投資情報

当局公表の裏読み

株式市場に目をやると、連日「インフレ」「インフレ」の連呼です。もちろん、一般ニュースでも値上げ・物価上昇がとても目につきます。

はい、アメリカはもちろん、日本も欧州も、高止まりしたインフレへの対応が政権にとっての優先対応課題になっています。

私は天の邪鬼なので、インフレ連呼を許容しており、金融政策当局としても鋭意取り組むと言っている以上は、政権としても解決の糸口があるという見方を基本にしています。

株価は投資家の心理状況が左右する要素が大きいので、解決されるという方向性が世間に「認知」されるまで、株価の変動幅が高い展開は続くでしょうけれども、

結論としては、インフレは退治可能と考え、長期投資家はその先を見据えて行動していくことが肝要と思っています。

なお、今回のインフレは「コストプッシュ型」のものであり、打つ手があるということでお伝えしてきましたが、ようやくバイデン政権としても一歩踏み込んだ施策に踏み出しました。

今週22日(米国時間)、バイデン政権は高騰するガソリン価格への対策として、連邦ガソリン税課税を3か月間停止する措置を議会に要請すると発表。

中間選挙を控えるなか、物価対策へのアピールの側面も強く、「課税停止でも価格下落への影響は軽微」とか「下がって浮いたお金を他に使えば、結局消費の減退にはつながらない」といった声も聞かれますが、私としては、インフレに政権として取り組む姿勢を見せた点は評価に値すると見ています。

バイデン政権としては、一部の石油精製企業に増産を要請する書簡を送っているなか、効果を疑問視する声はもちろんありますが、出来る対応はしていくこと自体、インフレ抑制に何らかのプラスに効いてくるはずです。

 

話を日本に移しまして、参院選を7月10日に控える岸田政権にとってもインフレ対応への優先順位が上がっています。

進行する「ドル高円安」について、日経平均株価を支える要因にはなっているものの、輸入物価への影響を懸念する声が強く出ていることから、

今月14日に鈴木財務相は、

「急速な円安の進行が見られ憂慮している」と述べ、各国通貨当局と緊密な意思疎通を図りつつ「必要な場合は適切な対応を取る」と語った、と報道されています。

ある意味財務相の公式な発言ですから、思い付きや願望だけで話しているわけでなく、然るべきところで国際的な合意を得たうえで、「適切な対応を取ることについて準備が出来た」ということを意味します。

勘の良い方であれば、日本も7月には発表される物価統計が想定を上回る高さとなったり、140円を超える急激な円安圧力がかかるようであれば、為替介入またはそれに準じるような強めの対応がなされる可能性を感じて、行動するでしょう。

 

米国株は世界で一番早く動く市場ですが、日本においても、円安が一巡した後にどうなるのか、を見据えた対応が求められてくる岐路に差し掛かっている状況にあるのかもしれません。

なお、欧州でも金融政策を転換し、新時代の政策運営に舵を切っています。(欧州の諸問題はここでは書きませんが)

新型コロナ → 先進諸国の緩和政策 → ワクチン開発 → ロシアウクライナ問題・コモディティ問題 → 中国のロックダウン・サプライチェーン問題継続 → 経済リオープン → インフレへの対応 ということで、問題が移行してきましたが、それぞれ、先に進んできたこと自体は事実です。

米国の中間選挙においては、少なくとも下院は共和党が多数派となることはほぼ決まりと見られています。

それも踏まえ、グローバル株式投資の対象を思考・検討を重ねていくと良いと考えています。

志村 暢彦
 
追伸
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志村 暢彦

Oxford Club Japan チーフ・ストラテジスト 助言統括者。金融業界歴24年。業界経験としてはファンドマネージャーとしての期間が最も長い。2019年Oxford Clubチーフ・ストラテジストに就任。日ごろより、金融力は国力そのものであると考えおり、金融業界の心臓部や裏側で働き、政官財を含め、日本の金融の実態を見てきた経験をもとに、日本の金融リテラシー向上と、個人の理想的な資産形成の実現について、情報の収集と発信をしている。 著者の記事一覧 ≫

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