優良配当株の選び方
では「次のP&G」「次のジョンソン・エンド・ジョンソン」となりえる、あるいはそれ以上のスピードであなたに安定した配当をもたらしてくれる優良配当株はどうやって見つければ良いのだろうか?
Oxford Clubのチーフ・インカム・ストラテジストであるマーク・リクテンフェルドの調査ではそれを見極めるための重要な基準は以下の3つである。
1. 利回り
当然、配当の年利回りが高ければ高いほど良いというわけではない。配当年利回りは、直近の株価と支給された配当(予測の場合もあるが)によって計算されるため、業績が悪化し極端に株価が下がった場合などは一気に利回りが高く見えることがあるからだ。利回りを追求し、安全性を犠牲にしてしまえば元も子もない。利回りが魅力的というだけで株を購入しないことだ。
そうは言っても、利回りは配当株の投資では極めて重要な構成要素である。十分な利回りの株を選び配当投資を始めることは不可欠なことだ。
また反対に、利回りが10%で止まっている、あるいは増配を維持できない株、また配当の成長も速いし安全そうというだけで低利回りの株も買わないほうがいい。定期預金よりもマシだからという理由で配当投資をするならそれでも構わないが、大きく資産を形成したり、配当収入を最大化することを狙うなら物足りないだろう。
当然のことだが、大きな配当収入目的であろうとなかろうと、どんな株を買うにしても長期的に株価が上がると思うから買うのである。利回りが高くて安全で、成長が見込める企業。これが一つ目の基準だ。
2. 配当の成長
株式市場は成長が全てである。投資家は収益とキャッシュフローが伸びている株を買う。配当投資家は増配を求める。CEOは売上と利益を伸ばそうとする。投資家は成長する企業に高い資金を投入する。会社の成長が止まれば、普通は株価が落ちる。
この原則の鍵は、配当の成長である。それがなければインフレで配当は購買力を失う。インフレ率が低くても、時が経つにつれて同じものを買うのにもっとお金が必要になっていく。
(米国は年平均3%以上のペースでインフレ(物価上昇)が起きている。およそ20年ほどで物価が倍になるペースだ。近年日本では0%台のインフレ率、むしろマイナス成長(デフレ)の年もあるが、40年50年の超長期で見るとやはり物価は上昇している。米国に住む米国株投資家は、自国のインフレ率を上回る投資リターン、市場の成長を必要としている。これは現在デフレの国である日本に住む我々が米国株で資産形成を行う大きな利点の一つである)。
毎年充実した額の増配を行う企業は、たいてい収益とキャッシュフローも上がっている。これは事業の健全性を示すサインであり、また同じように、経営陣が株主から求められる義務を理解しているということも示している。
いくら帳簿上で利益が出ているように見えても、経営陣が将来の業績について前向きなコメントを発表していても、実際に手元に潤沢なキャッシュがあり、そして中長期的に継続したキャッシュフローが入ることに自信を持っていなければ、配当を支払いその額を増やすことはできない。
3. 配当性向
配当性向とは一般に、会社が税引後の利益である当期純利益のうち、どれだけを配当金の支払いに向けたかを示す指標だ。もしあまりに配当性向が高ければ、その企業は無理して配当を支払っているというサインかもしれない。
安全性が全てである。大金を産むかもしれない素晴らしい株に飛びつく前に、その株がずっと素晴らしいままで、あなたがその株を長期に保有する価値があるかどうかを確認しておく必要がある。企業の財政状況が良くなければ、いずれは失望させられる可能性が高い。だから、その企業が配当、増配を続けられるか、財務の安全性をしっかり見ておくことだ。
ウォーレン・バフェットの投資の第1のルールは「絶対に損をしないこと」。第2のルールは「ルール1を忘れないこと」だ。
配当投資家は、バフェットの言葉を心に留めておくべきである。その企業が配当を維持できなくなったり不安定になると、そこであなたの複利プランはやり直しになってしまうかもしれない。だがその企業の配当性向を見れば、そういったリスクを低くすることができる。
マーク・リクテンフェルドは、投資対象企業の配当性向を、帳簿上の利益ベースではなく、実際の「キャッシュフロー」ベースで見ていることが多い。帳簿上の利益には「支払いが約束されているがまだ支払われていない売上金」などが含まれている場合があるため、キャッシュフロー(実際に入金されてきた現金)で見る方がより安全な場合があるからだ。そしてそのキャッシュフローに基づく配当性向が75%もしくはそれ以下の企業を基準としている。
一部、BCD、REIT、MLPなど例外はあるが、身の丈に合わない配当を無理して支払っている企業を選ばないことが大切だ。
このような条件を満たす優良配当企業を、毎月Oxfordインカム・レターで紹介している。マーク・リクテンフェルドと我々のチームの分析レポートを読むことができる。