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値動きが100%予測できる「ミーム株」

これまで私は、「株式市場に確実なものはない」とよく言ってきましたが、今になってそれが間違いだったことに気付きました。
 
ゲームストップ(NYSE: GME)やAMCエンターテインメント・ホールディングス(NYSE: AMC)など、今年天文学的な上昇を遂げたいわゆるミーム銘柄*が暴落することは、間違いなく100%保証されているのです。
 
(編集部注: ミーム銘柄とは、インターネットの掲示板やSNS上で発信された著名人の発言などをきっかけに個人投資家の取引が大きく膨らみ、株価が激しく動く銘柄のことです。)
 
だからといって、空売りをしろと言いたいわけでも、プット・オプションを買えと言いたいわけでもありません。
 
実際、大規模なヘッジファンドを含む多くのトレーダーがそのような取引を行い、すでに多額の損失を出しています。
 
短期的なパフォーマンスに関わらず、これらの銘柄がいずれ暴落することが確実なのはなぜでしょうか?
 
その理由は真の投資家なら誰もが理解すべきです。
 
では、詳しく見ていきましょう。
 
普通に考えれば、株式は企業のファンダメンタルズに基づいて動きます。
 
企業の業績が予想を上回り、その見通しがどんどん良くなれば株価は上昇します。
 
企業の業績が予想よりも悪く、見通しが悪いままであれば株価は下がります。
 
99%の上場企業は、99%の確率でそうなっているのです。
 
しかしペニー株(極端に株価の安い銘柄)やその他の薄利多売の銘柄など、市場には常に株価操作により利用されやすいものが存在します。
 
何十年もの間、悪質な業者は、不正なデータや偽の情報を通じてこれらの銘柄を誇大宣伝してきました。騙されやすい投資家はそれに飛びつき株価が上昇すれば、誇大宣伝を行った当の本人たちはあっさり売却し、株価を急落させるのです。
 
しかし今日のミーム株トレーダーたちはそうではありません。
 
第一に、宣伝はより自然発生的で、ソーシャルメディアのユーザーが「青天井!」や「永遠に持ち続ける!絶対この株は売らない!」などの無意味なコメントで、お互いを煽ることで盛り上がります。
 
そしてこれらの高騰銘柄は、(例え業績が悪かったとしても)実在する企業の株価の高騰を表すため、価総額は数十億ドルから数百億ドルに達することが多いのです。
 
とはいえ、ミーム銘柄には共通点があります。それは典型的なマネーゲームに巻き込まれることです。
 
空売りは本質的に悪いことではありません。
 
それは流動性を高め、スプレッドを狭め、高騰した株価を抑制するのに役立ちます。
 
しかし今年一部のヘッジファンドが行ったように、発行済株式の大半が空売りされている銘柄に賭けることは、期待できるリターンに対してリスクが大きいという、典型的な例です。
 
空売りの場合、利益の可能性は限られていますが、損失は無限大です(結局のところ株の下落率は最大でも100%ですが、株の上昇には限界がありません)。
 
初期のミーム株トレーダーたちは、空売りをしている人たちが、損切りやマージンコールへの対処で「空売りの返済買い 」を迫られれば、その株は高くなると理解していました。
 
しかし株価がバカバカしいくらいの水準に達すると、古い空売りに代わって新規の空売りが入ってきます。そして、また同じことが繰り返されるのです。
 
このようにして、株価は「極端な割高」から「笑いが止まらないほどのバカバカしさ」へと変化していくのです。
 
ポンジ・スキーム(詐欺)のように、このような状態が長く続くと全てが暴騰してしまいます。
 
下降局面が訪れるときは、今年の1月28日から2月19日にかけてゲームストップが90%以上も急落したように、急激で激しいものになる可能性が高いのです。
 
ここでの教訓は何でしょうか?
 
株価が極めて安い銘柄に空売りを仕掛けるのは愚かなことですが、同様に、株価が急上昇している非常に価格の高い株に、お金をつぎ込むのも愚かなことです。
 
よくメディアで、ミーム株トレーダーが「楽しんでいるだけ」と言っているのを耳にします。
 
株式市場でお金を稼ぐことは、特に短期的には楽しいことです。
 
しかし当然ですが、損することは楽しいことではありません。
 
確かにこれらのミーム株は上昇トレンドに乗っています。そしてそれはしばらく続くかもしれません。
 
しかしこの上昇トレンドは、企業の健全性や収益性を示す指標によって支えられているわけではないのです。
 
ウォーレン・バフェットの師匠であるベンジャミン・グレアムは、「市場は短期的には人気投票の場に過ぎないが、長期的には価値計測器である」という有名な言葉を残しています。
 
そしてその価値となる「重さ」の正体は企業の利益、つまり業績なのです。
 
ゲームストップやAMCをはじめとする多くのミーム銘柄には勢いがあります。しかしこれらの銘柄には重さとなるような業績がありません。また、すぐに業績が出ることもないでしょう。
 
つまり投票が終わり、計測が始まったときに、大きな試練が待っているということです。
 
不合理な行動がいつまで続くのか、この愚かなミーム取引がいつ終わるのかは誰にも予測できません。
 
しかし終わりは来ます。
そしてそれはいつも、バッド・エンドなのです。
 
良い投資を。
 
アレックス

Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

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