米国配当株投資

「ダビデとゴリアテ」に学ぶ投資の秘訣

マルコム・グラッドウェルの「ダビデとゴリアテ」をご存知でしょうか?

その本の中で著者は、弱い立場にいる者がいかに障害を乗り越えるか、そして有利な立場にいる者が必ずしも成功するわけではないということを詳しく語っています。

この本は、あまり多くの資金がない投資家にとって良い学びになります。

本の冒頭はダビデとゴリアテの聖書の話で、弱い立場であるダビデが全く勝ち目のなさそうな巨人(ゴリアテ)をいかに倒したのかを説明しています。

結局、ゴリアテは、ダビデよりもかなり体格が良かった(しかも武器も持っている)にもかかわらず、羊飼いの少年(ダビデ)の武器に対する準備はできていませんでした。

ゴリアテは武器を持って、接近戦に備えていました。しかしダビデが持っていたのは投石具だったので、ゴリアテに近づいて攻撃する必要はありませんでした。

二人はそれぞれの戦い方をしていたのです。

ダビデはゴリアテよりずっと小柄でしたが、ゴリアテの剣が届く範囲に近寄らず、離れたところから武器を使うことができたので、その点で有利でした。

これを投資で考えるとどうでしょうか?

個人投資家は大手ヘッジファンドや機関投資家に比較すると、かなり不利な立場と見られることが多いです。プロの投資家は多くの資金、知識、そしてツールを持っています。

ダビデのような個人投資家の装備はおそらくほんの数千ドルと証券口座だけで、目の前のブルームバーグのモニター4台とにらめっこしながら、アナリストに細かく相談でき、潤沢な資金を持ち合わせたゴリアテのような機関投資家との戦いに、一見勝ち目はありません。

しかし、本当にそうでしょうか?

 

ダビデのような個人投資家になる


2006~2021年に渡ってベンチマーク(S&P500種株価指数や当該ファンド戦略に関連した適切な指標)を上回ったアクティブ運用型の投資信託は約37%だけです。

幸運にも、一般の投資家にはダビデの投石具のような金融商品があります。それが、永続増配銘柄です。

永続増配銘柄とは、毎年配当金を増配する企業の株のことです。このような株であれば、インフレに打ち勝ち、購買力を高めることができます。

たいてい毎年増配する企業の収益、キャッシュフロー、パフォーマンスは増大しますが、永続増配銘柄の保有期間が長くなるほど、パフォーマンスは気にしなくてよくなります。

有り余る勢いがある訳ではないですが、Oxford インカム・レターでもご紹介した、ある銘柄は13年連続で増配した実績があります。2021年3月時点で、年利は約5%ですが、もしこの株を2011年3月頃に購入していたら、2021年3月時点で約7.5%の年利となっているはずで、これはS&P500種株価指数の年間リターン率とほぼ同じです。

つまり配当金を受け取っているだけで、まさに米国株式市場を代表するとも言えるS&P500種株価指数のパフォーマンスと同じだけのリターンがあるのです。

金融機関のトレーダーは、このような指数よりも1ドルでも多く稼ごうと互いに競い合っていますが、永続増配銘柄の長期保有者は配当金だけでS&P500種株価指数に匹敵する、もしくはそれ以上のパフォーマンスを得られることがよくあります。

そして、永続増配銘柄の株価が上昇するとき、そのパフォーマンスは非常に際立ちます。

S&P500配当貴族指数は、25年連続で増配しているS&P500社で構成されており、S&P500種株価指数に勝っています。

2001~2021年にかけて、S&P500配当貴族指数の10年間の平均利回りは約183%で、これに対し、S&P500種株価指数は約109%です。

つまり、10年に渡ってS&P500種株価指数に投資していたら、資産を2倍ほどに増やせましたが、S&P500配当貴族指数に投資していたら、資産はほぼ3倍になっているということです。

S&P500配当貴族指数はS&P500種株価指数のパフォーマンスを年複利成長率で約5.6%上回っています。もしファンドマネージャーがS&P500種株価指数のパフォーマンスを10年間に渡り毎年5.6%上回っていたとしたら、業界ではロックスターです。

しかし、あなたは個人投資家として、このような連続増配をする企業に投資をするだけで、簡単にロックスターになれる可能性があるのです。

ほとんどのプロ投資家は積極的に株の取引をし、常に投資に対して「アルファ」(投資の余剰リターン)を追求しています。それがファンドマネージャーのパフォーマンスを測る手段であり、ボーナスの金額はそれに基づいています。

ファンドマネージャーは何年も有配株を保有するわけにはいきません。そうしていても手数料は稼げませんし、市場で大胆な決定をして上司を感心させることもできません。

ウォール街のやり手のプロはあらゆる武器を使ってでも、まったく異なる方法で投資することができる個人投資家を負かすことができないでしょう。あなたは質の高い永続増配銘柄を長期的に保有することでウォール街を打ち負かすダビデのような存在になれるかもしれません。

良い投資を。

マーク

Marc Lichtenfeld(マーク・リクテンフェルド)

Oxford Club チーフ・インカム・ストラテジスト。ウォール・ストリートを含め25年の経験のある配当投資の専門家。「Get Rich with Dividends(邦題:日本人の知らない秘密の収入源 年100回配当投資術)」著者。2013年に配当投資の専門誌Oxfordインカム・レターを創刊し、世界中に読者を持ち有料購読者は8万人を超える。FOX、CNBC、Forbesなどの有名メディアはもちろん、BloombergやBarrons、The Wall Street Journalといった権威ある金融専門メディアにも多数出演。 マークの記事一覧 ≫

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