投資情報

非常事態

私事、2015年から2018年頃にかけて、アセアン諸国、中華圏、インド圏、環太平洋諸国などを調査していました。

調査と言っても、座学で歴史や文化を調べるというより、足で情報を稼いだり、実態を肌で感じるといった類のもので、現地に赴いて、企業や政府関係者の人にヒアリングしたり、生活感を確認するものでした。

Oxfordクラブでは米国株を中心とした資産形成をご案内していますが、
一口に米国株といっても、米国以外に拠点を置く企業が多く存在し、ADRといって、預託証券の形で普通に取引可能なケースが一般的です。

そして、資産形成は長期的な視点で行うと良いのですが、その実践においては、
グローバル経済がどこに向かうのかといった俯瞰した目線や、
人種や宗教が違なり「人と人は違って当たり前」という発想をもとにした国際社会の形成について知見を深めることが大切です。

長期的に勝ち残る企業がどんな企業なのか、広く世界に目を向けるなかで確認することには意義があると思っています。

なお、この「人と人は違って当たり前」というのは、日本の若者に子供の頃から教育の一環で教えられたら良いと思っています。

保守的な年配者のなかには「人と違うことは恥ずかしい」と考える人も多いと感じますし、
実際、何か大多数が行っている行動のレールから外れると「恥ずかしくて外で人に話せない」的なことをいう親御さんは存在すると思いますが、イノベーションを起こしてきたのは、大多数からはみ出した人たちであることも多く、その価値が評価される社会になると良いと思っています。(青臭くて申し訳ありません)

 

さて、アジア各国を中心に多くの国を見ていく中で、当時、スリランカの調査もしました。

日本ではあまり知られていませんが、親日的で仏教徒が多数を占めるスリランカ。ネット環境が整い、港は深く大きな船が停泊できるなどのインフラが整備されていて、英語を話す人も多いです。

ただ、中国政府の支援を受け、一帯一路構想の一部に組み込まれているなか、そのネガティブな反動が大きくなり、ついには「非常事態宣言」が発動されることとなってしまいました。

デモは以前より行われていて、私が滞在している期間も大型バスが何台も首都に乗り付けてきていました。

何かと聞いたところ、地方の人々がわずかばかりの日当と弁当を渡され、デモのために首都に投入される(要するにアルバイト的な集め方)ということで、その頃から治安も良くなかったのですが、経済の停滞と共に破綻に陥ったということです。

安倍政権による親日国への支援の一環もあり、首都には日本由来である数々の品が博物館などに保管されていましたが(私の曾祖伯父にあたる日本画の巨匠の絵も飾られていましたが)、そういった歴史や文化が途絶えないか、心配です。

海外諸国(欧米はじめ新興国も含みます)は、政治と経済が一体運営されている傾向が日本よりも強いので、私も投資家として、海外の政治や文化・宗教に関する感度を引き続き高く保っておきたいと思っています。

 

今週13日には、米国でとても注目されていた消費者物価指数(CPI)が発表されました。

発表された数値は前年比で9.1%増と、事前の市場予想平均値(8.8%増)を上回る内容となり、株式市場は寄付き後に下落したものの、日中は持ち直したことは好材料だったと思います。

今回は驚いたことに、バイデン大統領が、発表されたCPIのデータは古いもので、最近下落しているガソリン価格を反映していない(米国の家計は一息つく余裕が生まれているはずだ)と表明しました。

思い付きの発言ではなく、事前に情報を仕入れたうえで、発表されたデータで市場が動揺しないような配慮をしたということだと思いますが、世界一である大国のリーダーが、経済統計の内容に言及するという姿はとても異例です。

言い換えれば、インフレを国として抑えに行くという表明でもあり、今後、インフレが鎮静化するその先に目線や市場の注目が移っていくことも想定されます。

ここでは専門的なことに詳しく言及しませんが、2022年上期と下期では投資環境・テーマが変わってくるということも見据えながら、長期投資のための株式投資を検討していきたいと考えています。

良い投資を。

 

志村 暢彦

 

追伸
Oxfordクラブでは、配当投資にフォーカスしたインカム・レターと、成長株にフォーカスしたキャピタル・レターをご用意して、それぞれ長期目線での投資アイデアをご案内しています。マクロファンダメンタルズの状況を見据え、『米国の今』について経験豊富なストラテジストが分析した内容も掲載しています。

志村 暢彦

Oxford Club Japan チーフ・ストラテジスト 助言統括者。金融業界歴24年。業界経験としてはファンドマネージャーとしての期間が最も長い。2019年Oxford Clubチーフ・ストラテジストに就任。日ごろより、金融力は国力そのものであると考えおり、金融業界の心臓部や裏側で働き、政官財を含め、日本の金融の実態を見てきた経験をもとに、日本の金融リテラシー向上と、個人の理想的な資産形成の実現について、情報の収集と発信をしている。 著者の記事一覧 ≫

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