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FOMC後、物色が広まるか

今週月曜日は、テレビ東京系列「モーニングサテライト」(略して モーサテ)の「アメ株Update」のコーナーに出演しました。

「コスト増に耐性のある銘柄」ということで、インフレ時に相対的に良いパフォーマンスを示す傾向のある銘柄を紹介させてもらったわけですが、

久しく連絡を取っていないプライベートの友人はじめ、政策当局の友人などからも、「見たよ」の連絡をもらったり、金融機関勤務の知人からセミナー登壇依頼が来たりと、改めて影響の程を確認した次第です。私は話し下手なので、練習して改善していきたいと思っています。

さて、インフレといえば、先週金曜日の消費者物価指数(CPI)が市場の想定を上回る数値である前年比8.6%増となったことで、株式市場の悲観が拡大しました。

(平時は、より重要視されやすい「コアCPI」は前年比で下落していますが、悪い材料の方に引っ張られた感じです)

そして今週、現地水曜日(日本時間木曜朝3時)に連邦公開市場委員会(FOMC)における金融政策決定会合が行なわれ、0.75%の政策金利引き上げが決定・アナウンスされました。

今月にはいって、インフレを嫌気して下落してきた株式市場は、「Sell the rumor, Buy the fact」で、アナウンス後には多少買い戻される動きが広がったことは、ポジティブです。

まだまだ、下げた分の全回復には遠く及びませんが、株式市場の下落・リスク回避の主要因の一つである「不透明感」の払拭には一役買ったという評価をしても良いと感じます。

 

FOMCですが、もともとパウエルFRB議長が示唆していたのは、6月と7月の会合でそれぞれ0.5%ずつの利上げであって、また中期的には、金利は上げられるうちに上げておいて、将来の(ベースシナリオとしては2024年の)利下げ余地を確保しておきたいという思惑もありました。

そのなかで、先週金曜のCPIの数値が予想を上回ったことを受けて、急速に0.75%でもいけるんじゃないかという機運が高まり、実際に実行されました。

次回7月の会合については、0.5%から0.75%程度の利上げが示唆されており、現時点では今回同様0.75%の利上げを想定する人が多いです。

というのも、今回のパウエル議長の発言(何をみて決定したのか)を踏まえると、前述CPIが高止まりし、またガソリン価格の影響が色濃くでやすい状況が影響するという見方がなされているためです。

足もと、米国ではガソリン価格が高騰し社会問題化していること、米国がドライブシーズン入りしていて、来週月曜は祝日(2021年に新しく制定された奴隷解放記念日)であることを踏まえると、7月13日に公表されるCPIの数値についても高止まりしやすいという予想がなされています。

それにしても、バイデン政権、高騰するガソリン価格に対する対応するため、石油元売り7社に書簡で増産を要請したとのことですが、ガソリン価格は元売り業者から原油を仕入れて精製してガソリンスタンド業者に販売する精製業者の設備稼働や投資、価格戦略による影響の方が大きいので、少し的外れ感があります。

ロシア・ウクライナ問題も、共和党政権であれば事前に止められたのではないか、という見方もありますし(真偽はわかりませんが)、コロナ対応、サプライチェーン問題など、いずれも政治のリーダーシップを発揮することでもっとマシな対応ができたのではないか、という感想を持つプロの投資家・専門家も多くいます。

秋の中間選挙、来年の大統領選前年の活動に向けて、株価下落は政治のリーダーシップ不足が原因という見方が広がる前に、ポピュリズム的な施策にも舵を切るでしょうし、金融政策も活用しようとする可能性があります。

 

ということで、今後については、7月28日のFOMCに向けて、不透明要因が残る状態は続き、一本調子で株価が戻るというよりは、上下を繰り返しながら正常化に向かう過程にあるという見方がメインシナリオと見ていますが、言えることは「不透明感が徐々に払拭されつつある」ということです。

マクロ経済(経済指標など)を語るエコノミストは、悲観的なことを語りがちです。(債券投資が専門家のエコノミストに多い傾向があります。もちろん全員ではなく、一般論です。)

自分が語ったとおり悲観シナリオが実現したら「ほら言ったとおりでしょ」と言い、実現しなかったとしても「回復して良かったですね」と言えるから、という背景も多少は影響しているかもしれません。

個人投資家としては、半歩でも機関投資家の先回りができれば良いですし、相場のど底で買わずとも大丈夫(責め立ててくる外野もいない)ので、そろそろ、銘柄選定をさらに一歩進めて、下落相場があったらすかさず買いを入れていくアイデアを持っていたいところです。

買うための支援材料・蓋然性が必要な機関投資家は、タイミング的に一歩出遅れがちですが、少なくとも何を買おうか、物色は始めているはずです。

現在、Oxfordクラブのストラテジスト陣も、銘柄の選定に使う時間がとても増えています。

志村 暢彦
 
追伸
Oxfordクラブでは、配当投資にフォーカスしたインカム・レターと、成長株にフォーカスしたキャピタル・レターをご用意して、それぞれ長期目線での投資アイデアをご案内しています。マクロファンダメンタルズの状況を見据え、『米国の今』について経験豊富なストラテジストが分析した内容も掲載しています。

志村 暢彦

Oxford Club Japan チーフ・ストラテジスト 助言統括者。金融業界歴24年。業界経験としてはファンドマネージャーとしての期間が最も長い。2019年Oxford Clubチーフ・ストラテジストに就任。日ごろより、金融力は国力そのものであると考えおり、金融業界の心臓部や裏側で働き、政官財を含め、日本の金融の実態を見てきた経験をもとに、日本の金融リテラシー向上と、個人の理想的な資産形成の実現について、情報の収集と発信をしている。 著者の記事一覧 ≫

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