トレンド投資

加熱する宇宙開発競争

1957年にソビエト連邦はスプートニク1号を打ち上げました。これは地球を周回する世界初の人工衛星で、歴史的な出来事であり、その後数十年間の米ソ関係を形成する宇宙開発競争の火付け役になりました。

それ以来、およそ9,000機の人工衛星が地球の軌道に打ち上げられ、5,000機が軌道上に残っていますが、今でも稼働中のものは2,000機もありません。残りはただ宇宙のゴミとなっているのです。

現在、旧来の通信事業者を退けようとする新しいプロジェクトが続々と動き出しています。これによって宇宙は更に混雑することになるでしょう。

つまり、新しい宇宙開発競争が始まっているのです。しかし、今回は国家間での競争ではなく、シリコンバレーのハイテク企業間での競争となります。そして、それらの企業の計画は世界がこれまでに見たことのないようなものです。

アマゾン (Nasdaq: AMZN) の「プロジェクト・カイパー」、テスラ (Nasdaq: TSLA) の「スペースX」、ワンウェブ社、テレサット社は、今後数年間で合計4万6,100機の人工衛星を打ち上げる予定です。これらの4社だけで、過去60年間に40か国が打ち上げた5倍以上の数の人工衛星を打ち上げるペースです。

中でもスペースXは圧倒的に貢献をしており、同社の「スターリンク」プロジェクトは、すでに地球低軌道(地球表面から高度2,000km以下)に約1,500個の人工衛星を打ち上げています。(2021年5月時点)

しかし、これはまだ序章に過ぎません。

スターリンクの全体的な目的は、AT&T (NYSE: T) やベライゾン (NYSE: VZ) などの従来の地上のネットワークキャリアを凌駕することです。大量の衛星によって構成される衛星網(メガコンステレーション)からは、すでに1日あたり5兆バイトのデータが生成されているのです。

そして、これらの4社は氷山の一角に過ぎません。

アップル (Nasdaq: AAPL) 、フェイスブック (Nasdaq: FB) をはじめとする多くのインターネット企業が、衛星電話・衛星通信の可能性を模索しています。基本的には、どの企業も従来の通信事業者を出し抜くための「宇宙からのインターネット」プロジェクトに取り組んでいます。

このプロジェクトに関して、空が落ちてくるのではないかと心配する5G投資家もいるかもしれませんが、宇宙からのインターネットは新しいアイデアではありません。

イリジウム、グローバルスター、テレデシックなどの企業は、2000年代に入る前からこの分野を開拓し始めました。しかし、資本面の問題で破綻したりプロジェクトを放棄したりする結果となりました。

現在のシリコンバレーの巨人達が、それらの企業と同じ運命を辿っているとは言いません。ただ、これらはすべて非常に野心的なプロジェクトであることを覚えておきましょう。そして、どの計画もまだ初期段階なのです。

しかし、現在はより高速で障害のないコミュニケーションが求められているため、これが次なる躍進を遂げるインターネット改革になる可能性があります。

今回の宇宙開発競争における最大の勝者は、ボーイング (NYSE: BA) 、ロッキード・マーティン(NYSE: LMT) 、ノースロップ・グラマン (NYSE: NOC) のようなピックアンドショベル戦略になるでしょう。

(編集部注:ピック・アンド・ショベル戦略とは、商品やサービスの生産に必要な基礎技術に投資する投資戦略のことです。)

これらのプロジェクトには数万機もの人工衛星が必要になるので、投資家は世界最大の人工衛星製造会社に安全策を講じておけば失敗することはないでしょう。

ハイリターンを願って。

マシュー

Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

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