トレンド投資

投資家が知るべき5月のトレンド

投資の世界に「絶対」と言えるものはありません。
しかし、「起きる可能性が高い」と言えるものは存在しています。

それは「季節のように決まった時期に訪れるトレンド」です。

そして、私はこのようなトレンドに基づく予測を最も重視しています。

なぜなら、私はこのように「市場にどのような可能性があるのか」を理解することが、投資で成功するために必要なことの1つだと思っているからです。

例えば、それを理解していると、

・自分たちの投資がそれに沿っているのか?
・それとも逆行しているのか?

を知ることができます。

そうすると、

「株価が下がった→焦って売ってしまう→その後、株価が持ち直してしまう→リターンを得られなかった…」

こんなことも防げるかもしれないのです。

なので、私はあなたにぜひこのようなトレンドを知っていただきたいと思っています。

さて、トレンドから考えると、5月は投資家にとって最も評判が悪い月です。

「5月に売り逃げろ、レイバー・デー*まで戻ってくるな」

というアメリカの有名な格言があります。

*レイバー・デー:アメリカの連邦政府の祝日で、9月の第1月曜日

イギリスでは、「セント・レジャーデー(イギリスで毎年9月の第2土曜日に行われる競馬の大レース)まで戻ってくるな。」とも言うのですが、
どちらも9月頃に戻ってくるように言っているのは共通しています。

これらは非常に長い間語られ続けてきた言葉です。
では、2022年に生きる私たちもそれに従うべきなのでしょうか?

 

「5月に売り逃げろ」は本当?


5月4日は「スターウォーズ・デー」と呼ばれています。

これは、映画「スター・ウォーズ」の有名なフレーズ「May the Force be with you」の「May the Force」が、5月4日(May the Fourth)と似ていることに由来しています。

他にも母の日、戦没将兵追悼記念日、シンコ・デ・マヨ(メキシコの祝日)など、多くの記念日がある5月。

また、私が大好きな投資トレンドの「ビールの消費シーズン」や、同じく投資トレンドの「夏のドライブシーズン」が始まります。

これらはどれも、クリスマスのように利益を狙えるような日ではありません。
しかし、特に損失をもたらすようなものでもないのです。

では、なぜ投資家たちは5月を毛嫌いするのでしょうか?

その理由は、「夏休み」です。

「5月に売れ」の起源とされているものの1つは、昔のイギリスで、貴族や銀行家など裕福なエリートが、ロンドンの息苦しい暑さから逃れて田舎で夏を過ごしていたことに由来します。

また、アメリカでも5月から9月の間に休暇を取るため、そのまま格言が引き継がれました。

つまり、投資家たちはこの数か月間、時間や資金を休暇のために使い、市場への投資額を縮小するのです。

これにより、市場の取引が落ち着き、株価が低下するというわけです。
そして、夏が終わり、子供たちが学校に戻る頃まで元に戻ることはありません。

実際、数十年間、市場はこの定説通りに動いていました。

1950年から2013年までのダウ指数の上昇率を見てみると、
5月から10月までが平均0.3%、11月から4月までが平均7.5%の上昇でした。

次のグラフは1998年以降における、ダウ指数の月別平均上昇率をまとめたものです。

ダウ指数 月別平均上昇率(1998年以降)

これを見ると、格言の通り、5月から9月は上昇をあまり期待できないことが分かります。

そして、1998年以降に限定すると、ダウ指数は5月から10月までの期間で、平均0.73%下落しています。

しかし、この傾向が見られたのは1998年から2011年まででした。
近年は、様子が大きく異なっています。

実際、2012年以降のダウ指数の5月から10月のリターンは、平均3.48%。
それ以前までの傾向と異なっていることがわかるでしょう。

現代社会ではスマートフォンの普及に伴い、人々は年中無休で市場にアクセスできます。
つまり、休暇中であっても、変わらずに取引をすることができるのです。

そう、現実は「5月に売れ」という格言とは逆の方向に動きつつあります。

 

なぜ5月の市場は混乱するのか?


5月は、多くの混乱が起こる可能性がある月です。

なぜなら、この「5月に売れ」という風潮が、市場に広がるからです。

そして、1-3月期決算は4月中で終了し、6月下旬の4-6月期決算まで企業は閑散期を迎えます。

ですから、5月が大きく急落する傾向にあることは、驚くことではありません。

しかし、次の図を見るとダウ指数は1993年以降の29年間で、下落して5月を終えたのは、赤い棒グラフの年で11回。

5月のダウ指数 上昇率(1993年以降)

つまり、優良株は29年間、62.1%の確率で5月を上昇で終えているということです。

そして2013年以降、5月のダウ指数が下落で終わったのは、たった1回です。

つまり、5月は世間で言われているほど「悪い月」ではないのです。

 

5月はどう投資をするべき?


歴史的には、5月は投資家にとって非常に難しい期間の始まりと言えます。

それは、ウォール街の幹部達や一般のアメリカ人も夏休みに出掛けること、そして、小売業や海運業といった、1年の売上に周期性がある業界など、資金を運用する人々の動きが影響しています。

しかし、主要な株価指数の構成要素で見てみると、これらの業界はもはや大きな要素とは言えません。
そして、2013年にスマートフォンの普及が50%を超えてから、以前のように夏休みが市場に影響を与えるということも、なくなったと言えます。

また、5月は、ビールや旅行のような夏に景気の良い業界など、いくつかの収益性の高いトレンドが始まります。

ですから、投資家は5月に売り逃げるべきではないと思います。

今年の4月はトレンドに反して市場が低迷して終わり、
そのまま「悪い月」とされる、5月に突入しました。

しかし、最近の5月は「悪い月」とは言い切れません。
冷静さを保ちながら、長期的な視野を持って投資していきましょう。

ハイリターンを願って。

マシュー

 

~編集部コメント~

冷静さを保つこと、そして長期的視野を持つことは、
投資をする上で非常に大切です。

しかし、頭ではわかっていても、
実際に株価が大きく動くと
冷静さを失ってしまったり、
不安になってしまったりすることもあると思います。

ではもし、「株価の動きを気にしなくてもいい」投資
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Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

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