昔から「健康であれば、すべてを手に入れることができる」とよく言われています。
しかしそれは必ずしも正しいとは言えません。健康でも不幸な境遇にある人はたくさんいるのですから。
ですが逆に言えば、健康でなければ、いくら貯金があっても豊かな生活を送ることはできません。
つまり健康なくして真の豊かさは存在しないのです。
科学者たちは、健康は4つの柱で成り立っていると説明します。健康的な食事、定期的な運動、十分な睡眠、そして親密な人間関係です。
これから数回にわたってそれぞれの柱を紹介していきたいと思いますが、今日は最も重要な「健康的な食事」について見てみましょう。
何百万人もの米国人は、文字通り命を削るような食生活を送っています。
かつて喫煙は米国人にとって死因の第1位でしたが、現在は第2位になっています。
それに代わり、死因の第1位は食生活であることを世界疾病負荷研究は明らかにしています。
喫煙によって毎年50万人近くの米国人が亡くなっています。ですが砂糖や精製された炭水化物、加工肉を多く含む標準的な米国の食生活(SAD)では、さらに数十万人が死亡しています。
最悪なのは、これらの死は完全に防ぐことができるということです。
長年の読者は、私の親しい友人の一人が、ホールフーズの創業者兼最高経営責任者であり、読み応えのある『The Whole Foods Diet : The Lifesaving Plan for Health and Longevity(仮邦題:ホールフーズ・ダイエット 健康と長寿のための救命プラン)』の著者であるジョン・マッキー氏であることをご存知でしょう。
ジョンは長年にわたり、健康的な生活について多くのことを教えてくれました。また栄養学の権威であるマイケル・グレガー博士からも多くのことを学びました。
医師であり、『食事のせいで、死なないために』を執筆した国際的に著名な栄養学の専門家グレガー博士は、不老不死の秘訣を発見したのでしょうか?いや、そうではありません。
彼は、米国人の死因トップ15を予防し、進行を食い止め、さらには逆行させることを使命としているのです。
死因トップ15には、心臓病、肺疾患、脳疾患、消化器系の癌、感染症、糖尿病、高血圧、肝臓疾患、血液癌、腎臓疾患、乳癌、自殺傾向のある鬱病、前立腺癌、パーキンソン病、そして医原性の原因が含まれます。
(医原性とは、”医師の診断や治療によって引き起こされる”という意味です。医療ミスは、この国の死因の第3位なのです。)
グレガー博士は、これらの死は少なくとも部分的には食べ方に関係しているので、予防できると主張しています。
早死には、運が悪かったり、遺伝子が悪かったりするだけだと思っている人がいますがそうではありません。あるエビデンスによると、これらの病気のリスクのうち、遺伝が関係しているのは10%から20%にすぎず、残りのほとんどは、食生活の乱れによるものなのです。
ですが残念なことに、ほとんどの人はこの重要なテーマについて医師から必要なアドバイスを受けていません。
そもそも全国の医学部のうち、栄養学の授業を一つでも提供している大学は4分の1しかありません。また最近の調査では、卒業した医師7人のうち6人が、患者の食生活について相談に応じるための十分な訓練を受けていないと感じています。
食生活と病気との深い関係については、ほとんどの人が自分で解決する必要があるのです。
そこで、まずは基本的なことから見て行きましょう。
慢性疾患の予防には、シンプルで健康的な4つの生活習慣が大きく影響します。
- 喫煙しない
- 太りすぎない
- 1日30分以上の運動をする
- 健康的な食事をする
この4つの項目にチェックを入れることができれば、がんのリスクを3分の1以上、脳卒中のリスクを50%、心筋梗塞のリスクを80%、糖尿病のリスクを90%減らすことができるとグレガー博士は述べています。
最初の3つの生活習慣はわかりやすいですね。しかし「健康的な食事」というのは賛否両論があるでしょう。人間にとって最適な食事が何かについては、栄養学の専門家でも意見が分かれます。
しかし野菜と果物を中心とした植物性食品を最大限に摂取し、加工されたジャンクフードの摂取を最小限に抑える必要があるという点では、大方の意見が一致しています。
01. 3食分 の豆を食べる。食生活とがんに関する最も総合的な分析(50万件以上の研究のレビュー)が、2007年に米国がん研究所から発表されました。要約された推奨事項の一つは、毎食、全粒穀物あるいは豆類を食べることでした。毎週でも毎日でもなく毎食なのです。
02. 2食分の緑色野菜を食べる。ケール、ルッコラ、スイバ、ホウレンソウ、スイスチャード、マスタードグリーン、カブの葉などを含みます。濃い緑の葉野菜は地球上で最も健康的な食品であり、カロリーあたりの栄養密度が最も高いのです。
03. 2食分のアスパラガス、アーティチョーク、ビーツ、にんじん、ピーマン、とうもろこし、たまねぎ、じゃがいも、スナップエンドウ、カボチャ、トマト、ズッキーニなどを食べる。多種多様な野菜を摂ることで、健康面でも大きな効果が期待できます。
04. 少なくとも1食分のベリー類を取り入れる。イチゴ、ブルーベリー、ブラックベリーは最も健康的な果物であり、アンチエイジングや抗がん作用のある抗酸化物質がたっぷり含まれています。
05. 3食分のその他の果物(オレンジ、アプリコット、バナナ、グレープフルーツ、モモ、ナシ、ザクロ、マンゴーなど)を食べる。グレガー博士は、健康的な食事をする時間がないと言う人は、リンゴに出会ったことがないと言っています。
06. 挽いた亜麻仁(アマニ)を大さじ1杯取る。ヨーグルトやサラダなど、何にでも振りかけることができます。亜麻仁には他の食品の平均100倍のリグナンが含まれており、腫瘍の増殖率を下げる効果も期待できます。
07. 全粒穀物を3食分取る。玄米やワイルドライス 、大麦、オート麦(またはオートミール)、キヌア、キビ、ライ麦、全粒粉パスタ、ポップコーンなどを含みます。
08. 少なくとも1食分のアブラナ科の野菜(ブロッコリー、キャベツ、コラード、ケール、芽キャベツ)を食べる。グレガー博士は、これこそが食生活における最も重要な変化だと言っています。アブラナ科の野菜は、がんの進行リスクを50%削減すると言われています。
09. 1食分のナッツ類や種子類(アーモンド、ブラジルナッツ、カシューナッツ、チアシード、マカデミアナッツ、ピーカン、ピスタチオ、カボチャの種、ヒマワリの種、クルミなど)を取り入れる。ナッツほど人間の寿命との相関性が高い食品はありません。
10. 小さじ1/4のターメリックパウダーを取る。ウコンに含まれる鮮やかな黄色の化学物質であるクルクミンは、肺疾患、脳疾患、そして多発性骨髄腫、大腸癌、膵臓癌などの様々な癌の予防に一役買う可能性があることが研究で明らかになっています。グレガー博士は、ウコンを「魔法の薬」に最も近いものと呼んでいます。
11. グラス5杯の水を飲む。水分はコーヒーや緑茶でも摂ることができます。
12. 1食分の運動をする。ランニングなどの激しい運動を45分、あるいは早歩きなどの中程度の運動を90分行うのが理想的です。運動は健康的な体重を維持するだけでなく、軽度の認知機能低下を防ぎ、免疫力を高め、高血圧を予防し、記憶力を高め、気分を高め、睡眠の質を向上させる効果があります。
このようなチェックリストは、人によっては過剰な指示のように思えるかもしれません。しかしあまりにも多くの米国人が、将来のことなどどうでもいいと思って食事をしているのです。
ウォーレン・バフェット氏もその一人です。彼は前立腺がんやその他の健康問題と闘っています。しかし彼が大好きなハンバーガーやデイリークイーンのサンデーには脂肪がたっぷりと含まれていますし、毎日飲むコーラには果糖ぶどう糖液糖がたっぷり含まれています。また、バークシャー・ハサウェイ社の株主総会では、ブロッコリーを食べたからと言って100歳まで生きられるという証拠はないと主張しています。
彼は最新の栄養学を提供する、情報豊富で楽しい、商業目的ではないグレガー博士のウェブサイト、NutritionFacts.orgを訪れるかもしれません。
グレガー博士は世界の科学文献を調査し、主要な死因や障害を予防し、さらには逆行させるためのエビデンスに基づいた食生活を明らかにしています。
聖人のような食事をしたり、自分の食事の選択にこだわったりする必要はありません。あなたの健康は、特別なご馳走や特別な日に左右されるものではなく、日々の食生活で決まるのです。
もちろん、世の中には何百もの食習慣があり、それぞれが最高のものだと主張しています。ではなぜグレガー博士のアプローチを採用するのでしょうか?
彼は著書『食事のせいで、死なないために』でその重要な疑問に答えています。
何か新しい食習慣を売りつけようとする人がいたら、一つだけ簡単な質問をしてみてください。「あなたのその提案で、心臓病を治すことは証明されていますか?もしそうでなければ、なぜそれを売りつけようと考えるのですか?」
全粒粉、植物性食品を中心とした食事が人間の死因トップを逆転させることができるのであれば、そのエビデンスが覆されない限り、その食習慣に従うべきなのです。
さらに他の主要な死因の予防、治療、阻止にも効果があるという事実は、この方法で食事をすることを圧倒的に支持しているように思えます。
健康的な食生活を始めるのに、早すぎるということも、遅すぎるということもありません。
それは人生の問題であり、早死にするかどうかの問題でもあるのです。
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