TikTokが大手ハイテク企業から恐れられる理由

前回のメルマガでは、米国内でのTikTokの利用制限によって株価が上昇した企業についてご紹介しました。
広告業界で脅威的な存在と認識され始めているTikTokですが、そもそもなぜTikTokがそのような存在だと認識されることになったのか、TikTokの広告を紐解きながら考えていきたいと思います。
TikTokの広告収入は110億ドルにものぼる
まずTikTokの広告収入がどれくらいかというと、2022年は110億ドル、日本円で1兆4,300億円にものぼります。
YouTubeの2,245億ドル、Facebookの1,136億ドル、instagramの174億ドルには及びませんが、Twitterやスナップを追い越すレベルにまで成長しています。
リサーチ会社のOmdiaの調査によると、2027年までにTikTokの広告収入がMetaとYouTubeの動画広告収入の合計を上回るという調査結果もあるほどです。
TikTokの実際のユーザー層
TikTokはZ世代に人気のあるアプリとして知られていますが、米国での実際のユーザー層はどのようになっているのか見てみましょう。
下のグラフは米国におけるユーザーを年齢別に示したもの。
(出所:EXPLODING TOPICS)
米国のTikTokユーザーのうち、最も多い割合(25%)は10歳から19歳。
TikTokユーザーの47.4%は30歳未満です。
50代以上は11%とかなり割合が低くなっています。
ちなみに日本のTikTokユーザーのうち、最も多い割合(24.4%)は20代。
TikTokユーザーの48.2%が30歳未満で、こちらは米国とほぼ変わらず。
しかし、50代以上は20.1%と米国の約2倍。
“おじさんティックトッカー”なるものが流行った影響があるのでしょうか。
コンテンツへの支出はTikTokがトップ
ここからは日本の統計データになりますが、TikTokのユーザーはコンテンツへの支出に積極的。
その金額は主要プラットフォーム(TikTok、Twitter、Facebook、Instagram、LINE、YouTube)の中でトップの約8万5,862円。
全体平均の約4万2,538円の2倍を超えています。
主要プラットフォームのなかでもユーザーの平均世帯年収が646万円と、Facebookの659万円に次ぐ高さという調査結果もあります。
Googleやアマゾン、Metaなどあらゆる企業がTikTokを脅威として捉えるのも納得です。
TikTokでの支出が多い理由
ではなぜTikTokにおける支出が他の2倍以上にもなっているのか。
その理由の1つとして考えられるのは、レコメンド機能を利用しているユーザーが多いことと、広告がユーザーの求めるニーズと合致しているから。
レコメンド機能とは、ユーザーの趣味趣向に合致した商品やサービスを自動的におすすめしてくれる仕組みのことです。
他のプラットフォームでも同様の機能はありますが、TikTokユーザーがおすすめ機能を利用している割合は、全体平均の2倍近い46.5%。
そして広告については、ユーザーが楽しめるコンテンツや情報として、体験を提供するような広告になっていることが、広告として構えられることなく、自然に受け入れられる要因になっているようです。
また、TikTokではライブ配信における「投げ銭」の利用率が高く、プラットフォーム上での課金や決済に対するユーザーの心理的ハードルの低さも影響していると考えられています。
テレビCMやYouTube広告など、いかにも広告感があると「早く終わらないかなー」と思ってしまいますし、スキップしてしまうことが多いですよね。
でもTikTokというプラットフォームでは、広告側がユーザーに歩み寄る形で広告を作ることで、結果的にユーザーによる支出も増えるということが起こっているのが現状のようです。
TikTokの利用制限がかかったときにそのシェアを獲得できるのは、独特な世界観を作り出し、広告側にも影響を与えられるプラットフォーム作りなのかもしれませんね。
小島璃子
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