投資情報

金融リテラシー | “臆病”は「最善の戦略」?


人類は「危険を過大評価する」ように進化した


人類の進化は、私たちが常に危険や脅威を警戒するように仕向けてきました。

もしアフリカの草原で暮らしていた祖先たちが、草むらの中で物音を聞いたとします。

そのとき彼らは、たとえそれが捕食者ではなく風だったとしても、とにかく近くの木に駆け上がるのが賢明だと考えていました。

もし木に登らなければ、生き延びて子孫を残す確率は低くなります。

なぜなら、ときにはそれが風ではないこともあるからです。

つまり私たちは皆、臆病だった人々の子孫なのです。

恐れを感じて素早く逃げた人たちこそが長生きし、子どもを育てることができました。

不確実でリスクに満ちた世界では、 少し心配しすぎるくらいが最善の戦略なのです。

おそらくそれが理由で、最近まで「AIは大きなチャンスだ」という投資テーマだったものが、「AIへの恐怖」という投資テーマへと変わってきているのでしょう。


AIへの期待から恐怖へと変わる投資心理


例えば先日、市場はある“フィクション作品”に反応して急落しました。

それは、あまり知られていない Citrini Research という調査会社の金融ブログで、AIによって近未来がディストピアになるという内容でした。

このブログは、オンラインで 2,400万回以上 閲覧されました。

短い期間のうちに、投資家たちは次のように考えを変えてしまいました。

「AIは、人類の繁栄を高めるツールとしては電気の発明以来、最高のものだ。」
と思われていたのが…

AIはホワイトカラーの仕事を破壊し(その後でブルーカラーの仕事も奪い)、大規模な社会不安を引き起こし、最終的には大多数の人々が働かず、政府から支給されるベーシックインカムで生活する世界をもたらす、
と信じるようになったのです。

私はその見方には懐疑的です。

AIが世界を大きく変えること自体は否定していません。

私は何年も前からそう予測してきました。

しかし、AIによって世界が わずか12か月から18か月でひっくり返る という考えは、 かなり可能性が低いと言えるでしょう。


【まとめ】技術予測と現実のギャップ


では、なぜこれほど多くの人が突然それを信じるようになったのでしょうか?

理由は簡単です。

テクノロジーに詳しい人たちがそう言っているからです。

特に イーロン・マスク がそうでしょう。

マスクは世界一の富豪です。

しかし、世界一賢い人物というわけではありません。

誤解しないでください。彼は非常に頭が良い人物です。

決済企業 ペイパルを築き、 電気自動車のリーディング企業 テスラを作り、 商業宇宙飛行を切り開いた SpaceX を生み出すには、相当な知性が必要です。

しかし、知識やIQの高さが必ずしも判断力や知恵につながるわけではありません。

例えばマスクは、自身が関わる政府効率化省(DOGE)が連邦政府の支出を 「少なくとも2兆ドル削減する」 と約束しました。

私は無駄や不正、乱用をなくそうとする努力には賛成です。

しかし、ワシントンの仕組みを理解している人からすれば、 その発言はかなりナイーブに聞こえました。

実際のところ、彼の取り組みによって削減されたのは数十億ドル程度でした。

もちろんゼロよりは良いですが、 連邦政府の総支出はその後も増え続けています。

また2013年には、「3年以内に完全自動運転車が実現する」と彼は言いました。

結果的に、この予測はほぼ10年早すぎたことになります。

2週間前にオースティンで Waymoのロボタクシー を利用したときは楽しかったですが、 マスクは 「2020年までに100万台が道路を走る」 と言っていました。

残念ながら、そうはなりませんでした。

彼はまた 「Optimusヒューマノイドロボットが昨年末までに何千台も工場で働いている」 とも約束していました。

しかし、それも実現していません。

私はマスクを批判しているわけではありません。

未来を予測するのは簡単なことではありません。

しかし彼はこれまで、 大げさすぎるか、時期が早すぎる技術予測を何度もしてきました。

では、

  • 汎用人工知能とヒューマノイドロボットがすぐにすべての仕事を奪い
  • 労働者の報酬(医療保険などの福利厚生を含む)を破壊し
  • 連邦政府や州政府の所得税収を消滅させ、 大規模な社会混乱を引き起こす

という彼の最新の予測をどう考えるべきでしょうか?

私の答えはこうです。

話半分に聞いておくべきです。

マスクは国家支出を削減する難しさを理解していなかったのと同じように、 何百万人もの人が職を失うことを政府が黙って見過ごすとは思えません。

連邦政府、州政府、地方政府は、それを止めるために行動するでしょう。

そして実際に、すでに障害は現れ始めています。

例えば、多くのアメリカ人は自分たちの生活を脅かす巨大企業のデータセンターのために電気料金を上げられることを望んでいません。

実際、先週発表された CBRE Group のレポートによると、 データセンターの建設は昨年後半に減速しました。

▼その理由は以下の通りです

  • 許認可の問題
  • 電力網への接続の遅れ

多くの州では、 データセンター企業が自前の電源を確保しない限り、規制を課す可能性も示されています。

今後数年間、巨大テック企業(ハイパースケーラー)と政治家の間では、さらに多くの摩擦が起こるでしょう。

マスクは、汎用人工知能を作る能力を持つほど賢い人物かもしれません。

しかし、指を鳴らすだけで政府支出を2兆ドル削減できると思っている人は、現実世界の仕組みをまだよく理解していない のです。

AIによるディストピアがすぐそこまで来ているとは思えない理由は、実はたくさんあります。

しかし一方で、AIによって生産性向上が起こる可能性は非常に高いとも考えています。

そのいくつかについては、次回のコラムで説明する予定です。

P.S.

今回の記事はいかがでしたか?

あなたの資産形成に少しでもお役立ていただければ幸いです。

Oxford クラブでは、このような記事を33万人のメールマガジン会員様に毎日無料でお届けしております。

公式サイトからでも1週間にお届けする7つの記事のうち4つはお読みいただけますが、3つはメールマガジン会員様に宛てたものとなっております。

毎日2分メールをお読みになるだけで、少しずつ米国株による資産形成のコツを身に付けていただけるでしょう。

『米国Oxford クラブのNo.1ストラテジストアレックス・グリーンが教える人生を変えるたった一つの銘柄』

20年前にアップル、アマゾン、エヌビディアを見つけ出したアレックスが選ぶ 7つの銘柄
次のマグニフィセント・セブン

→メルマガ登録で無料プレゼント

Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

関連する記事

Back to top button