なぜ弱気相場になったのか?3つの失敗とは…
最近、読者の方から「今の相場に困惑している」という率直な声が届きました。
7 – 9月期の米経済は予想を上回る2.6%の上昇で、それほど悪い状態ではありません。
雇用も賃金も好調で、失業率も低く、企業収益もほとんど予想を上回っています。
だからこそ彼は「なぜ、今年の株式市場はこれほどまでに下がっているのか?」と困惑していたのです。
答えがあるとするなら、それは「金利」でしょう。
なぜなら、世界のサプライチェーンはまだ混乱しており、ウクライナ戦争も事態を好転させていませんが、その一方で金利は上昇しているからです。
41年ぶりの高インフレに対する連邦準備制度理事会(FRB)と債券市場の対応が原因になっています。
金利水準は、事実上すべての重要な金融の意思決定に影響を与える主要な指標です。
過去最低の住宅ローン金利は、住宅市場の好況を招きました。借入コストが極小化されたことで、消費者、企業、政府にとって支出が少なくなるからです。
債券や現金は株式の利回りよりも魅力的ではありません。
そしてゼロに近い金利が、過去13年間、株式市場を上昇させるロケットの燃料のようなものになってきたのです。
しかし現在、金利は急上昇しています。その原因は世界各国の政府が犯した3つの政策の失敗によるものです。
1つ目は、新型コロナウイルスへの対応です。
最も注意しなければいけない高齢者や既往歴のある人々の健康を守るためには、迅速かつ効果的に行動しなければいけません。しかし、その時に世界は経済を停止させてしまったのです。
もしそのような対応をしていなければ、2つ目の失敗である、政府支出の膨張を防ぐこともできたでしょう。
パンデミックは常に大規模な財政的対応を必要とするものであり、それは避けられないことでした。
しかしラーム・エマニュエル駐日米国大使の有名な言葉にあるように、「深刻な危機を無駄にしてはならない」のです。
残念ながら政治家たちは、役に立たないプロジェクトや、「票を買うため」に何兆ドルもの資金を費やしました。
彼らは何もしなかったと非難されるのを避けたかったがために、やり過ぎなぐらい意味のないことを実行したのです(結局のところ、自分たちのお金を使っているわけではないのですから)。
インフレの古典的な定義は、少ない財やサービスに集中する多くのお金です。
企業を閉鎖し、同時に経済に資金を投入すれば、その結果は予想通り高インフレを招きます。
予想外だったのは3つ目の失敗で、それはFRB(および他の中央銀行)が、2%増の物価目標を大幅に上回るインフレを引き起こすと言明したことにあります。
一旦、動物が小屋から外に出てしまうと、それを抑制するのは困難になります。
インフレが暴走してしまったため、FRBは厳しい措置を取らざるを得なくなり、0.75%ずつの金利引き上げが行われたのです。過去30年以上の中で最も速いペースでした。
これは「強い薬」というだけではありません。「危険な薬」です。
中央銀行が一般的に0.25%ずつ金利を引き上げる理由は、一旦立ち止まってその行動の結果を確認するためです。
小売売上高は軟調に推移しているのか、雇用は減速しているのか、企業投資は減少しているのか…
しかし、インフレが進行している時には、立ち止まってそれらを確認するような時間はありません。
それどころか、FRBは自らが起こしてしまった火種を消すのに精一杯です。そしてインフレが高くなり過ぎると景気を後退させる可能性があります。
これら3つの失敗、つまりロックダウン、政府支出の膨張、FRBによる引き締めの遅れが今年の弱気相場の原因でしょう。
そして、この下落が以前の下落とは違うと感じるなら、その通りです。
過去40年間、経済活動に陰りが見え始めて、株式市場が低迷すると、FRBは金利を引き下げて痛みを和らげるのが一般的でした。
しかし今回は、そうならないでしょう。
FRBには、失業率の低下と低インフレという2つの使命があります(一般的に失業率とインフレは負の相関関係にあります)。
このような状況下で明るい材料を探すなら、それはこういった要因が広く認識され、すでに株価に織り込まれていることです。
しかし市場は上昇局面でもそうですが、下降局面でもオーバーシュートする(一方向に行きすぎる)傾向があります。だから、11月10日にインフレ率が予想を上回ったことで 、株価は猛烈に上昇し始めたのです。
市場の方向性の変化は、多くの投資家が予想するよりも長く続く可能性があるでしょう。
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