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社会正義に目覚めた資本主義の問題点

以前の記事で、優れた企業は株主だけでなく、従業員、サプライヤー、顧客、そして地域社会を含めたすべてのステークホルダーを満足させるためにどれほど努力しているかという話をしました。

目先の利益だけにとらわれたビジネスは長続きしません。

品質に手を抜けば顧客は離れていくし、サプライヤーを厳しく締め付ければ取引をしてくれなくなります。

また従業員への報酬を低くしたり、妥当な要求を無視したりすれば、彼らはその才能を他の場所へ持って行くでしょう。

賢い経営者、そして賢い投資家はこのことを知っています。

だから私はステークホルダー・アプローチを実践している企業を、定期的に市場から探し出しているのです。

しかし近年、ステークホルダー論は、woke capitalism(社会正義に目覚めた資本主義)へと変貌を遂げつつあるようです。

「社会正義に目覚めた資本主義」とは、企業が使命を果たし、株主価値を最大化することではありません。

それはある特定の社会的課題を推進することなのです。

しかしすべての人がその課題を共有し、そこから利益を得ているわけではありません。そこに最初の問題があります。

 

社会正義は何のためか?


社会正義に目覚めた資本主義は、本質的に分裂的なのです。

従業員や求職者を、特定の才能、スキル、欠点を持つ唯一無二の個人として見るのではなく、人種、性別、性的指向に基づいてグループ分けするのです。

これは言うまでもないことですが、人種や性別、性的指向を理由に、仕事への適性が劣る人はいません。

しかしその逆もまた然りで、人種や性別、性的指向を理由に、仕事への適性が勝る人もいないのです。

企業が「多様性スコア」を上げるために、雇用や昇進の方針を変更すると大々的に発表する場合、それは公正な扱いや平等な扱いのためではありません。

それは優遇措置を指すのです。

そのため、一部では反感を買うこともあるでしょう。

しかし今日の過敏な職場では、社会正義に目覚めた政策に異論を唱えると、偏見や無知、閉鎖的とみなされる可能性があります。

それは団結力や包容力を育むどころか、不満や憤りを生み出すことになり、これではチームの結束を高めることはできません。

米国人の大多数は、人種、性別、性的指向に関係なく、最も有能な候補者が仕事や昇進を得るべきだと考えています。

これはある特定の人種、性別、性的指向を持つ最も有能な人物が仕事を得るべきだというのとは、まったく異なります。

バイデン大統領は、副大統領や最初の最高裁判事候補に黒人女性を選ぶと約束しても、彼の動機が政治的なものであることは誰もが理解しているのです。

しかし企業は政治に関わるべきではないのです。

 

ステークホルダー理論のあり方


特にこうした政策が本来助けるべき人々にとって不利に働くことが多いのも事実です。

ウォール・ストリート・ジャーナルの論説委員であるジェイソン・ライリー氏は、大手新聞社でジャーナリストとしての最初の職を与えられた後の高揚感を綴った論評を最近執筆しました。

同僚は、「おめでとう。新聞社がより多くのマイノリティを募集していると聞いたよ」と祝福しました。

ライリーは、同僚の祝意に嘘がないことは分かっていましたが、それでも落ち込みました。

彼は自分が最も相応しい候補者だったから、この仕事を希望したのです。黒人候補の中で最も優秀だったからではありません。

私は職場に人種格差が存在しないとか、性別のせいで昇進を阻まれる女性がいないと言うつもりはありません。

我々はこの数十年で長い道のりを歩んできましたが、それでもまだ先は長いのです。

米国での人種差別、性差別、同性愛差別はかつてないほど改善されたにも関わらず、しばしばこれ以上なほど悪く紹介されています。

世論調査では10人中6人が、同じ仕事をしているのに女性の賃金が男性よりも低いと考えていますが、これは1963年以来、米国では違法とされています。

(そして米国は不法行為の弁護士には事欠きません。)

今日の収入における人種間の格差は、教育水準、職歴、職業選択、労働時間の違いによるところが大きく、またゲイ男性やレズビアン女性の平均収入は、異性愛者よりも多いという調査結果もあります。

(その理由は、ほとんどが子供を持たず、より多くの時間をキャリアに割くことができるなど、さまざまです。)

つまりすべての不公平が実在するわけではなく、またすべての格差が明示的で暗黙的な偏見に起因するわけでもないのです。

つまりステークホルダー理論とは、企業がより生産的で、より包括的で、より利益を生むように、ビジネス手法を改善することなのです。

社会正義に目覚めた資本主義も同様の主張をしていますが、その代わりに企業の生産性を低下させ、調和を失い、分裂を助長させるのです。

これでは人々を幸せにし、利益を上げ、良い投資をすることにはつながらないでしょう。

良い投資を。

アレックス

PS
私が探し出した優れた企業、すなわち株主だけでなく、従業員、サプライヤー、顧客、そして地域社会を含めたすべてのステークホルダーを満足させるために努力している企業はこちらです。

詳しくはこちらです

 

Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

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