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株式市場が示す未来

株式市場は半年から1年先の未来を先取りして動く、と一般的には言われます。

平時において機関投資家はもっと先の将来を踏まえ動こうとするものですし、何らかの危機が起きたときには行き過ぎる(オーバーシュートする)ものです。

なので、先取りする期間について、何か月先とか何年先という明確な答えがあるものではありませんが、少なくとも、現在ではなく未来志向で動くのが株式市場です。

現在は、危機時に存在感が大きく見えがちなヘッジファンドの投資行動(投資家の解約に合わせた売却)や、AIを活用したシステムトレード(下がったら自動的に売りが入る)が、株式市場の変動幅を高めています。

ヘッジファンドやシステムトレードは短いスパンで動きますが、売ったら買い、買ったら売り、を繰り返すことが一般的なので(長期バイアスは無いことが多いので)、半年・1年先の未来を見据えて動く投資家からすれば、単なる変動要因と捉えることも可能です。

米国では、資産形成に積極的なミレニアル世代が増加しており、個人投資家の存在感が高まっていることも踏まえると、従来から言われてきた、「株式市場は半年から1年先の未来を先取りして動く」という感覚は概ね変わっていないし、長期的にはその見方を軸に動くと個人投資家には良いように感じます。

 

足元の株式市場の動向は「景気」が左右している側面が、従来よりも強いと感じます。

景気は、まさに「気」が左右する面が強いですが、循環するものであって、常に上昇し続けることも、また下降し続けることも無いです。

なので、長期投資においては、「気」のうつろいを後追いして、気が下降したところで売り、上昇したところで買いを繰り返すのではなく、循環することを意識したうえで売買の意思決定をされると成果が出やすいと考えます。

今年に入って下落している株式市場において、投資家の「気」が高まらない要因の一つには、政治のリーダーシップが発揮されていない状況もあると見ています

これは、今持っているカードを切ると、秋の中間選挙まで持たないことを考慮し、「気」を高めるための材料が温存されている(温存するための準備をしている)ことも影響しているでしょう。

今後、大統領および大統領候補から国民に「明るい未来」が示され、株式市場が政治のリーダーシップ発揮を織り込むタイミングにおいては、株価は堅調に推移すると期待しており、現在はそれを見越した仕込みについて検討し、動く時であると考えます。

 

先週から今週にかけて、株式市場は変動幅の大きな展開が続いています。代表的な株価指数であるS&P500種株価指数は、先週金曜日(米国時間)から、今週木曜日にかけて、+2.39%、-0.39%、+2.02%、-4.04%、-0.58%と、荒い値動きとなっています。

短期的に変動幅が大きくなっている要因の一つとして、ヘッジファンドの解約に備えた動き(資産の売却)や、景気後退に備えるためのローテーション(業績変動の少ない業種へのシフト)などがあります。

ただ、株式市場におけるテーマ(不透明要因の元凶:ロシア・ウクライナ問題やインフレ、中国ロックダウン等)は先月までと変わっておらず、金利動向や景況感を踏まえると株式市場はすでに織り込んでいることが多いことが見てとれます。

例えば、米国政策金利について、パウエルFRB議長はスタンスを明確にしており、市場の予測する2023年6月の政策金利について、先日は3.19%まで上昇しました。この先の更なる上昇の余地は限定的と見られます。

また、景況感を示す代表的な指標として使われることの多い、ミシガン大学消費者信頼感指数のうちの「先行景況感指数」は5月13日には56.3まで下落しています。同指数が50を割れることは少なく(直近では、2008年6月や2011年8月・9月のみ)、先行景況感の過去の推移からみると、底入れが近いのではないか、という示唆が見てとれます。

企業業績について、S&P500種株価指数の構成銘柄全体の2022年と2023年の業績予想値を見ると、もう一段の修正余地があると見る投資家もいると思われます。

例えば、構成銘柄の1株あたり純利益(EPS)の2021年平均値は約2.00ドルだったのに対し2022年予想平均値は2.27ドル、2023年予想平均値は2.49ドルと、前年比10%以上の改善が想定されています。(出所 Bloomberg 5月20日時点)

これに基づき、市場が織り込んでいる景気後退シナリオを前提とした場合には、企業業績の下方修正が必要となってくることが想定されます。

ただ、株式市場の下落を受けて、2021年のEPSを前提とした現在の株価収益率(PER)は19.52倍となっています。2022年予想平均値を前提とすると17.15倍、2023年予想平均値前提では15.67倍です。(出所 Bloomberg 5月20日時点)

このことから、業績予想が下方修正されたとしても、株式市場の割高感、過熱感は出ないことが想定されます。

株式市場における投資家動向を前提とすると、企業業績の下方修正が出たところでは、むしろ悪材料出尽くし・底入れを期待する長期投資家の「買い」が入ってきやすいという見方は、大手投資銀行のストラテジストからも示されています。

 

足元の株式市場の動向は「景気」が左右している側面が、従来よりも強いと感じます。

景気は、まさに「気」が左右する面が強いですが、循環するものであって、常に上昇し続けることも、また下降し続けることも無いです。

なので、長期投資においては、「気」のうつろいを後追いして、気が下降したところで売り、上昇したところで買いを繰り返すのではなく、循環することを意識したうえで売買の意思決定をされると成果が出やすいと考えます。

今年に入って下落している株式市場において、投資家の「気」が高まらない要因の一つには、政治のリーダーシップが発揮されていない状況もあると見ています

これは、今持っているカードを切ると、秋の中間選挙まで持たないことを考慮し、「気」を高めるための材料が温存されている(温存するための準備をしている)ことも影響しているでしょう。

今後、大統領および大統領候補から国民に「明るい未来」が示され、株式市場が政治のリーダーシップ発揮を織り込むタイミングにおいては、株価は堅調に推移すると期待しており、現在はそれを見越した仕込みについて検討し、動く時であると考えます。

 

良い投資を。

志村 暢彦

追伸
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志村 暢彦

金融業界歴24年。業界経験としてはファンドマネージャーとしての期間が最も長い。日ごろより、金融力は国力そのものであると考えおり、金融業界の心臓部や裏側で働き、政官財を含め、日本の金融の実態を見てきた経験をもとに、日本の金融リテラシー向上と、個人の理想的な資産形成の実現について、情報の収集と発信をしている。 著者の記事一覧 ≫

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