トレンド投資

コロナショックで隠れていた珍しいトレンド

今回は、コロナショックによる長い自粛期間に起きていた、珍しいトレンドについてお教えします。

単刀直入に言いましょう。今、株式分割が改めてブームになっています。

私たちがコロナで自粛を始めてしばらくした2020年7月、アップル (Nasdaq: AAPL) が、1株を4株にする株式分割を発表しました。その1カ月後、スラ (Nasdaq: TSLA) が、1株を5株にする株式分割を発表しました。

それだけではありません…今年、5月には、人工知能(AI)や自動運転の分野に進出しているエヌビディア (Nasdaq: NVDA) と、広告データを扱うグローバルテクノロジー企業のザ・トレードデスク(Nasdaq: TTD) が、今後数カ月以内に株式分割を行うことを発表しました。

6月には、大手鉄道・貨物輸送会社のCSX (Nasdaq: CSX) と、商業用不動産データを扱う大手プロバイダーのコスタ―・グループ (Nasdaq: CSGP) もこれに続きました。

これら株式分割は、今、大きなニュースになってきています。

それは、いかに株式分割がまれになったのか、ということを物語っていると言えるでしょう。

株式分割をしたS&P500種株価指数構成企業数

実際、1980年代の株式分割は、年間平均44回でした。

1998年から2000年のドットコムブームでは、年間平均91回でした。

1997年においては、S&P500種株価指数のうちの102社が株式分割を実施しました。

しかし、2019年にはわずか4社にまで減少しました。

株式分割がこれほど減ってしまった理由は、いくつかあります。

1つは、市場が個人投資家ではなく、機関投資家によってコントロールされてきたことです。

別のケースとして触れておくと、「企業が高い株価を維持しているのは、将来に確信がもてないからだ」と主張する人たちがいることも挙げられます。これについては、私は完全に賛同している訳ではありません。原因は、エリート主義にあるのではないかと思っています。例えば、ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイ (NYSE: BRK-A) のクラスA株が、42万ドル以上で取引されているのは、彼が将来に自信が持てないからだとは思いません。

しかし、原因が何であれ、結果は明らかです。

現在、S&P500種株価指数構成企業には、株価が100ドルを超える企業が279社あり、これは構成企業の半数以上にあたります。また、株価が400ドルを超えている企業は、48社あります。さらに、S&P500種株価指数構成企業には4桁の株価を持つ企業が8社あり、990ドル以上で取引されている手術設備メーカーのインテュイティブサージカル (Nasdaq: ISRG) もあります。

これら全ては、株価が非常に高いことを意味します。

S&P500種株価指数構成企業の平均株価は、現在201.80ドルです。2003年の平均価格36.53ドルから、452.4%も上昇しています。

ディスカウントの急増


ここで最も重要なのは、株式分割は、しばしばアウトパフォーマンス(編集部注: 投資成果を表す言葉で、ポートフォリオなどの運用成績がベンチマークとする指標を上回っていること)をもたらす、ということです。

エヌビディアを例に取りましょう。同社は、2021年5月21日に4対1の株式分割を発表しました。

それ以来、同社の株価は30%以上上昇しています。

エヌビディアの株価指数

そして、2020年に株式分割した有名企業2社、つまり、アップルとテスラの指数を見てみると、両社とも上昇していることがわかります。

アップル、ステラの株価とS&P500種株価指数の推移

2021年8月、株式分割から1周年を迎えるにあたり、テスラの株式は市場を席巻し、アップルの株式はS&P500種株価指数に遅れをとっています。どうやら、歴史は、アップルではなく、テスラの株式分割後のパフォーマンスを支持したようです。

ここに面白いデータがあります。2対1、3対1、4対1の分割を行った1,000銘柄を対象に、デビッド・アイケンベリー(編集部注:コロラド大学ボルダーリーズビジネススクール財務教授。投資分析とポートフォリオ管理について修士課程の学生に教えている。)が行った2つの研究では、分割後の1年間で市場を8%上回る結果が得られました。さらに長期的には、分割後の3年間で、12%も市場を上回る結果となりました。

その理由の一つは、多くの投資家が所有したいと思っている高価な銘柄が、より手頃な価格になることです。株価が半分になったり、それ以上に引き下がったりすると、最初に株価が高くなったときの勢いをさらに強めることになります

株式分割は、何年もの間、減少傾向が続いていました。本当に珍しい存在だったのです。ですが今、株式分割は増加しています。もちろん、数十年前の水準には遠く及ばず、今後もそのような水準に達することはないかもしれません。それでも、投資家にとってこのような稀なケースは敬遠すべきものではなく、喜ばしいことでしょう。

ハイリターンを願って。

マシュー

Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

関連する記事

Back to top button