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なぜ市場は過度に期待・悲観するのか?

株式市場は、注目イベントの雇用統計、ハリス氏対トランプ氏のテレビ討論会を終え、

来週に控える連邦公開市場委員会(FOMC)の決定を待つところとなっています。

現時点では、0.25%の利下げがコンセンサスとなっています。

いよいよ政策金利の方向性が変わるタイミングとなります。

今週からは、2年2か月にわたった逆イールド(米2年国債金利が米10年国債金利を上回る状態)が解消されており、大統領選の展開(不透明)も踏まえ、

今後の政策のかじ取りは、物価・金利よりも、景気動向への配慮・深謀のウェイトが増していくのではないでしょうか。

政策金利の市場見通しについて、私としては、来年7月までに合計で2.5%の利下げがなされるという織り込みがなされている点に注目しています。

経済がソフトランディングするのであれば、また、国家間の安全保障の観点からグローバリゼーションが後退するのであれば、そこまでの利下げには至らないという見方が出来るからです。

中長期投資家としては、経過を観察し続ける必要のあるポイントと考えます。

 

また、足元では、ニューヨーク原油先物価格が下落し、直近3年間推移してきたレンジの下限付近となっています。

米中ともに成長鈍化が懸念され需要見通しが下方修正される一方で、非OPEC国からの産出が影響し、需給バランスが崩れているということが背景にあるというのが、一般的な専門家の解説です。

ただ、当たり前すぎてあまり触れられないポイントとしては、コモディティ業者(CTA)やヘッジファンドなど足の短いファンドも参戦しているということで、

足の短い、いわゆる投機筋は、売ったものは買い戻すし、買ったものはいずれ売却します。

つまり、売りが売りを呼ぶ(または買いが買いを呼ぶ)展開となるときには、こういった投機筋が市場の変動幅を高めているだけで、それらはいずれも長期的なポジションとはならないという点を、忘れてはなりません。

 

『市場は過度に悲観し、過度に楽観する』ものである背景には、いわゆる『市場参加者』には様々な筋が含まれています。

なので、個人投資家も、自身の投資の属性(短期で回転させていくのか、長期でじっくり構えるのか)に合わせて、うまく市場参加者の声を選別して聞いていくと良いです。

投機筋の動きや、投機筋らしき市場予測(ポジショントーク)を排除するためには、一般的なニュースのヘッドラインだけを追いかけているだけでは不十分です。

むしろ、ニュースのヘッドラインは、投機筋の動きを捉えがちなので(市場に与えるインパクトが大きいし、ニュース性があるから取り上げられます)、中長期投資家はニュースに逆張りする必要が出てくることも、多々あります。

例えば、原油価格は下落しているけれども、『AIが本格普及するなかで、AIサーバーの消費電力量が爆発的に増加する。また米国における製造業の自国回帰などが確実視される。そのなかで、新たな省エネテクノロジーが普及するまでは、電力不足にどう対応するのかが、世界における長期的なテーマ・課題となる』といった観点もあります。

これに沿って、足元で下落しているというヘッドラインの多い原油関連銘柄に対して、中長期的に強気な見方をするのであれば、ある意味、ニュースの逆を行く投資行動が取られます。

ということで、まだ投資を始めて間もない方は、特に短期筋の動きを伝えるニュースを取り扱う時には注意する(ニュースで伝える内容について行くと、最後の買い手・売り手となり、ババを引くことになる可能性を頭の片隅に置いておく)ことをお勧めします。

市場が過度に悲観する・楽観するといっても、長期投資家目線ではそんなに過度な悲観楽観に陥っていないケースが大半です。

むしろ、短期筋による行動やボラティリティの上昇を見方に付けることができるのが個人投資家による投資の強みなので、是非、逆手にとって活用したいですね。

志村暢彦
 
 
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志村 暢彦

Oxford Club Japan チーフ・ストラテジスト 助言統括者。金融業界歴24年。業界経験としてはファンドマネージャーとしての期間が最も長い。2019年Oxford Clubチーフ・ストラテジストに就任。日ごろより、金融力は国力そのものであると考えおり、金融業界の心臓部や裏側で働き、政官財を含め、日本の金融の実態を見てきた経験をもとに、日本の金融リテラシー向上と、個人の理想的な資産形成の実現について、情報の収集と発信をしている。 著者の記事一覧 ≫

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