トレンド投資

サイバーセキュリティ株に投資すべき理由

突然ですが、オフィスは解約されましたか?

確かに、スティーブ・カレルグレッグ・ダニエルズがタッグを組んだTV人気シリーズ「The Office (ジ・オフィス)」は随分前に終わっていて、今ではネットフリックスのオリジナルドラマ「スペース・フォース」に移籍済みです。

しかし現在、数多くの企業で経営陣は、今後のオフィス戦略を模索しています。 

ここで、ぐっと拳を握って不遇な現状に堪えたり、この問題を嘆いたりする前に、今のこの機会が実は、投資家たちを歓喜させるものであることをご理解ください。 

もし、パンデミックの中に明るい兆しを見付けるとすれば、それは多くの企業が、遂に、最大の浪費の一つである不動産から撤退する口実を得たということでしょう。

新型コロナウイルス感染症が発生する数年前に、世界最大級の経営コンサルティング会社である、アクセンチュアは、「平均的な企業は、30%から50%の不動産を無駄に保有している」と分析していました。

つまりこれは、毎年何百万ドルもの資金が、経営効率の観点では無益に浪費されていることを意味します。

新型コロナウイルス感染症が発生する前から、従業員たちは出張先やリモートワークなどによる勤務場所の柔軟性を受け入れてきました。コロナ以前から既に、オフィス所有は消滅への道を歩んでいたということです。

パンデミックは、その終焉を加速させているに過ぎないのです。  


空きデスクとお金で膨れ上がった財布

この大変革をリードしているのは、シリコンバレーです。

ハイテク企業の経営者たちは、オフィスに従業員の個室(パーテーション)を用意するとか、休憩室で従業員が電子レンジで温めた食事の匂いに対処する等の時代は終わったと考えています。

ツイッター (NYSE: TWTR)は従業員に対し、在宅勤務を永遠に可能にすると発表しました。

アルファベット(Nasdaq: GOOGL) フェイスブック(Nasdaq: FB)セールスフォース・ドットコム(NYSE: CRM)スラック・テクノロジーズ (NYSE: WORK) は、年内は在宅勤務を継続し、2021年まで従業員を元の職場に戻さない方針を打ち出しています。

ただコロナ明け後に、従業員たちが、元の職場のデスクに戻るかどうかはわかりません。

また、従業員たちを永久に在宅勤務させるかどうか検討している大手ハイテク企業が他にも6社あります。 

事実、スラック社のCEOであるスチュワート・バターフィールド氏は、この先、同社の従業員の少なくとも20%~40%が、リモートワークとなると考えています。

そして、その他多くの企業と同様、スラック社は、不動産に関する決定をこの先、数年以内に下さなければなりません。現在、ビジネス・テクノロジー・プラットフォームは、デスク数を30%~40%削減する実現性について、その検討を行っています。

同様の検討は、大小問わず各企業で行われている可能性が高いでしょう。今やどの企業でも、職場環境を 「脱3密」 する必要があるからです。しかし、企業の不動産は需要の先行きが不透明であることに加え、この傾向から出てくる別の問題があります。

誰もが包囲攻撃を受けている

私たちの新社会秩序(ニューノーマル)には、厄介な裏事情があります。

リモートで仕事をする人の増加に伴い、インターネットに接続されたデバイスが増したことで、DoS攻撃 (セキュリティ攻撃の一種) からフィッシング詐欺、ランサムウェア (自社システムに勝手に鍵をかけられ解除のための”身代金”を要求されるもの) に至るまで、あらゆるサイバー攻撃が増加し社会問題化しています。

そして、これらの攻撃は、個人のみでなく企業や政府機関に対しても同様に起きています。

今年に入ってから、80%の企業がサイバー攻撃が増加しているとのレポートがあります。また、ランサムウェアによる攻撃は148%増加しており、銀行に対する攻撃回数は238%も増加しています。

一方、フィッシング攻撃は2月から600%の急増を見せ、クラウド型攻撃は1月から4月にかけて630%激増しています。サイバー犯罪は警戒すべきレベルで急増しているのです。マイクロソフト(Nasdaq: MSFT)は、1日あたり1,200万件の攻撃を観測しています。

これがパンデミック中でのパンデミックです。
そして、この傾向に狙いを定めたことで、2020年には大きな成果がありました。

グローバル・X・サイバーセキュリティETF (Nasdaq: BUG)は今年、ナスダックとS&P 500指数を上回りました。

出所:Yahooファイナンス

また、クラウドストライク・ホールディングス  (Nasdaq: CRWD)ゼットスケーラー(Nasdaq: ZS)のような注目株は、2倍以上の上昇を見せており、2020年に入ってからオクタ (Nasdaq: OKTA)セールポイント・テクノロジー(NYSE: SAIL)テナブル・ホールディングス (Nasdaq: TENB)など、好調な企業群は、それぞれ40%以上のリターンを上げています。

さて、新型コロナウイルス感染症の問題が表面化する以前から、クラウドセキュリティは、既に今後、数年間のテクノロジー業界において、最速で成長する分野の1つになりつつありました。

2018年には、105億ドルが一般向けクラウドセキュリティに費やされました。そして、2022年までに、クラウドセキュリティへの支出総額は179億ドルを超えると予想されています。

しかし、私は、その合計額は遥かに大きくなる可能性があると考えています。特に、我々が直面している攻撃の驚異的な増加からしても、その確率は高いでしょう。オフィスで過ごす日々が数えるほどになっている人は少なからずいますし、この傾向は続くことが想定されるので。 

企業は肥大化した不動産経費を削減する必要があり、このニュースは投資家にとって朗報です。つまり、企業における無駄遣い5大分野の一つを抑制できるということです。また、ネットワーク・セキュリティ、ID管理ソフトウェア、その他のサイバー空間のセキュリティに、より一層の資金が投入されると考えます。

投資家たちにとって、リモートワーカーが増加する未来は、新たな”守り”と”利益”をもたらすことになるでしょう。

ハイリターンを願って。
マシュー

Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

関連する記事

Back to top button