
2025年、米国企業は1.1兆ドル規模の自社株買いを行なうと予想されています。
これは世界18位の経済規模を持つトルコと同じ大きさに相当します。
すでに9,840億ドルの自社株買い枠が発表されており、どちらも過去最高水準。さらに2025年末までには1.3兆ドル超の自社株買いが発表される見込みです。
過熱した市場で企業が犯す典型的なミス
現在、市場は史上最高値圏にあり、株価収益率(PER)も歴史的に見て非常に高い水準です。パンデミックやリーマンショック、ドットコムバブルといった「異常時」を除けば、今が最も高い状況。
PERが市場の適正水準を示す「絶対的な指標」ではなくても、市場の過熱感を測る目安の一つであることは確かです。そのため、企業が「お金が余っているから」という理由だけで高値で株式を買い戻すのは理にかなっていないと感じています。
自社株買いに反対する3つの理由
私が自社株買いに反対する大きな理由は以下の3つです。
余ったお金の使い道は株主が決めるべき
自社株買いは「株主還元」と言われますが、私は配当で受け取りたいと考えています。表面的な1株当たり純利益(EPS)の増加ではなく、自分の投資判断で割安株を買いたいからです。例えば、ある企業の利益が1億ドル、発行株式数が1億株であればEPSは1ドルです。1,000万株を買い戻せば、利益が横ばいでもEPSは1.11ドルに上昇します。実際には利益が増えていないのに「11%成長」に見えてしまうわけです。
企業はタイミングを間違える
学術研究によると、小型株は株価が低迷しているときに買い戻す傾向があります。しかし、大企業はそうではありません。経営陣は「余剰資金を使っている」と見せることを優先し、資本効率を無視するケースが多いのです。経営陣の偽善的な行動
経営陣は「株主のお金」で株を買い戻す一方、自分の保有株は売却しています。アップル (Nasdaq: AAPL) やJPモルガン・チェース・アンド・カンパニー (NYSE: JPM) の経営陣は大規模な株式売却をしながら、数百億ドル規模の自社株買いを発表しているのです。
自社株買いより配当を選ぶべき理由
私は経営陣が事業を運営する能力は信頼していますが、余剰資金の使い道については信頼していません。自分が自社株を買っていないのに、「株価は割安」と言って株主のお金で買い戻すのは矛盾しています。
もし本気で自社株買いを正当化するなら、経営陣は最低1年間は自分の株を売らないと約束すべきでしょう。
株主にとって望ましい選択肢:
- 特別配当
余剰資金を一時的に株主へ直接還元する方法。
株主が即座に現金を活用可能。 - 通常配当の増額
毎期の安定的な配当を増やすことで、長期投資家にメリット。
配当再投資戦略との相性も良い。 - 株主が自由に資金を活用
経営陣の判断ではなく、株主自身が投資先や用途を選択できる形が望ましい。
この方が株主自身が判断して投資や生活に活かせるため、経営陣の利害に左右されずに済みます。
【まとめ】自社株買いは株主還元の最適解ではない
米国企業による自社株買いは過去最大規模に膨らんでいますが、その是非は慎重に見極める必要があります。
結論として、余剰資金は自社株買いではなく配当で株主に還元すべきというのが私の考えです。
P.S.
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