最近ある購読者の方から、自分が保有しているいくつかの銘柄でインサイダーによる売り、つまり経営陣が個人で保有する自社の株の売却が行われていることに不安を感じる、という手紙をいただきました。
彼はその銘柄を売却するべきでしょうか?いや、必ずしもそうとは限りません。
役員や取締役(インサイダー)が株を売却する理由には、事業の見通しとは関係のないこともあるからです。
例えばポートフォリオの分散化を図るためなのかもしれません。
多くの経営者は、純資産のほとんどを自社株で占めています。
例えばビル・ゲイツは何十年もの間、マイクロソフト (Nasdaq: MSFT) の株を売り続けています。それは、ソフトウェア業界や自分が設立した企業の見通しが良くなかったからでしょうか?
いいえ、そうではありません。
彼の数十億ドルの財産の大部分は今でも株で保有しているので、リスクを他の資産に分散することは理にかなっているのです。
とはいえ、彼は今でも230億ドル以上のマイクロソフト株を保有しています。
またインサイダーにも他の人と同様に経費がかかり、支出のために株を売却しなければならないこともあるでしょう。
例えば別荘を買ったり、子供や孫の学費を払ったりするかもしれません。
あるいは離婚して株の半分を売る必要があるのかもしれません。
インサイダーが売却する理由は、事業の健全性や将来性とはほとんど関係ない場合がいくらでもあるのです。
一方で、企業の短期的な見通しが売却理由の全てである場合もあります。
例えばエンロンのインサイダーは、同社が破産申請する前の1年間に11億ドル相当の株式を売却しました。
要するにインサイダー売りは慎重になる必要があるのです。時にネガティブなサインである場合もあれば、そうでない場合もあるからです。
ここで方程式を逆転させてみましょう。
なぜインサイダーは現在の市場価格において、自分のお金で自社株を大量に購入するのでしょうか?
論理的な答えは一つしかありません。
彼らは自社の株式が、価値よりもはるかに低い価格で売られていると感じているからです。つまりインサイダーが手放している株を買ったり、熱心に買っている株を売ったりすることは、根本的な間違いなのです。
※SEC(米国証券取引委員会)は企業のインサイダー(CEO、役員、実質的所有者)に対し、売買が行われた場合には2営業日以内にフォーム 4を提出し、購入した株式数、時期、価格などを詳細に報告するよう義務付けています。その情報は誰でもネットで見ることができますから、私たちは彼らインサイダーの動きを見て投資の参考にすることができます。
最近の企業の状況が予想以上に悪い場合でも、インサイダーが大量に購入している場合は、一般的に企業の見通しが変わりつつあることを示しています。
そしてその後、株価は上昇する可能性が高いのです。
実際多くの学術研究で、インサイダーが大量に購入した銘柄はその後の数か月間、市場全体をアウトパフォームする傾向があることが確認されています。
現在インサイダーがどの銘柄を買っているか知っていますか?是非とも知るべきです。
インサイダーが購入しているのは、実店舗型の小売業者、テクノロジーリーダー、バイオテクノロジー、金融企業、ディスラプティブ(創造的破壊)企業といった、驚くべき組み合わせなのです。
これらの銘柄の多くは、将来的に市場をリードすることになるでしょう。
もちろん市場のシグナルに絶対性はありません。しかしインサイダーが不当な優位性を持っているのは明らかなのです。
良い投資を。
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