AI時代の「ツルハシとシャベル」銘柄
私が投資を始めたのは1990年代初頭のことでした。
そしてある程度、投資の仕組みがわかってきたと思い始めたころ、ドットコム・バブルの隆盛と崩壊が起こりました
突然、特に利益を上げているわけでもない銘柄の株価が、1日に2倍以上になるような状況になったのです。
正直、この出来事には完全に困惑しました。
なぜなら当時、必死に企業の評価額や財務諸表の読み方を勉強していた私は、「真に価値のある企業」だけが株価を伸ばすと信じていたからです。
しかし困惑する中でも私は一つのことを学びました。
人々が熱狂する大きなブームが訪れた時に考えるべきは、そのブームに直接関連した企業の中で誰が最終的な勝者になるかではないということです。
本当に考えるべきは、「ツルハシとシャベル」銘柄です。
これは、どの企業が勝つかに関わらずに利益を上げる企業を指します。
「ツルハシとシャベル銘柄」という用語は、19世紀のゴールドラッシュに由来します。
当時、カリフォルニアで金が見つかったというニュースを聞いた多くに人々が金を掘り当てることで一攫千金を目指しました。
結果として、実際に金を掘り当てて巨万の富を得た人はほんの一握り。
一方で、確実に利益を上げたのは金採掘を支えるビジネスを行った人々でした。
具体的には、金を掘るために必要な道具であるピックやシャベルを売る商人たちです。
彼らは、金採掘者たちが成功するかどうかに関係なく、道具を販売することで確実に収益を得ました。
これは単なる例え話ではありません。
当時サンフランシスコで成功を収めたリーバイ・ストラウスのような実例も見られます。
ストラウスは、金採掘者向けに丈夫なデニム製のパンツ(後のジーンズ)を販売することで、金そのものではなく周辺需要を利用して巨額の利益を得ました。
このように、「賭け」に出て金を掘り当てようとした金採掘者に対し、道具やサービスを提供した側は「リスクを抑えつつ安定した利益」を確保することができました。
もしあなたが当時、金採掘者かサービスを提供する商人のどちらかに出資をするとしたらどちらを選ぶでしょうか?
この教訓が「ツルハシとシャベル」銘柄という投資戦略の基本になっています。
そして今、市場に訪れているのAIブーム。
この中で「ツルハシとシャベル」銘柄になりうるのはどんな企業でしょうか?
私の考えでは、原子力関連企業です。
これらの企業は、AIが必要とする膨大なエネルギーを供給することができ、AI業界で何が起ころうとも利益を得られる立場にあるからです。
AIが膨大なエネルギーを必要とする理由は、AIモデルのトレーニングや運用が非常に多くの計算処理を必要とするからです。
特に、ChatGPTのような大規模言語モデルや画像生成AIは、大量のデータを処理し、高度な予測や生成を行うために数千、時には数万の高性能GPU(グラフィックス処理ユニット)を同時に稼働させます。
このプロセスでは、膨大な電力が消費され、データセンターの冷却システムの稼働も含め、世界的なエネルギー需要を押し上げているのです。
もちろん、原子力ついては意見が分かれるところです。
原子力発電は「危険すぎる」または「コストが高すぎる」という意見もあります。
AIによるエネルギー需要という観点で考えれば、現実的な選択肢の1つと言えるはずです。
例えば、電力生産単位あたりの死亡者数を見てみると、原子力はほぼ最下位に位置しています。
太陽光発電が最も低い数値を記録していますが、原子力はその次に位置しています。
また、原子力は他の主要なエネルギー源と比べて、必要とする土地の面積が大幅に少ないのも特徴です。
1つの原子力発電所は、少なくとも200基の風車が生み出すエネルギーと同量のエネルギーを生産します。
風車には膨大な土地が必要ですが、原子力発電所は非常に効率的です。
さらに、原子力の最大の売りは、その圧倒的な効率性です。
原子力は他のどのエネルギー源よりも2倍以上のエネルギーを生み出すことができます。
そのため、米国では何かと対立しがちな共和党員や民主党員がそれを支持し、さらには世界中の政府が原子力の拡大を支持しているのです。
賛否が分かれやすい技術であることは確かです。
しかし、世界では今後数年間で、原子力に何兆ドルもの資金が投じられる見込みなのも事実です。
これはAIブームにおける「ツルハシとシャベル」銘柄になるでしょう。
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