
「世界は悪くなっている」は本当か?
私たちが直面する課題は山積みです。
しかし、長期的な視点で見れば、時代の流れは、確実に前へ進んでいます
▼暮らしは確実に向上
- 人々はこれまでになく長く生き、生活水準は歴史上もっとも高く、教育水準もかつてないレベルに達しています。
- 世界全体で見れば貧困は減少し、犯罪は長期的に減少傾向にあります。
- 空気や水の質も、ここ数十年で大きく改善されてきました。
現代の西側諸国に生きる私たちの多くは、かつてない平和と豊かさの中に暮らしているのです。
それでも、私が「多くの人にとって、多くの場所で、日々の暮らしは少しずつ良くなってきています」と発言すると、読者からはこんな声が返ってきます。
「でも、今の世界には問題が山ほどあるじゃないか?」
もちろん、その通りです。
私たちが抱える課題は多岐にわたり、とても一つのコラムで書ききれるような量ではありません。
私もニュースを見るため、現実の厳しさを無視することはできません。
しかし、それでも私はこう思うのです。
「世の中の状態に対するメディアの描き方に、疑問を持つ人があまりにも少なすぎる。」
むしろ、自分自身は恵まれた生活をしていながら、「報道はまだ甘すぎる」とすら感じている人もいます。
さらに多くの人が、「問題の本質」や「それを解決する力がどれだけ進化してきたか」に目を向けられていません。
誤解の元になるのは、一見もっともらしく見える“間違った物語”です。
たとえば、こんなストーリーを聞いたことがあるかもしれません。
自然は本当に「理想郷」だったのか?
この地球は、何百万年もの間、人間にとって理想的な生命維持システムを提供してくれた。祖先たちは太陽、水、豊かな自然の中で、健康的に暮らしていた。ところが現代の私たちは、開発や消費主義でこの“楽園”を壊してしまい、生活の質まで落としてしまった。
この物語には、事実とは異なる要素が多く含まれています。
唯一正しいのは「太陽は今もちゃんと輝いている」ことくらいです。
初期のホモ・サピエンスにとって、地球は「楽園」ではなく、むしろ死の罠に近いものでした。
現代の多くの人が暮らす場所では、冬の夜に建物も服も車もなければ、数時間で命を落とします。
それを「生命維持システム」と呼ぶのは、皮肉にもほどがあります。
確かに、私たちの祖先が暮らしていたアフリカ東部のリフトバレーは、比較的温暖な地域でした。
ただ、そこには、清潔な水も快適な住まいも、医療もなかったのです。
代わりにあったのは、捕食者、寄生虫、病原体。
人々は頻繁に怪我をし、毒にやられ、飢え、病気になっていました。
人間は自然界では、特に強いわけでも速いわけでもありません。
そのため、サーベルタイガーやナイルワニにとっては、ちょうどいい“ごちそう”だったのです。
多くの子どもは乳幼児期に命を落としました。
当時の平均寿命は30歳未満。
退職後の人生なんて、想像すらできない時代でした。
「自然は人間には厳しいけれど、他の動物にとっては理想的なのでは?」と思うかもしれません。
でもそれも違います。
野生動物の多くは、短く、不安に満ちた、恐怖の中で生きています。
そして最期はしばしば、とても残酷です。
例えば、ある日、私のオフィスの窓の外に、リスをつかんだアカオノスリ(鷹)が飛んできました。
目の前でリスの肉を引きちぎりながら食べているその光景は、まさに“自然のリアル”でした。
詩人テニスンが「自然は“牙と爪に血をにじませた存在”」と表現したのも納得です。
あるいは寄生バチ。
この昆虫は卵をイモムシの体内に産み、生まれた幼虫の体液を吸いながら、宿主をギリギリまで生かしておき、最後に体を破って出てきます。
それが自然界の“調和”なのです。
地球にこれまで存在した種のうち、99%以上が絶滅しました。
私たちホモ・サピエンスも、絶滅の淵から生き延びてきた存在です。
つまり、私たちの「豊かな今」は、奇跡の上に成り立っています。
【まとめ】投資にも通じる「正しく世界を見る力」
これは投資の世界にも深く関係します。
世の中には、「それっぽいけど間違っている話」が溢れています。
そしてそれは、投資の世界では特に危険です。
多くの人が、データではなく“印象”で判断し、良い投資機会を見逃し、悪いアイデアに大切なお金を投じてしまう…
しかし現代の私たちは、科学革命、産業革命、法の支配、そして資本主義という“改善の連鎖”によって、かつてないほど長く・質の高い人生を生きられるようになったのです。
もちろん、問題は常に存在します。そしてこれからもなくなりません。
でも、それは悪いことではないのです。
P.S.
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