「いつ売るか」がリターンを決める
今まで私は、成功する投資家は市場全体の動きを見てタイミングを見計らうのではなく、市場に関係なく、あるいは市場よりも早く成長する個別の銘柄に投資することが大事だとお伝えしてきました。そしてそのための最良の方法は次の3つです。
モメンタム投資、バリュー投資、インサイダー投資(知識豊富なインサイダー(その企業の経営者など)の動きに便乗する方法)です。
しかし、それは買うときに限った話です。リターンを最大化するには、正しいタイミングで「売る」ことも必要です。大多数の投資家がそうであるように、もしあなたに前もって熟考した売りの法則がなければ、経験則や勘だけに頼って売ることになります。そして、それが最高の投資パフォーマンスにつながることは、ほぼありません。
Oxfordインカム・レターの読者ならご存知のように、Oxford クラブでは売却戦略に関して、一部の例を除いて、トレーリングストップを採用しています。
例えば、20ドルで株を購入し、25%のトレーリングストップを設定した場合、その株価が15ドルに下がったらストップ価格に抵触するため、即座に売却となります。
そして、株価の上昇に合わせてストップ価格も引き上げます。例として、株価が30ドルになった場合のストップ価格は22.50ドルで、株価が40ドルになった場合のストップ価格は30ドルという具合です。
では、トレーリングストップは本当に上手く機能するのでしょうか?
もちろん、答えはイエスです。トレーリングストップはあなたの利益と元金を保護してくれます。そして、それを裏付ける研究もあります。
ニューヨーク州立大学アルバニー校の金融教授ら(クリストフ・フォジェール、ハニー A. ショーキー、デビッド M. スミス)が、年金基金や財団、富裕層口座の資産運用管理者のパフォーマンスを調査した研究が学術誌「ザ・ジャーナル・オブ・ポートフォリオ・マネジメント」で発表されました。
大半の機関投資家は厳格な投資ガイドライン下で活動していることが功を奏し、教授たちは株式の売却に対して異なるアプローチに基づいたパフォーマンスを分析することができました。
結果はどうだったでしょうか?最も成績が良かったのは、感情的な理由で株式を保有する余地をほぼ与えない、制限的なルールを採用している資産運用者たちでした。一方、「柔軟な」売り戦略に頼った資産運用者は、はるかに悪い結果でした。
これは当然の結果です。
機関投資家がミスを犯した際に合理化する傾向は、個人投資家と同様です。(ウォール街には「ブローカーは取引がうまくいかないことを何と呼ぶのか?長期投資だ。(編集部注:自分は長期投資をしているから短期的に値が下がっていても心配ない、という、この場合は言い訳)」という古い決まり文句があります。)
そして、規律あるトレーリングストップ戦略を忠実に守れば、感情主導の取引ミスを排除することができます。トレーリングストップ戦略は、貪欲さを無くし、恐怖心を克服し、「この株の風向きはいつか良くなるだろう」といった夢見がちな思考を打破してくれるのです。
もちろん、トレーリングストップが唯一の効果的な売りの法則ではありませんが、最良で簡単に導入できる法則の一つといっても過言ではないでしょう。
トレーリングストップを導入することにより、小さな損失がとんでもない損失に膨らむことを回避できます。また、トレーリングストップにより、株価が上昇トレンドにあるにもかかわらず、その株を誤って売却することもありません。
トレーリングストップはいくつかの証券会社でも使用することができますし、事前に保有銘柄、購入価格、使用したいトレーリングストップ%を入力しておくと、終値が設定したストップ価格を下回った時にスマホやメールへアラートを送信するというTradeStops(編集部注:英語のみ)というツールもあります。
いずれにせよ重要なことは、値下がりし始めた銘柄を売却しても構わないと思う価格をあらかじめ決めておくということです。
過去のチャートを見て「ここで売るべきだった」と言うのは簡単です。ですが将来に目を向けて「いつ」売るべきかを考えるのは簡単なことではありません。しかしトレーリングストップを活用すれば、最大限にまで利益を上昇させ、万が一のための損失を想定の範囲に抑えることができるのです。
これは、リターンの「保証」を欲する人には最強の戦略です。
良い投資を。
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