投資情報

ビジネスは悪

近頃、ある不適切な話題が世間に出回っていますが、それを短い言葉でまとめると「ビジネスは最悪だ」ということになります。

学術界や主要メディア、ソーシャルメディア、ハリウッドは、ビジネスとは貪欲で利己主義で搾取を目的とした悪しき活動であるという考えを日ごろから広めています。

例えばビジネスに関して、我々は毎日こんな言葉を耳にしています。

「サメ(悪徳金融)に食われるぞ」「自分のことを一番に考えろ」「自分の身は自分で守れ」「お人よしは成功しないぞ」

このような言葉を聞くと、ビジネスの成功は、組織間だけでなく組織内での冷酷な裏切り競争がすべてであると考える人もいるでしょう。

残念なことに一部の企業ではこれが真実です。しかし最も成功している企業はそうではありません。

利益を最大化するためには、ビジネスに利害関係を持つすべての人の利益に配慮しなければならないという「ステークホルダー理論」を、優れた企業は理解しているのです。

ステークホルダーには投資家や経営者、従業員、サプライヤー、顧客、地域社会などが含まれます。

例えば私の友人であるジョン・マッキー氏は、ホールフーズの創業者であり最高経営責任者です。

彼はテキサス州オースティンにあった小さな一軒の店を500店舗以上のチェーン店にし、フォーチュン誌が 「世界で最も賞賛される企業」の一つに常に挙げる企業に成長させたのです。

同社は2017年にアマゾンに買収されましたが、ジョンは指揮を執り続けています。そんな彼も9月1日には引退することになっています。

ジョンはフォーチュン500の企業をゼロから築き上げただけでなく、自由企業体制のブランド再生を支援し、その英雄的な本質を明らかにすることを使命としてきました。

彼は、『世界でいちばん大切にしたい会社 コンシャス・カンパニー』そして『Conscious Leadership: Elevating Humanity Through Business(仮邦題:コンシャス・リーダーシップ ビジネスを通して人間性を高める)』という素晴らしい2冊の本でそのことを述べています。

ジョンは読者に、ビジネスは価値を創造し、我々の欲求のほとんどを満たすからこそ良いものなのだと気づかせてくれています。

ビジネスが倫理的であるのは、自発的な交換に基づいているからです。

またそれは我々の存在を高めるもので崇高です。

そして人々を貧困から救い、繁栄をもたらすからこそ英雄的なのです。

ホールフーズの店舗を訪れれば、アップルストア以外ではめったにお目にかかれない、熱狂的な顧客愛を目の当たりにすることでしょう。

ホールフーズは、最高級の自然食品と有機食品を徹底的に追求し、業界で最も厳しい品質基準を維持しています。

もちろん顧客はそのことを知っています。

さらにホールフーズの従業員は、「人生で最高の仕事をしている」と常々述べています。

ホールフーズは食料品を売ってお金を稼ぐだけでなく、もっと多くのことに取り組んでいるのです。

 

収益増加だけが目的ではない


同社のホールプラネット財団は、米国および世界の地域社会に住む人々のために、世界の貧困を緩和する活動を行っています。

ホールキッズ財団は、子供たちの栄養と健康を改善するために、学校を支援したり家庭を感化したりします。

ホールシティーズ財団は、地域主導の組織と連携して健康的な食品へのアクセスと栄養教育を拡大し、繁栄する地域のフードシステムを構築しています。

またソースド・フォー・グッド・プログラムは、倫理的な労働条件とより質の高い自然環境を促進します。

このようにホールフーズは多くの点で並外れた存在なのです。

では、どうすればこのようなビジネスを立ち上げたり、探して投資したりすることができるのでしょうか。

そのためには、企業の存在意義を第一に考えることが重要だとジョンは主張します

優れた企業は単に利益を追求するだけでなく、世界にどのように貢献できるかというビジョンを持っています。

「コンシャス・リーダー」は、誠実さをもって行動し、自分自身と組織を最高の水準に保つことで、率いる人々や仕える人々から信頼を得ることができるのです。

それはプロフェッショナルとしてだけでなく、個人としても学び、成長することにコミットするということです。

また成功をもたらしてくれる人々に、報酬や福利厚生だけでなく、日常のさまざまな場面で心から感謝することです。

そして可能な限り、競合する利益について三方一両得の解決策を見出すことです。

しかし、すべてのコンシャス・リーダーの最も重要な仕事は、人々と目的を結びつけることなのです。

そのような企業は、従業員の満足度、信頼できるサプライヤー、リピーター、評判の良さ、規制や法的な問題の少なさ、市場シェアの拡大、そして何よりも大きな利益を手にすることが可能です。

ところが近年、ステークホルダー理論を曲解し、まったく別のものにしてしまった人たちがいるようです。その風潮は「Woke Capitalism(社会正義に目覚めた資本主義)」と呼ばれています。

一体何が起きているのでしょうか?なぜ、このような考え方をする企業があるのでしょうか。それは投資家にとってどのような意味を持つのでしょうか。

それについては、まだ今後取り上げたいと思います。

良い投資を。

アレックス

PS
素晴らしいビジネスは、毎月ここで紹介しています。

詳しくはこちらです

 

Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

関連する記事

Back to top button