも反発しました)。

しかし、5月に入ると57ドルを下回り、そのまま下落を続けました。54ドル程度で取引された時点で、投資家はこの株が近いうちに上昇に転じる可能性が低いことは分かっていたでしょう。

実際、57ドルというラインにおける「買い」の動きはなくなってしまいました。

 

抵抗線=株価の「天井」


抵抗線は支持線と同じですが、方向が逆で、株の「天井」になります。何らかの理由で、ある価格レベルになると、売りが買いを上回り、株価は下落します。

例えば、アメリカン航空グループ(Nasdaq: AAL) が24ドルで取引されていたとしても、26ドルを突破するまで待ったほうが良いでしょう。

アメリカン航空グループ

支持線と抵抗線についての注意点は、一定の価格である必要はないということです。支持線と抵抗線は、トレンドラインと呼ばれる形で上昇したり下降したりします。

バルブ・メーカーであるペンテア(NYSE: PNR) のチャートを見ると、2020年初頭から株価は上昇トレンドにあり、上昇してきたトレンドラインに沿って跳ね返されていることがわかります。

ペンテア

株価がトレンドラインに近づいたり、接触したりすると、トレンドラインが支持線として機能し、株価は上昇します。もし株価がトレンドラインを下回れば、上昇トレンドは終わったと考えられ、投資家は売却することを検討すべきです。

そして最後にご紹介するのは、玩具メーカーであるマテル (Nasdaq: MAT) のチャートです。この株は今年の4月から下降トレンドに入っていて、抵抗線として機能するトレンドラインに近づくたびに、株価は下落に転じていました。

しかしその後にはこの天井を突破し、ここから株価が上昇することを示唆しています。

マテル

支持線と抵抗線は、株式の「床」と「天井」のようなものだと考えてください。これらを突破すれば、状況が変わっていると考えるべきです。

もちろん株価チャートやその他の分析ツールは100%正しいわけではありませんが、投資家の心理が大きく変わったことを気づかせてくれます。

チャートを適切に使えば、損失を最小限に抑え、購入すべきタイミングを見極めることができるでしょう。

良い投資を。

マーク

Marc Lichtenfeld(マーク・リクテンフェルド)

Oxford Club チーフ・インカム・ストラテジスト。ウォール・ストリートを含め25年の経験のある配当投資の専門家。「Get Rich with Dividends(邦題:日本人の知らない秘密の収入源 年100回配当投資術)」著者。2013年に配当投資の専門誌Oxfordインカム・レターを創刊し、世界中に読者を持ち有料購読者は8万人を超える。FOX、CNBC、Forbesなどの有名メディアはもちろん、BloombergやBarrons、The Wall Street Journalといった権威ある金融専門メディアにも多数出演。 マークの記事一覧 ≫

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