投資情報

“トランプパニック”の裏で投資家が見逃しているチャンス

台湾の面積はわずか36,197平方キロメートル。

これはベルギーよりわずかに大きく、日本の10分の1にも満たない程度です。

しかし、この小さな東アジアの島は世界の“緊張”が発生する源として浮上し、近年は地政学の焦点となっているのです。

一日で世界市場から何十億ドルもの資金を消し去る力を持つほど、ストレスの高まりの原因となっています。

全ては、世界で最も重要な資源の一つである半導体を製造しているからです

しかし、賢い投資家はパニックに陥りません。

彼らは暴落の中にチャンスを見出すのです。

そして今が、久しぶりに割安で購入することができ、高成長が期待できる絶好のチャンスと言えるでしょう。
 

世界の半導体チップの10個に6個がここで製造されている

1960年代、台湾は急速な経済成長と工業化の時代を迎えました。

第二次世界大戦後、輸出志向の貿易戦略を採用した最初の発展途上国と言えるでしょう

台湾は瞬く間に高所得の先進国となり、この成長は「台湾の奇跡」として有名になりました。

しかし、これは偶然のものではありません。

1970年代以降、台湾は世界の半導体産業の心臓部となっていたからです。

そして台湾は、チップメーカーを支える強固なサプライチェーンを構築してきました。

その結果、台湾は現在、世界の約6,000億ドルにも及ぶ、半導体市場の大部分を支配しているのです。

国別の半導体ファウンドリー市場シェア
出所:ビジュアルキャピタリスト

 
実際、地球上で製造されるチップのおよそ10個に6個は台湾産です。

そして、台湾積体電路製造【TSMC】 (NYSE: TSM) は、世界最大の受託チップメーカーの一つ。
この1社だけで、アップルやエヌビディアといった大企業向けを含め、世界のチップの半分以上を供給しています。

これが、この小さな島国を不自然なほど強力にしているのです。

そして、軍事力と野心を持つ国にとっては、魅力的な資産と言えるでしょう。

半導体は人工知能(AI)と世界経済の未来にとって非常に重要であり、半導体市場の市場規模は2033年までに2倍以上の1兆1400億ドルになると予測されています。

2024年にはすでに、チップメーカー(特にAI関連)が市場を圧倒する利益を上げているのです。

しかし、このような企業は波乱に見舞われやすいのも事実。

たった一つの“問題”が起こるだけでも、弱い投資家が逃げ惑うことになります。
 

政治リスクと新世界秩序

今年は米国の大統領選挙の年。

過去にも述べたように、このような年は市場のボラティリティが高くなる年が多いのです。

市場は不確実性を嫌います。

そして、選挙の年は不確実性に満ちているのです。

先週、市場は台湾を理由に「売り」が入ることが多い状況でした。

しかし、この神経質な動きは、地球の裏側で米国の大統領候補が引き起こしたものでした。

日本は第二次世界大戦後、台湾を中国に明け渡しました。

それ以来、台湾と中国は奇妙な、そして時には部外者が見て混乱するような関係を築いてきたのです

中国は台湾に対して、香港やマカオと同じように「一国二制度」を採用しています。

つまり、台湾には独自の憲法があり、民主的に選ばれた指導者がおり、独自の軍隊があるということです。

厳密にはまだ中国の一部ですが、実質的には独自の国。

一方、中国は台湾を大陸に「統一」すると宣言しています。

そして近年、この問題に関して多くの妨害工作を行っているのです。

実際、つい数週間前、中国は台湾への攻撃を想定した軍事訓練を島周辺で行いました。

北京は台湾を分離独立した省と見なしているのです。

これに対し、台湾は本土との統一案を何度も拒否してきました。

台湾は間違いなく世界で最も貴重な資源を支配しているため、その全てが正式に中国の旗の下に入ることには不安があります。

そのような移行は米国、そして世界の他の国々にも影響を与える可能性があるため、台湾はしばしば米国政治のトピックとなっているのです。

先週、暗殺未遂事件を乗り越えたドナルド・トランプ前米大統領は、台湾が中国に侵略された場合、援助するかどうか尋ねられました。

それに対し、同氏は基本的に「ノー」と答えました。

そして、もし台湾が米国に中国から守ってもらいたいのであれば、その保護費用を支払うべきだと示唆したのです。

これに対し、投資家たちは正気を失い、ハイテク株は暴落したのです。

ナスダックは2.8%急落。

エヌビディアの株価は6.6%下落。

スーパーマイクロコンピュータの株価は6.9%下落。

ヴァンエック・セミコンダクターETFの価格は7.1%下落。

TSMCの株価は、このニュースで8%近く下落。

ASMLホールディングの株価は12.7%暴落しました。

これは、政治問題がパニックを引き起こした瞬間と言えるでしょう。

しかし、ここにチャンスがあり、ほとんどの投資家が忘れていることがあります。

2022年、米国は新しい半導体工場を建設するために500億ドルを提供するCHIPS and Science Act(通称CHIPS法)を制定しました。

このプログラムの下で台湾半導体は新しい施設のために連邦政府から66億ドルの資金援助を受けており、同社は米国内に新しい工場を建設するために650億ドルを投資しています。

また、インテルは200億ドルの融資と助成金を受けました。

そして、アリゾナ、ニューメキシコ、オハイオ、オレゴンに新しいチップ工場を建設しています。

実際、控えめに見積もっても、2027年までに世界の半導体製造における台湾のシェアは60%にまで落ち込むでしょう。

その理由の大部分は、米国が市場シェアを17%まで伸ばし、その半分以上は外国企業が米国内で生産能力を増強しているためです。

また、日本はその時までに、半導体ファウンドリー市場全体の4%を獲得することになるでしょう。

高性能チップへの需要が持続していることはこのところの暴落が、ある意味“贈り物”であることを意味しています。

世界で最も影響力のある半導体メーカーの株価は、久しぶりに下落水準にあります。

この下落しているタイミングが、安く買えるチャンスなのです。

マシュー・カー

 

〜編集部〜

半導体大手エヌビディアのファンCEOが、

「これは自動車と同じぐらい普及する。そして、100年後にあらゆる生活の場面に登場するのはあたり前になっている」

と発言している分野。

これは、半導体でもなければ、AIでもありません。

一体、何の分野なのでしょうか?

そして、この市場の重要なイベントが本日7月24日に実施される予定なのですが…

→続きを見る
 

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Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

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