投資情報

一挙両得

Oxford インカム・レターの執筆者であるマーク・リクテンフェルドは、私の友人であり同僚です。

彼は、着実に配当金を増やしているような企業を研究し、読者の方々に銘柄を推奨してきました。

一方で私が気に入っているのは、余剰のキャッシュフローを配当金としてではなく、自社株買いのために充てる企業です。

これらは、どちらのアプローチにも利点があります。

しかし投資家は、配当銘柄と自社株買い銘柄のどちらかを選ばなければいけないということはありません。

なぜなら、両方のアプローチを使って利益を狙うことができるからです。

詳しく説明しましょう。

今年の市場は、まさにマークが推奨するような銘柄、つまり多額の配当金を支払っている収益性の高い企業が好まれています。

これらは一般的にバリュー(割安)株と呼ばれています。

これに対してグロース(成長)株、特にテクノロジー株は今年大きな逆風にさらされています。

そして、成長はしていても利益を上げていない企業にまで影響が及んでいるのです。このような企業は投資家にとって大きなチャンスです。実際いくつかの銘柄は、非常に割安で売られていますから。

しかし、ここではもう少し保守的な投資にこだわってみましょう。

 

配当を出している企業は、一般的に利益率が高く、成熟した安全な企業だと言えます。

では、自社株買いをする企業が好まれる理由はどこにあるのでしょうか。

それは、節税になるからです。

偉大な投資家ピーター・リンチ氏は、長期投資家は、税引き後のトータルリターンを最大化させることを目標に持つべきだと言います。

この言葉はしばしば忘れられがちですが、注意すべき言葉です。投資にかかる税負担を最小限に抑えることは、重要な目標です。

自社株買いをしている企業は、株主総利回り(TSR)*について配当銘柄とほぼ同じであることを覚えておきましょう。
(編集部注:一定期間における収益(値上がり益と配当総額)を投資額(株価)で割った比率。株主にとってのリターンを表す指標。)

他の条件が同じであれば、4%の配当を支払っている企業と、無配当で発行済み株式の4%を買入れする企業のリターンは同じになるはずだということです。

配当銘柄とは異なり、自社株買いをしている企業の場合、株主に対して金銭の分配は行われません。つまり、課税対象にはならないのです。

あなたはなぜ、ウォーレン・バフェット氏が世界有数の富豪になることができたのか、ご存知でしょうか?

その1つは、彼が会長を務めるバークシャー・ハサウェイ(NYSE: BRK-A)が一度も配当を支払ったことがない企業だからです。たった一度もです。

さらに彼は、数千億ドルの財産の大半を占める株式をほとんど売却していません。「好きな保有期間は”永遠”である」と言うぐらいですからね。

売却することがなければ、税金を支払う必要はありません。税金に関してバフェット氏は賢い男なのです。

そして彼は当然ですが、配当を支払う企業があることも知っています。自社株買いをする企業もあるし、その両方を行う企業もあるのです。企業が通常の配当に加えて自社株買いをする場合、それは経営者が資本配分に優れていることを意味します。

 

配当利回りと自社株買い利回りを足すと、「株主利回り」と呼ばれるものになるのです(自社株買い利回りとは、企業が自社株買いに費やす金額を時価総額で割ったものです)。

例えば、アップル(Nasdaq: AAPL)の配当利回りはわずか0.5%です。しかし、過去1年間に860億ドル(4%)の自社株買いを行ったため、株主利回りは4.5%に達しています。

バークシャーの最大のポジションの一つであるアップルは、決してパフォーマンスが悪いわけではありません。

しかし現在、アップルよりも高い株主利回りを実現している企業は他にもあります。

例えばS&P500種株価指数を見てみると、モルガン・スタンレー(NYSE: MS)の配当利回りは3.1%、自社株買い利回りは7.9%で、株主利回りは11%であることが分かります。

悪くないですね。

シーゲイト・テクノロジー (Nasdaq: STX) の配当利回りは3%、自社株買い利回りは10.8%で、株主利回りは13.8%となっています。

さらに良いですね。

今週、株式市場のアナリストたちは、バークシャーがPCやプリンターを製造する、古くてありきたりな企業であるHP Inc. (NYSE: HPQ) に約42億ドル(約5200億円)を投資したことに困惑しました。

ですが、同社の配当利回りは2.5%、自社株買い利回りは19.3%で、株主利回りは21.8%と驚異的な数字です。これは、S&P500種株価指数の中で最も高い株主利回りで、他の企業は及びません。

そして、バフェット氏の持ち株比率は11.4%となり筆頭株主になったのです。

やはり彼は賢い男です。

良い投資を。

アレックス

 

PS
Oxford キャピタル・レターでは私が分析して発掘したオススメの銘柄を紹介しています

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Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

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