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悪い環境でも生き抜くヒント

米国市場では7 – 9月期の決算発表シーズンが本格化してきました。

今週はグーグルの親会社であるアルファベット、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックの親会社であるメタといった、多くのハイテク企業の決算発表が行われます。

これらの企業ですが、毎回、とある企業の決算がある種の指標として捉えられ、決算の行方を予想するベースとなっています。

その企業とは、スナップ (NYSE: SNAP) です。

動画共有アプリ「スナップチャット」を運営するスナップは、広告収入をメインとしていて大手ハイテク企業よりも早く決算発表を行う傾向があるため、アルファベットやメタといった広告収入に支えられているハイテク企業の決算動向を伺うのに意識されます。

そんなスナップですが、
米国時間10月20日に7 – 9月期決算を発表しました。

今回は、スナップの最新の決算内容と、その決算から見えてくる広告業界のトレンドを見ていきたいと思います。

 

疲れないSNS


スナップチャットは、
写真や短い動画を友達同士でシェアできるSNSアプリです。

これだけ聞くと他のSNSと変わりないように思えますが、最大の特徴は「送られた写真や動画は、開くとすぐ自動的に消える」こと。

こちらはブランドロゴ。

(出所:スナップHP)

“消える”という特性からゴーストがブランドロゴに使われています。

可愛らしさの中に最大の売りポイントが潜んでいるなんて、すごく考えられたロゴですね。

また、スナップチャットでは、「レンズ」と呼ばれるARフィルター機能を備えています。さまざまなフィルターを選ぶことで撮影した自分の顔を自在に加工することができるのですが、その種類はなんと250万以上!

こんな感じでいろいろなテイストの写真・動画が楽しめます。


(出所:スナップHP)

そして、このAR技術を活用して、アパレルや化粧品の使用感を画面越しに体感できる「バーチャル試着」や、仮想空間上の店舗を訪れて買い物が楽しめる「バーチャルストア」といった、最新のマーケティングツールを提供しています。


(出所:スナップHP)

 

“消える”ことの魅力


スナップチャットの月間利用者数は世界で約6億人。
1日当たりの平均利用者数は3億6,300万人。

米国や英国、インドなどで登録者数が多く、Z世代(13〜24歳)の9割が愛用しているというデータもあります。

なぜここまでZ世代に受け入れられているのか?

それは、

  • 人からの評価を気にせずに発信することができる
  • プライバシーの流出へのリスク回避

といった点が評価されているから。

Z世代はSNSが当たり前の時代で生活をしています。

InstagramやTwitterなどのSNSで自分の投稿が多くの人に閲覧されて、いいね!やシェア、リツイートされていくことに慣れています。
ただ、その一方で仲の良い友人だけで気軽にコミュニケーションが取れる場を求める人が増えているのも事実です。

「裏垢」や「鍵付きアカウント」が増えているのもそういった背景があります。

スナップチャットはそのようなニーズも汲み取って誕生しているため、承認欲求を満たすような機能が一切ありません。

また、記録に残らないからこそ、くだらない日常の一瞬を切り取って共有できる。まさに普段の会話と同じ感覚で楽しめる魅力があるのです。

そして、”消える”という特性から、家族間のコミュニケーションに使われる、といった側面もあります。

例えば、小さい子供との送り迎えのやりとりや居場所の確認など、情報流出への懸念から記録として残しておきたくないやりとりにも使われています。

“消える”なんて不便なだけじゃない?と思いがちですが、使い方によっては魅力のあるSNSなんですね。

 

スナップの業績から紐解く業界トレンド


では、最近発表された7 – 9月期決算の売上高を見てみましょう。


(出所:BloombergデータよりOxford クラブ作成)

2017年に上場して以来、四半期売上高の成長率(前年同期比)は2桁以上を記録していましたが、ついに1桁成長にとどまる形となりました。

その影響として挙げているのが次の3つ。

  • マクロ環境の悪化による顧客の広告費予算の削減
  • アップルによるプライバシー保護規制の強化
  • 中国発の動画アプリ、TikTokとの競争激化

これはスナップだけではなく、広告収入を収益の柱にしているハイテク企業すべてに影響する問題です。

 

広告業界への逆風


かつて広告といえばテレビCMや新聞広告、折り込み広告などが一般的でしたが、今や広告費の3分の2がデジタルチャネルに投じられています。

広告収入を収益の柱にしているハイテク企業は、このような広告媒体の変化や好景気を背景に収益を伸ばしてきましたが、景気後退局面では、事業環境の悪化から企業は広告費を削減する傾向があります。

特に中小企業の広告が多い媒体であればあるほど、この影響を受けやすくなります。

また、2021年4月に行われたアップルによるプライバシー保護規制の強化も、ターゲットを絞った広告配信が難しくなるため、収益性の低下につながっています。

さらに、TikTokの出現により、広告費という決められたパイの奪い合いが激化するなど、広告業界への逆風は強まるばかりです。

 

こんな時、企業のどこを見ればいい?


このような環境下では、「不況耐性」が焦点になります。

さきほど景気後退局面では企業は広告費を削る傾向があるとお伝えしましたが、ゼロにするわけではありません。

広告は中長期的なブランド価値の向上を狙う「ブランド広告」と、購買などの行動を促す「ダイレクト・レスポンス」などに分けられます。

事業環境が厳しくなるなか、広告主は売上に直結する即効性のある広告を重視する傾向が出てくるため、消費行動を促すような広告の割合がポイントになってきます。

また、ネット広告以外の景気に左右されにくい事業の構成比も重要です。

アマゾンやマイクロソフト、グーグルなどは広告収入の影響を受けますが、多くの企業の事業基盤になりつつあるクラウドコンピューティングサービスによる収益構成も大きいため、全体的な業績への影響は少なくなります。

景気後退局面では、このような事業の構成比も重要なポイントです。

 

今回はスナップの決算から広告業界のトレンドを見てみましたが、このように自分が保有していない銘柄の決算動向を把握することで、業界全体のトレンドであったり自分が保有している銘柄の良し悪し見えてきます。

また、経済はつながっています。そのため、同じ業界でない企業の決算からも、現在のトレンドを紐解くヒントを見つけることができます。

投資家御用達の経済番組でもあるテレビ東京「News モーニングサテライト」でも主要企業の決算情報を把握することはできますので、ぜひこの時期はアンテナを高く、情報収集を行っていきましょう!

小島璃子

 

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小島 璃子

金融業界歴12年。大学卒業後、メガバンクに約12年間勤務。中小企業~大企業(自動車セクター担当)まで、営業として幅広く担当。メガバンク系証券会社に出向し、投資銀行部門にてM&Aや資本調達などを経験。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会へ出向し、大会開催サポートを経験。メガバンクに戻り、ESG関連のリサーチ・コンサルティング業務に従事。2021年12月Oxford Clubシニア・ストラテジストに就任。 著者の記事一覧≫

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