トレンド投資
なぜ「ミーム銘柄」に熱い眼差しが向けられるのか
ミーム銘柄をとことん嫌ってくれていいですよ。
(編集部注:ミーム銘柄とは、SNS上で話題になったことをきっかけに短期間で株価が急激に変動した銘柄のことです。)
ミーム銘柄のファンダメンタルズ(企業の売上や利益、財務内容等の基礎的な情報)とファイナンスの間に大きな隔たりがあることについては口が酸っぱくなるまで語り尽くせます。
そして、ミーム銘柄は終焉の始まりでもあります。
しかし実際のところは、どの企業もミーム銘柄になることを願っているのです。
そして投資家は自分のポートフォリオにこういった銘柄を加えたいと思っています。
ミーム銘柄は、市場と投資家への影響を新たに作り変えるトレンドなのです。
「BANG銘柄」が元祖ではない
ブラックベリー (NYSE: BB) やAMCエンターテイメント・ホールディングス (NYSE: AMC) の登場前から…そしてノキア (NYSE: NOK) やゲームストップ (NYSE: GME) が広く知れ渡る前から、ミーム銘柄は元々あったものなのです。
さて、上記4銘柄は悪名高き「BANG(ブラックベリー、AMC、ノキア、ゲームストップの頭文字)銘柄」を構成する銘柄です。
BANG銘柄は、現在のミーム現象の基盤を築いており、ほとんどのメディアは同銘柄に関するニュースを伝えています。実際のところ、全ての金融ニュース番組は、AMC、ゲームストップ、ビットコインの動向を追うことが必然とされています。
BANG銘柄の優れたパフォーマンスは言うまでもありません。2021年の年初来、同銘柄は市場全体に衝撃を与えているのです。
4銘柄の中で一番業績に伸び悩んでいるのはノキアですが、それでも年初来で約42%上昇しています。同期間にS&P500種株価指数が「たった」12.4%しか上昇していないことを念頭において下さい。
もちろん、BANG銘柄はミーム銘柄全体のほんの一部に過ぎません。
他にもベッド・バス・アンド・ビヨンド (Nasdaq: BBBY)、コス (Nasdaq: KOSS) 、マイクロビジョン (Nasdaq: MVIS) 、ティルレイ (Nasdaq: TLRY) そして暗号資産のドージコインなども注目されています。
これらの銘柄を表す印象的な頭文字がないため、私は「その他」と呼んでいますが、「その他」のパフォーマンスもBANG銘柄に引けを取らないほど堅調です。
ベッド・バス・アンド・ビヨンドが一番遅れをとっていますが、2021年の現時点で70%の上昇です。
そして、このトレンドを掴んだ株も大きく上昇しており、企業がいかに「ミーム銘柄」のレッテルを有効活用できるかを表しています。
一変する時
痛ましいことですが、2020年5月を振り返ってみましょう。当時、ハーツ・グローバル・ホールディングス (OTC:HTZGQ) は、金融関連のニュースを席巻し、世間に波紋を広げていました。
新型コロナウイルスによるパンデミックはレンタカーを営む同社に壊滅的な打撃を与え、2020年5月22日、同社は破産宣告をしました。
同社の破産には悲しんだ人もいるでしょう。1918年に12台の「T型フォード」をレンタルするという一見馬鹿げた発想から始まった企業でしたが、同社は成功を掴んだのです。
ハーツは、世界大恐慌や第二次世界大戦など数多くの不況を生き延びましたが、新型コロナウイルスには屈してしまいました。世界各地で外出自粛が実施され、同社の事業は崩壊したのです。
そして、Redditグループ(アメリカで人気のオンライン掲示板)の「WallStreetBets」(株取引コミュニティー)の 「型破りな連中」は、このチャンスを逃しませんでした。彼らは、同社の資産は株価よりも価値があると考え、ロビンフッド(証券取引アプリ)で同社の株に殺到しました。5月26日に0.41ドルだった株価は、6月8日には6.25ドルまで急騰したのです。
1年でなく、わずか13日間でなんと1,424%の利益を得たということです…。アナリストや金融メディアは狂気の沙汰に首をかしげ、その状況は健全とは思えないほど愚かにうつりました。
しかし、内情はそういうことだったのです。
この現象はRedditの「連中」の目を一攫千金の可能性に向けさせただけでなく、ハーツの経営陣にも救いの手を差し伸べました。そして、同社は最終的に株式10億ドルの売却計画を発表し、この狂気じみた現象を利用して負債の返済に役立てようとしたのです。
ここから更に話が面白くなります…Redditの「連中」は正しかったのです!
そうです、同銘柄は2020年の高値から若干下落しましたが、2021年5月、同社は連邦倒産法第11章の適用から逃れるため60億ドルの入札に承諾したことで、株主に1株当たりおよそ8ドル近く支払うことになるのです。
ミーム銘柄マニアが企業の命運を変えると言っても過言ではありません。
キャッシュイン、キャッシュアウト
2021年5月21日から2021年6月2日までに、AMCの株価は12.08ドルから62.55ドルへと388%急騰し、株価は一時70ドルを超えました。
映画館を運営する同社はこのチャンスを利用して、翌営業日に1,155万株の公募増資(ATM)を行うことを発表しました。1株当たりの平均価格は50.85ドルで、5億8,740万ドルを調達しました。
そしてよろしいですか…それは5月の2度目の公募増資だったのです。5月13日、AMCは4,300万株を4億2,800万ドルで売却していました。
そして、同社は4 – 6月期で総額12億4,600万ドルの資金調達を行い、さらに2,500万株の発行権限を株主に求める意向があります。
そして、ゲームストップは4月に350万株の公募増資を行ったことで、同社は5億5,100万ドルを調達しました。
また、2021年2月、コスは自社株の売却益で3,100万ドルを得ました。Redditの扇動によって高騰する前はたった2,600万ドルの評価額でしたが。
投資家はこれら9銘柄および1つの暗号資産のお陰で財を築きました。あなたにとってこれらの銘柄は価値があるのか、好きか嫌いか、もしくは今まで投資したことがない、ということは関係ありません。
皆さんが、これらの銘柄の価値がトチ狂っている(実際そうです)、もしくは投資論理に欠けている(実際そうです)と思ったところで誰も気にとめません。
「ミーム銘柄」はメイン街(マンハッタンのセントラルパークの中心から南に伸びる7番街)からウォール街、経営幹部層に至る全ての人を豊かにしてくれるのです。
バブル崩壊後も、このトレンドがファンドを長期にわたって成長させるでしょう。そして現在、どの企業も次は自分たちがミーム銘柄になることを願っているのです。
ハイリターンを願って。
マシュー