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今後の相場展開は?

世界中の投資家が注目する米国の連邦公開市場委員会(FOMC)の7月会合が終わりました。

決定内容は、市場の想定通りの0.75%の利上げ

声明文と記者会見に想定を超えるサプライズは無く、株式市場は結果発表を受けて上昇。

特に、成長株が占める割合の多いナスダック総合指数は、発表当日となる米国時間27日に、前日比で4.06%の上昇となりました。

記者会見においては、優先して対応していく対象は引き続き高進するインフレで、今後もインフレ対応するための利上げが示唆されています。

具体的な今後の利上げ幅については、次回会合(発表)の米国時間9月21日まで2カ月弱あり、その間、雇用統計やインフレ関連指標(消費者物価指数など)を2回ずつ挟むことから、データを見ながらの判断となる旨、表明されました。

 

投資家として気になるのは、このFOMCを受けて、株式市場をどのように俯瞰して見たら良いのかという点ですよね。

今回のFOMCを受けて、一歩引いた目で見て、投資家として認識しておいたら良いと考える事象は次のとおりです(あくまで私見です)。

○ 6月・7月の会合であわせて1.5%の利上げとなった。これは歴史的に見ても異例の大幅利上げ

○ 6月会合のあった米国時間6月15日から7月27日までの間、S&P500種株価指数は、6.16%の上昇。(6月17日の日中安値からは10.63%の上昇)

○ 米国時間6月15日に3.288%で終了した米10年国債金利は、7月27日には2.788%で終了。(長期金利の上昇圧力が大きく緩和された。特に成長株にはポジティブ)

○ 米国時間6月15日に3.195%で終了した米2年国債金利は、7月27日には2.999%で終了。(2年債金利が10年債金利を上回る、いわゆる「逆イールド」の状況が常態化しているが、2年債金利の低下は全体としてポジティブ)

(仮に、日本が2か月で1.5%利上げしたら、国債の利払い増が財政に与える影響がどうだとか、景気後退からの影響がどうだと、大変な大問題になるでしょう)

○ 国際的なシンクタンクの役割を担う国際通貨基金(IMF)は米国時間26日に、世界経済の成長率予測を下方修正。4月時点では3.6%と予測していた今年の世界成長率について、3.2%に下方修正した。景気判断について、世界経済は近く、景気後退(リセッション)の瀬戸際に立たされるかもしれないとした。

○ 景気後退(リセッション)の判断はGDP成長率とは異なる基準で、全米経済研究所(National Bureau of Economic Research 略称NBER)が判断するが、強い雇用環境や家計の動向からは、GDPが2四半期連続でマイナス成長したとしても、直ちに政府として景気後退が認定される状況には無い。

という点です。

金融政策(利上げ)や景気判断の環境的には厳しい状況となったけれども、多くの投資家は前を向き、株価も上向き始めている点が印象深いです。

 

今週はFOMCのほか、GDPやコアPCE(物価指標)、ミシガン大学景況感指数などが発表されるほか、GAFAMをはじめとして多くの企業決算が発表され、材料盛り沢山の1週間となりました。

次回FOMCまでは日程がありますが、その前の8月25日〜27日には、米西部ワイオミング州にて例年開催される国際経済シンポジウム、通称「ジャクソンホール会合」が開催されます。

そこでは、景気を抑制するのではなく、需要を喚起させるための政策やルールの議論がなされ、結果として前向きなインフレコントロール(打開策)の可能性について検討がなされるのではないかと期待しています。

今年はインフレ対応で異例ずくめの措置が取られており、特に不透明感が強く投資家にとってストレスが大きい異例の年となっています。

(S&P500種株価指数の上期の下落幅が1970年来で最大となったことは、記憶に新しいと思います。)

ただ、株価に目をやると、6月中旬の安値から指数が10%以上戻しています。

すぐに通常の景気状態に戻り、一本調子に株価も戻るというよりは、一進一退を繰り返しながらも、底値を切り上げていくという展開になるかもしれません。

ただ、6月の安値を下回り、底値割れしていくという懸念については、大分後退したと見ています。
そして、ここを乗り切ることで、次の成長に繋がる糧となると考えます。

これまでお伝えしてきた通り、今後、機関投資家が徐々にリスクを取り始める展開となっていくことも想定されるので、優良な銘柄を長期目線で仕込んでいくといった視点を軸に据えることで、個人投資家が適切にリスクを取り、有利に立ち回りやすい環境にあるとも言えるのではないでしょうか。

 

志村 暢彦

 

追伸
Oxfordクラブでは、配当投資にフォーカスしたインカム・レターと、成長株にフォーカスしたキャピタル・レターをご用意して、それぞれ長期目線での投資アイデアをご案内しています。マクロファンダメンタルズの状況を見据え、『米国の今』について経験豊富なストラテジストが分析した内容も掲載しています。

志村 暢彦

Oxford Club Japan チーフ・ストラテジスト 助言統括者。金融業界歴24年。業界経験としてはファンドマネージャーとしての期間が最も長い。2019年Oxford Clubチーフ・ストラテジストに就任。日ごろより、金融力は国力そのものであると考えおり、金融業界の心臓部や裏側で働き、政官財を含め、日本の金融の実態を見てきた経験をもとに、日本の金融リテラシー向上と、個人の理想的な資産形成の実現について、情報の収集と発信をしている。 著者の記事一覧 ≫

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