米国配当株投資

なぜ配当企業に投資すべきなのか?

「企業は配当を株主に支払うよりもっと良い使い道があるはずだ」

これは、配当に関心がない投資家からよく聞く意見です。

彼らは、利益を「事業自体に投資」あるいは「新しい事業を買収」して企業を成長させるために使うべきだと主張します。

ですが、バイデン大統領が言うように、それは「バカげた話」だと私は思っています。

そう考える理由をお話ししましょう。

もちろん、長期的な収益とキャッシュフローに貢献するのであれば、経営陣が成長のために事業に投資したり、他社を買収したりすることに反対はしません。

しかし、経営者が株主の資金を不運な買収に費やしてしまうのは、資金を「貯め込む」ことが原因なのです。

私は拙著「『年100回配当』投資術」の中で、コミュニティ・バンク・システム (NYSE: CBU) の当時の最高財務責任者スコット・キングズレー氏と交わした議論を紹介しました。

なぜ、企業が一貫して配当という形で株主に資本を還元しようとするのか、彼はその理由をこのように説明してくれました。

「私たちは『資本効率』を非常に意識している。資金を『貯めて』おいて、買収や他の方法で再投資するかもしれないというのは、決して好ましい習慣につながらないと考えている。」

彼は、企業の配当政策などにより経営陣が買収を行おうとする場合、通常は資本市場に資金を調達する必要があり、その取引に本当に意味があるのかどうかを綿密に検討せざるを得なくなる、と続けました。

 

悪い取引


あなたは、これまでに起こってきた”ひどい買収”を知っていますか?

それらの企業の経営陣は「手元に資金があるから、とにかく何かに使おう」と思って買収を行った可能性が高いでしょう。

1994年、クエーカーオーツ社(現在はペプシ社の傘下)はスナップル社を17億ドルで買収しました。そのわずか3年後、同社はスナップル社を3億ドルで売却し、投資額の82%を失ったのです。

つまり、クエーカーオーツ社の株主の1株当たり25ドルが、スナップル社のオーナーの懐に入ったことになります。クエーカーオーツ社の株主は、そのようなことが起こるなら、買収ではなく配当を受け取ることを希望していたでしょう。

同様に2007年、株主への利益還元に実績があるクロロックス (NYSE: CLX) は、バーツビーズ社を買収するために 9億2,500万ドルを支払いました。その4年後、同社は2億5,000万ドル(1株当たり2ドル)の減損損失を計上しました。

クロロックス社の株主は、1株当たり2ドルの配当が支払われていれば 、きっと喜んでいたことでしょう。

だからといって、クロロックス社がバーツビーズ社に適切な価格を支払っていたとしても、2ドルの配当を発行していたとは思えません。しかし、企業は重要な買収を実現するために、価格に関係なく、株主の資金を簡単に使ってしまうということがお分かりいただけるかと思います。

 

配当=業績好調


配当を支払っている企業(有配企業)は、そうでない企業(無配企業)よりも業績の信頼性が高いという研究結果が出ています。

シカゴ大学とハーバード大学のダグラス・J・スキナー教授とユージン・F・ソルテス教授は、それぞれ次のように結論づけています。

“私たちは、有配企業の報告された収益が他の企業よりも持続的であり、この関係は時間とともに著しく安定していることを発見した。また、有配企業は損失を報告する可能性が低く、報告された損失は特別項目による一過性の損失である傾向があることも分かった”

つまり、無配企業は資金を使って事業成長させていきますが、有配企業はより強力で安定した業績を上げているのです。そして投資の鉄則は「株価は業績に従う」ということです。

有配企業の業績が良く、信頼性が高いのであれば、当然株価は良くなっていく可能性があるでしょう。

そして、私たちはそれが事実であることを知っています。

配当を増やしたり、配当を開始したりした企業は、過去45年間で170.6%も株式市場全体を上回っているのに対し、配当を出さなかった企業は同期間中ほとんど動きがなかったのです

有配銘柄は無配銘柄を打ち負かし、株主は配当収入も得ることができます。

ですから、もし友人が「企業は配当を払うよりもっと良い使い道があるはず」だと言ってきた時には、彼らの投資の成功を祈りつつも、数年後にはあなたがランチを奢っているであろうことを覚えておいてください。

その頃余裕があって豊かな生活を送っているのは、あなたなのですから。

良い投資を。

マーク

Marc Lichtenfeld(マーク・リクテンフェルド)

Oxford Club チーフ・インカム・ストラテジスト。ウォール・ストリートを含め25年の経験のある配当投資の専門家。「Get Rich with Dividends(邦題:日本人の知らない秘密の収入源 年100回配当投資術)」著者。2013年に配当投資の専門誌Oxfordインカム・レターを創刊し、世界中に読者を持ち有料購読者は8万人を超える。FOX、CNBC、Forbesなどの有名メディアはもちろん、BloombergやBarrons、The Wall Street Journalといった権威ある金融専門メディアにも多数出演。 マークの記事一覧 ≫

関連する記事

Back to top button