トレンド投資

サイクルから見る2022年の予測とそのチャンス

前回、「1月が投資家にとってベストな月である」という通説に反して、
実際には厳しい月になるだろうとお伝えしました。

私たちは、投資の方向性を「1ヶ月単位」で判断するために、
各月ごとの株価の動きを見ています。

過去の相場の動きを把握していれば、突然ボラティリティが大きくなったり、株価の下落が起こったりしても、混乱させられることはないでしょう。
むしろ、そのような動きをうまく利用することだってできます。

ただ、それよりも長期的な市場動向も考慮した方がよいでしょう。
そして、その中で特に注目しているのは、米国大統領の任期サイクルです。

このサイクルはとても精度が高いモデルなので、あなたも知っておくといいでしょう。
例えば、2016年の大統領選を例に取ってみます。

2016年、激動の大統領選の最中のことです。
私は、誰が勝利したとしても2017年のS&P500種株価指数は約19%上昇すると予測していましたが、それは外れてしまいました。

しかし2年後、このモデルを使って「2018年には大幅な株価の調整局面」に入ると予測したところ、予測は的中して株価は暴落したのです。

そして翌2019年。
同様に予想した結果は、約17%のリターンを得られるというもの。
すると、それは現実のものとなります。

また、このモデルは「2020年は市場にとって激動の年になる」という予想を導きました。
今振り返ると、それでもまだ控えめな予想だったのではないか?と思います。

さらに、2021年。
「株式市場が16%ほど上昇する」という予想をすると、実際に市場はその通りの動きをしたのです。

このモデルはとても単純なので、多くの投資家は信じることが出来ないかもしれません。
しかし、我々はこのサイクルをある程度もとにして毎年、年間の見通しを立ててきました。
そしてその結果、このサイクルがほぼ正確であることが何度も示されています。

では、これまでのサイクルから2022年の市場の動きはどう予測できるのか?
それをお話ししていきましょう。

 

ロナルド・レーガン大統領からジョー・バイデン大統領まで


数年前、我々は「米国大統領任期のサイクル」を再度分析し直しました。
米国の主要株価指数は常に構成銘柄が入れ替わり、政治情勢も変化するので、
過去の実績を基にしたモデルに現状の動きを反映する必要があるからです。

主要株価指数の動向を米国大統領の任期ごとに見てみると、パフォーマンスに大きな差があることがわかります。

 

通常は、大統領任期3年目の平均パフォーマンスが最も高くなると考えられています。
その次に4年目、2年目、1年目という順です。

なお、このモデルは1901年まで遡ったデータを使用していますが、一方で最近の平均パフォーマンスは大きく異なります。

我々の「米国大統領任期のサイクル」は、1988年まで遡ったダウ工業株30種平均(ダウ指数)を用いており、こちらのデータの方が現状をよく反映しているでしょう。

 

米国大統領の任期サイクルにおけるダウ工業株30種の株価の平均上昇率

過去9期にわたる大統領任期のサイクルを見てみると1年目と3年目にダウ指数が高値をつけていることがわかります。

任期1年目のダウ指数は平均約16%のリターンを記録し、3年目には、優良株で構成されるブルーチップ・インデックスの平均上昇率はおよそ17%とさらに上回っています。

昨年は大統領任期の1年目でしたが、ダウ指数は19%近くも上昇しました。
任期1年目は市場の見方が常に楽観的で勢いがある傾向にあります

なのでほとんどの場合、マクロレベルで何が起こっているかに関係なく、株価は上昇します。

実際、2017年と2021年はそのような状況となりました。
しかし2年目は、1年目とは全く異なる傾向があるようです。

 

蜜月は終わったがチャンスはある


新大統領就任後に訪れる、投資家にとっての蜜月の期間は1年目で終わってしまうようです。

連邦議会やホワイトハウスが約束したこと、あるいは成立が確実だと思われていた法案は、実際のところほとんど実現しません。

そして、2022年の11月に控えるのは中間選挙です。
ここ十数年、中間選挙のたびに議会の分断が進み、厳しい状況となっています。
議会では再選を確実なものにするために、必死に法案を成立させようとする議員がいる一方で、法案成立を阻止しようとする議員がいます。

その結果、政策が定まらず、多くの国民が苦境に陥り、株式市場は勢いをなくして伸び悩んでしまうのです。

このように米国大統領の任期2年目は、先を読めない状況になりがちです。
これは投資家がとても嫌うものでしょう。
実際、米国の大統領任期2年目のダウ指数の平均リターンは3%を少し超える程度になっています。

ですので、2022年に再び株価が2桁上昇する可能性は高くないでしょう。
特にインフレや、米国連邦準備制度理事会(FRB)による利上げとテーパリングの急速な縮小などを考慮すると、今年の市場の回復は期待できないかもしれません。

そして、今もまたパンデミックという逆風に吹き荒れています。
私は投資家になったばかりの頃、あまり先のことを予測しても、ほとんどその通りにならないことを学びました。
しかし、もっと短期間、例えば1か月先や1年先に焦点を当てて過去の実績に基づくモデルを用いれば、もっと予測を正確にできる可能性があります。

米国大統領の任期2年目は株式市場にとって、不運の年になる傾向があります。これは歴史が物語っていることです。
しかし、それでいいのです。
株価が横ばいになったり、乱高下したりする市場でも、短期的に利益を得るチャンスはたくさんあります。

そのチャンスを手に入れるためには、ボラティリティの増大を受け入れる覚悟を持っておくことです。

つまり、目の前で起きることに動揺せず、心の準備をしておけば、目の前の利益を得るチャンスを見逃すことはなくなるでしょう。

ハイリターンを願って。

マシュー

Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

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