投資情報

低コストで成功を掴んだレジェンド

皿洗い係が書いた本を手にする機会は滅多にないと思います。

ただ、オレゴン州ベンドのパン屋で働くグレン・バン・ペスキ氏(Glen Van Peski)は、

ただの皿洗いではありません。

この数年、ハイキングでグレンとの親交を深められたのは大きな喜びでした。

最近ではイタリアのトスカーナやオーストリアのハイキングコースをともに歩きました。

グレンはアメリカ西海岸を縦断するパシフィック・クレスト・トレイルの大部分を制覇しただけでなく、ヨーロッパや日本の辺境も歩いたことがあります。

BackpackerやOutside誌、National Geographic Adventureといった雑誌に加え、ニューヨーク・タイムズ紙なども彼を取り上げました。

 

出所:the new york times
 

スピーカーとして世界各地の講演にも招かれています。

ハイカーらの間で「レジェンド」と呼ばれるグレンは、超軽量バックパッキング用品メーカーを起ち上げ成功を収めた人物です。
 

出所:gossamergear
 
それが最近では、ハイキングやサイクリング、友人らとの集い、フランス語、イタリア語、ドイツ語、日本語の勉強といった時間の合間を縫ってスパロウ・ベーカリーへ出向いては、ウォールストリート・ジャーナル紙を読むか、皿洗いをしています。

最近発売された彼の著書「Take Less. Do More.」を読むと、彼が経験してきた数々の冒険を知ることができます。
 

出版社 : Forefront Books (2024/4/16) 著者: Glen Van Peski
 
 
この本は、地球上で最も美しい場所を旅する楽しみについて書かれています。

それだけではなく、ゴッサマー・ギアという会社を設立し成功へ導いたビジネスマンとしての軌跡も紹介されています。
 

出所:GOSSAMER GEAR
 
(ボーイスカウトの旅行で当時13歳だった息子と32キロの重いバックパックを背負い続けた辛い体験が、起業のきっかけとなったそうです。)

グレン自身のこれまでの挑戦や失敗、勝利といった、いわばパーソナル・ヒストリーも読みごたえがあります。

 

人生に役立つのは足し算ではなく引き算だ

ですが私にとって何よりも興味深いのは、

すべてのページから浮かび上がってくる彼の人生哲学です。

全米最大の自然食品スーパの創設者ジョン・マッキーが序文にこう寄せています。

人生に役立つのは足し算ではなく引き算だというのがグレンの信念だ。彼が製品化した「ウルトラライト=超軽量」の原則を人生にも当てはめることで、古くからの哲学的原則に再び意味を見出した。シンプルな生活ほど良いものはない。余計なものを省き生活をシンプルにすることで、私たちはより充実した人生を生きることができるのだ。

 

実践的なアドバイス

この本には、実践的なアドバイスと時代を超えた知恵が溢れています。

その一部を紹介しましょう。

1. 優しさ: 「自然の前では誰もが平等だ。寛大であることで命を救うことはできなくても、変革をもたらすことはできる。」
2. 考え抜くこと: 「長い時間歩き続けると、心は軽やかになり自由に飛び回るように思考できる。」
3. ミニマリズム:「所有物を極限まで減らすのではなく、適切な量を所有することで、人生の優先すべきことにフォーカスできる。」
4. お金の使い方:「クオリティが高く長持ちするものを買い、モノよりも経験にお金を使う。」
5. 幸運:「私たちは自分にないものに目を向けがちだ。訪れた幸運や恵みは簡単に忘れてしまう。」
6. 謙虚であること:「大自然の中にいると、自分がいかに小さな存在か思い知らされる。」
7. プライオリティ:「目標が変わることはない。願いや情熱に力を与えてくれる要素を生活に取り入れ、そうでないものは極力遠ざける。」
8. 感謝する心:「日々の鍛錬が必要だ。鍛えなければなくなってしまう筋肉に似ている。」
9. 慈善事業:「チャリティに寄付する金額について妻も私も何も感じなくなってきたら、額を増やすようにしている。」
10. 完璧さ:「完璧さとは、これ以上足すものがなくなったときに到達するのではなく、これ以上取り除くものがなくなったときに到達するものだ。」

 

その広告、本当に必要なものですか?

現代社会において、物質主義的でない生活を送るのは簡単なことではありません。

グレンは、映画やテレビ、ソーシャル・メディアに加え、絶えず目に飛び込んでくる広告は、

1)自分が持っていないものを他の誰もが持っている、

2)何かを手に入れさえすれば人生はもっと良くなる、

と私たちを暗示にかけるといいます。

これは人々を幸福にするどころか、破滅へと導く最短ルートです。

妬みや嫉妬に苛まれれば、

一番大切な投資上のゴールが遠ざかるだけではありません。

豊かさや感謝ではなく、悔しさや恨みを抱くようになってしまうのです。

それはあまりにも高い代償です。

 

失敗は幸福への通過点に過ぎない

私たちと同じように、グレンの人生にも多くの浮き沈みがありました。

それでも、彼は「失敗は幸福への通過点に過ぎない」と説きます。

失敗こそが困難に打ち克つ力や問題解決能力を育み、

創造性を生み出し、自分自身の強さや弱さをも教えてくれるのです。

グレンの最も優れている点は視野の広さだと思います。

 

自分の物語をどう捉えるか

彼は誰の人生にも2つの物語があると述べます。それは、良い物語と悪い物語の2つです。

どちらにフォーカスするか、選ぶのは私たち自身です。

例えば、かつてグレンは両親の離婚というトラウマを抱え、神経質で心配ばかりしている子供でした。学校では人気がなく、友達もあまりいませんでした。パイロットが死亡した飛行機事故で死にかけたこともあります。息子のデレクは重度の障害を持って生まれ、息子との困難な日々に妻のうつ病は悪化しました。あげく金融危機による景気悪化のあおりを受け、会社は倒産しました。

辛いですよね。ですが、これはグレンがフォーカスする方の物語ではありません。

彼は知的で愛情深い両親に育てられたと回想しています。素晴らしい教育の機会に恵まれただけでなく、ラクロス・チームのキャプテンを務め、学生団体の会長にもなりました。大学を優秀な成績で卒業し、土木工学への情熱を見出した彼は、最愛の人と結婚。その後バックパッキング用品メーカーを起ち上げ、数百万ドル規模のビジネスに発展させました。環境の良いエリアの洒落た家に住み、成人した2人の息子を深く愛しています。アウトドアという趣味を通じ、経営者やトップ・アスリートからハリウッドスターまで、何百人もの友人を作ることもできました。

「なんて素晴らしい人生だろう!」と彼は述べます。

彼の本を読めば、「身軽に旅する」ための方策がわかるでしょう。(グレンは、ハイカーや旅行者の荷物が多くなるのは「恐怖を詰め込みすぎるからだ。」といいます。)

また、彼のハイキング・パートナーである俳優のマシュー・マコノヒーによる、いびきを2秒で止める方法も紹介されています。(それだけでも、この本を買う価値があります!)

グレンが 「Gopher conversion(ゴーファーの改宗)」と呼ぶ、驚くべき宗教的啓示についても触れられています。

おそらく今皆さんの頭の中に浮かんでいる疑問、「グレンのような人がなぜパン屋で皿洗いをしているのか?」に対する答えも、本の中で明らかにされています。

投資を通して人生を豊かにしたい私たちにも

多くのヒント与えてくれる本です。

 

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Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

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