トレンド投資

宇宙観光産業ブームに乗り遅れるな

レースはすでに始まっています。
 
混沌とした競争の中において、アマゾン (Nasdaq: AMZN) は先行しているといえます…少なくとも現時点では。
 
オンラインの小売業とウェブサービスを提供する大手企業のアマゾン創業者であるジェフ・ベゾスは、7月5日に最高経営責任者(CEO)を退任し、宇宙へ旅立ちます。
 
競合企業が羨むほどの偉業です。
 
2021年7月20日、ベゾスは弟のマークと地球から100キロ離れた宇宙におよそ11分間滞在します。同氏が創業した宇宙企業のブルーオリジンが造った宇宙船「ニュー・シェパード」の初の乗組員になるのです。
 
しかし、これが新たな産業の始まりだとは思わないでください。
 
これは単に20年以上前に始まった物語の続きにすぎませんが、あらたな章においては、投資家が活用できる何十億ドルという潜在的な需要があると見ています。
 
 

1兆4,000億ドル以上を手に


1995年、ベゾスは両親から得た25万ドルでオンライン書店のアマゾンを創業し、世界最大企業の一角にまで成長させました。
 
アマゾンのプライム会員は2億人以上おり、アマゾン・ウェブ・サービスは企業にとって欠かせないものです。そしてアマゾンは食料品店チェーンのホールフーズ・マーケット、MGMスタジオ、およびセキュリティ会社のリングを所有し、電気自動車企業のリヴィアンの株も保有しています。
 
しかし、ベゾスはブルー・オリジンでの仕事が特に重要と考えています。
 
2000年に同氏はブルー・オリジンを設立し、2017年、同氏は自分が情熱をかけたプロジェクトを維持するため毎年アマゾンの株式を10億ドルほど売却し続けていました。
 
しかし、ブルー・オリジンは増え続けている民間宇宙企業の一つにすぎません。ここ数十年の間に、こういった企業が現れ出てきたことは非常に現実的な理由が根底にあります。
 
金銭的なことも一因となります。今後10年で、グローバル宇宙産業は3倍規模になり、その価額は2019年の4,240憶ドルからおよそ1兆4千億ドルまで跳ね上がるでしょう。
 
そして、スペースXの創業者のイーロン・マスクやヴァージン・ギャラクティック (NYSE: SPCE) のリチャード・ブランソンといった世界の名だたる人物が、資金をはたいて競っているのです。
 
以前、私は必要とされる衛星を軌道に乗せることが、どれだけ大きなビジネスになるかについてお話しました。しかし、最も注目を集めている宇宙開発の領域への投資は、長い期間賛否が分かれていました。

 

専門家だけにしてください!


ベゾスやブランソンは宇宙に旅立つ初の億万長者ではありません。
(編集部注釈:宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティック・ホールディングスの創業者リチャード・ブランソンと同社従業員が2021年7月11日に有人宇宙船の試験飛行に成功しました)
 
その栄誉は既に、2度宇宙へ行ったことがあるソフトウェア開発者のチャールズ・シモ二―に与えられています。
 
それはある企業のお陰で。
 
2001年から2010年にかけて、バージニア州に拠点を置くスペース・アドベンチャーは、国際宇宙ステーションでの滞在も含め、世界の大富豪を宇宙空間に連れて行きました。
 
2001年4月28日、アメリカ人のエンジニアかつ企業家のデニス・チトーが世界初の宇宙旅行者になりました。
 
チトーはロシアのソユーズTM-32のミッションへの参加に2,000万ドル支払い、同氏は合計で7日間と22時間4分、宇宙に滞在しました。
 
同氏は地球を128周し、数十億ドル産業の幕開けに貢献しました。しかしNASA(米国航空宇宙局)の堅物たちはこのことを望んでいませんでした。彼らにとって宇宙は専門家の分野であり、素人のものではないからです。彼らはチトーを公の場で批判しました。
 
スペース・アドベンチャーの事業は、7人の旅行者を数十億ドルのチケットで宇宙ステーションに連れて行ったことで順調に推移しました。
 
しかし、NASAがスペース・シャトルを退役させた時、状況は一変し、あっという間に収束してしまったのです。
 
宇宙へ行く手段がなくなったため、NASAは必然的に2011年から2020年にかけてソユーズのミッションの席で買えるものは全て購入しました。
 
つまり、民間人用の席がなくなったということです。
 
席を得ることが困難になったため、ブルー・オリジン、スペースX、ヴァージン・ギャラクティックなどの企業が名乗り出してきました。米国の宇宙産業は民営化かつ商業化されていき、現在では誰もが「勝者」として公の場に登場してきます。
 
 

野心旺盛な浪費家たち


こういった企業の台頭により、2倍の効果になるのです。専門家が宇宙旅行をしやすくなる一方で、宇宙観光という新たな冒険を創出しているのです。事実、2020年、スペースXとスペース・アドベンチャーはクルードラゴン(スペースX社が開発した有人宇宙船)に旅行者を乗船させる旨、合意しました。
 
2020年、スペースXは宇宙ステーションに初めて宇宙飛行士を送り込んだ民間企業になりました。スペース・シャトルが退役したため、9年ぶりに米国内から有人宇宙船の打ち上げを見ることができたのです。
 
したがって、ベゾスは初の宇宙旅行者でもなければ、宇宙に行く初の億万長者でもないのです。今月の同氏の旅行は単に多くの人にチャンスが開かれ…というだけで止めることなく、投資家はしっかりと見守り、注目を続けるべきテーマと考えます。
 
宇宙旅行を予定している人たちは他にもいます。
 
シフト4ペイメンツ (NYSE: FOUR) の最高経営責任者(CEO)のジャレッド・アイザックマンは今年の9月、初の民間人による宇宙ミッションの指揮官になります。
 
株式会社Z O Z Oの創業者であり、億万長者の企業家かつ美術品収集家の前澤友作氏は、12月にスペース・アドベンチャーで宇宙ステーションへ旅立つ予定です。前澤氏は同社で8番目の宇宙旅行者で、12日間宇宙に滞在し、2023年のスペースXのスターシップにも乗船予定です。
 
グーグルの共同創業者であるセルゲイ・ブリンは宇宙ステーションに行くため、スペース・アドベンチャーに500万ドルの手付金を支払いましたが、いつ乗船するかは未定です。
 
そして、ビットコインの億万長者のタイラーとキャメロン・ウィンクルボス兄弟は、将来ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船で地球を発つ予定にしています。
 
ヴァージン・ギャラクティックは、当初個人の大富豪を対象にしていましたが、獲得可能な最大市場規模は9,000億ドルと見込んでいます。そして近い将来、宇宙観光市場は2030年までに、80憶ドルまで成長すると予測されています。
 
こういった数字は、世界で最も「排他的なクラブ」の一つだった宇宙産業が間もなく一般にも開かれることを意味しているのです。今まで宇宙へ旅立ったのはたった600人弱しかいません。その中で旅行者はごくわずかです。
 
今後、その数は増えるでしょう…そしてこれらの企業は、冒険を求る開拓者や投資家に最も興奮に満ちた機会を提供しているといえます。
 
ハイリターンを願って。

マシュー

Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

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