現金を持ちすぎない
15年前の金融危機の際、連邦準備制度理事会(FRB)は短期金利を限りなくゼロに近づけました。
その状態が、驚くことに、13年以上も続いたのです。
短期国債やマネーマーケット口座はゼロ、またはゼロに近い金利で、
「現金はゴミだ」というのが従来の常識でした。
ですが、今、私たちが生きている世界は、まったく異なります。
・ゼロ金利
・バイデン大統領と民主党による大幅な支出
・新型コロナウイルス拡大に伴う封鎖で世界のサプライチェーンが急停止したこと
を受け、消費者物価は急上昇。
連邦準備制度理事会(FRB)は40年以上ぶりの高インフレに対抗するため、
過去14か月間で金利を5%も引き上げました。
そのため、株価や債券価格は昨年初めの高値から下落しています。
一方、Vanguard Federal Money Market Fund*(VMFXX)の利回りは現在、5%を超えています。
*総資産の少なくとも 99.5% を米国政府証券、
または現金 (総称して政府証券) によってのみ担保されている現先契約に投資するファンド。
「リスクのない政府系マネーマーケット・ファンドで5%の利回りが得られるのに、なぜ株式や債券に投資するリスクを負わなければならないのか」
という読者の質問が以前ありました。
良い質問ですね。
答えは、マネーマーケット・ファンドの利回りは長くは続かないかもしれないからです。
過去80年間、S&P500種株価指数は、マネーマーケット・ファンドの2倍の年平均リターンを生み出していますが、
超安全で、超低コストで、超流動性があるファンドなので、
私の手持ち資金はVanguard Federal Money Market Fundで保有しています。
消費者金融サービス会社であるBankrateによれば、同ファンドは、全米で最も利回りの高いマネーマーケット・ファンドであると言われています。
しかし、真剣な投資家にとって、現金は一時的な持ち場でなくてはなりません。
マネーマーケットの利回りが高いのは、インフレ率が高いからです。
インフレ率を差し引くと、バンガードのマネーマーケット・ファンドは正味で損をすることになります。
(とはいえ、利回りの低い99%のマネーマーケット・ファンドに比べれば、その損失は少ないと言えますが。)
バンガードによると、同ファンドは今年初めから2.35%リターンを上げています。
(年初来の利回りがそれほど良くなかったことを考慮すれば、1年を通してもそれほど利回りは高くないかもしれません)。
このファンドのリターンは、S&P500種株価指数の年初来リターンの約18%を大幅に下回っています。
また、強気市場に戻って年初来約34%も上昇しているナスダック総合株価指数には、さらに遅れをとっているのです。
確かに、今後数か月の間に景気後退が起こり、市場が再び下落する可能性はあります。
しかし、そうなった場合、連邦準備制度理事会(FRB)は経済活性化のために再び金利引き下げに踏み切る可能性が高いでしょう。
それは株式にとっては良いことかもしれませんが、金融市場の利回りには悪い影響を与えるはずです。
なぜなら、このようなファンドは超短期の債券、つまり短期国債や高格付けのコマーシャル・ペーパー(無担保の短期約束手形)だけを保有しているからです。
これらの金利が下がれば、金融市場の利回りも下がります。
高い利回りを享受するのは今ですが、やりすぎは禁物です。
債券や譲渡できる定期預金とは異なり、マネーマーケットの利回りは一定期間固定されません。
インフレになると、実質的に何も稼げなくなります。
(純資産を増やし、ポートフォリオを充実させるためには、最適な方法とは言えません。)
歴史的に見ても、どの資産クラスも長期にわたって株式の分散ポートフォリオを上回るパフォーマンスを発揮することはありません。
要するに、10年以上にわたってマネーマーケットの利回りは非常に低く、短期国債やマネーマーケット口座は、すぐに使うか投資する資金の保管場所として以外は、ほとんど考慮するべきではないのです。
明日にはなくなってしまうかもしれない5%の利回りを得るために、
今日、マネーマーケット・ファンドに長期資金を投入することは、賢明なリスク管理ではありません。
かつては、「現金はゴミのようなものだと」言われていました。
ですが、それはもはや真実ではありません。
しかし、あまりに多くの現金を保有するのは短絡的だと言えるでしょう。
P.S.
〜編集部〜
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