トレンド投資

投資成績が振るわない3つの理由

過去数十年にわたり、投資家はある呪縛に苦しんできました。

「平均的」という呪縛です。

ウォール街では、「誰も市場に太刀打ちできない」と言われています。実際、それを裏付けるかのように投資家たちのパフォーマンスは、厳しい現実に直面しています。

Dalbar(マサチューセッツにある調査会社)の2021年中期調査「投資家行動の定量分析(QAIB)」によると、一般的な投資家は、主要なインデックス指標についていくのさえ苦労しています。

事実、平均的な投資家の成績は、S&P500種株価指数を大幅に下回っているのです。

年数経過で見る投資家の成績

2020年は、一般投資家もボラティリティ(株価変動)を利用して、その差をある程度埋めることができたのですが、2021年の上半期は、平均的な投資家のポートフォリオは低迷し、市場全体の約2.1ポイント下回りました。

打席に立ち続け、何度もバットを振っているにも関わらず、彼らのパフォーマンスは結果として指標に及んでいないのです。

何が原因なのでしょうか。

市場が不正に操作されているとか、手数料や税金が高すぎるという訳ではありません。

市場から利益を得るための貴重な情報が不足しているからでもありません。

水準に達しない原因は、投資家自身にあるのです。

投資家の言い訳


この問題を大きく3つに分けて考えていきましょう。

平均的な投資家の成績不振の原因は三つに分類できます。

投資家の成績不振の理由

まず、左側の小さな二つのポイントから話していきましょう。

1.投資に利用可能な資金がない

投資をするための十分な資金がないということが、平均的な投資家の成績不振理由の四分の一を占めています。

これまでにも「投資するお金がない」という言い訳を数えきれないほど耳にしました。

しかし、実際にはそうではありません。

既に行っている方もいると思いますが、勤めている会社の401 (k) (編集部注:米国確定拠出型年金制度。個人年金制度の一つ。従業員は課税所得からの控除、企業の上乗せ拠出は損金算入など、税制面で優遇措置がある。)を活用したり、取引口座を開設し、そこに資金を入れて運用することもできます。

少額からでも始めればいいのです。

私がいつも強調しているように貯金や分相応の生活を意識してください。

他人が何をしているのかを気にせず、借金があれば返済するために働き、利益に頼らないことです。

そのうち資金は出来てきます。

2.資金を他の目的に使う必要がある

次に、円グラフ内二つ目の25%の理由「資金を投資以外の事に使う必要がある」について考えていきましょう。

この理由については、理解できます。

私から投資家に対して、一番お伝えしたいことは、これです。

「今後1年以内に、投資しようとしている資金が必要になるのであれば、投資はしないでください。」

一般的な市場リスクに加えて、取引手数料、短期譲渡益(キャピタルゲイン)課税が利益を圧迫するからです。

しかし、上記の表を見返すと、平均的な投資家が市場に勝てない最大の理由は、心理的要因だということが分かります。

3.心理的要因 (最大の敵)

“It’s no surprise to me, I am my own worst enemy.” (驚かない、最大の敵は自分)

米国ロックバンドの歌詞の一節ですが、投資の落とし穴を語る上で、これほど真実味のある言葉はないと思っています。

なぜ心理的要因が、平均的な投資家が市場平均を下回る成績しか出せない理由の半数を占めるのでしょう。

この要因においては、似たような思い込みや不健康な心のクセが私たちに何度も影響を及ぼしているようです。これらは、馬鹿らしいですが、時に大きな損失にもつながる失敗で、「損失回避性」もその一つです。

研究によると、お金を失うと肉体的苦痛に似たものを感じているという結果があります。そのため、投資家はできる限り損失を回避しようとします。

こういったことが、私たちがトレーリングストップ(編集部注:上がっていく株価を追尾(トレイル)して〇〇%下がったら自動的に売る設定)を設定することをお勧めする理由です。

トレーリングストップには、感情もありませんし、機械的なロボットのように自動的に動いてくれます。

私が度々注意を促している群衆心理もまた、成績不振の大きな要因となっています。

群集心理とは、パニックのなか売ったり、上昇する株価を追いかけるといった行動のことです。投資家が陥りやすい「高値で買って、安値で売る」という、きわめて非効率的な行為で、どんなにウォーレン・バフェットやその他の人が、安値で買って、高値で売ると唱えようと、本当に多くの人が真逆の事をしてしまいます。

「損失回避性」と「群衆心理」。

この二つの間違いが、投資家が市場平均より下回る成績しか出せない、主な心理的要因なのです。

そして、これらは投資家の心理サイクル(周期)の主な推進力となっています。

投資家の心理サイクル

平均的な投資家の全てのダメージは、まさに彼ら自身が作り上げているのです。

この図をあなたの部屋の壁に貼っておくといいでしょう。

10月末から11月頭にかけて、第三四半期の決算発表シーズンはピークを迎えました。

私は、先日株式にとって10月がいかに素晴らしい月になり得るの説明をしました。

しかし、それは株価変動の乱高下がないという意味ではありません。

あなたが心理的に試される時もあるでしょう。

そんな時は、先程のロックバンドの歌詞を思い出したり、もしくは、この図を見て、ポートフォリオにダメージを与えるような馬鹿げた行動をしていないかを確認してください。

ハイリターンを願って。

マシュー

Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

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