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社長が自社株を売ったら株価は下がる?

経営陣による自社株の売買を研究しているファイナンスの教授がいます。

時に彼らは、企業の役員や取締役が、購入した株数よりも多くの株数を売却しているのを見て、「株価が下がる!」と市場に警告を発することがあります。

しかしこれは全くの見当違いで、特に経営陣の売却株数が購入株数より多いのは一般的なのです。

なぜなら現在、役員報酬の主要な部分を占めているのがストックオプションの付与だからです。

役員や取締役は、付与価格と現在の市場価格との差額を利益として得るために、これらの株式を売却します。

彼らが株式を保有し続けることは心強いことです。 しかし経営陣が株式を売却する正当な理由には、事業の短期的な見通しとは無関係なものがたくさんあります。

例えば生活費が高いのかもしれませんし、 ポートフォリオを多様化しているのかもしれません。 あるいは子供の高額な教育費を支払ったり、別荘を購入したりしているかもしれません。 または離婚して株式の半分を売却する必要があるのかもしれません。

このような理由から、売却する株数のほうが購入する株数よりも通常多いのです。

この事実を知らない投資家は、自分が保有している企業の経営陣が自社株を売却していることを知って、パニックに陥ることがあります。

ですがそのような心配は杞憂に終わることが多いのです。

しかし特に株価が下がっているのに経営陣が大量に売却している場合には、懸念すべき正当な理由がある場合もあります。

それはネガティブな指標のサインとも言えるでしょう。

これは経営陣が自社株を手放したがっているというメッセージをはっきりと伝えるものであり、彼らは株価にそれほどこだわっていないのです。

多くの投資家は自社株売却の本質を理解していないだけでなく、金融機関が毎月発表するインサイダー売買比率を誤解しています。

例えば経営陣の自社株売りが急増すると、市場が暴落するという結論に達する人がいます。 同様に、経営陣が平均より多く自社株を購入していれば、それは市場が上昇することを意味すると考えています。

ですが実際は必ずしもそうではありません。

経営者は自分が経営する企業のことはよく知っていますが、市場全体がどうなるかについての知識は、他の人たち同様です。

また経営陣による大量買いが市場の底を示すことはあっても、経営陣による大量売却が市場の頂点を示すことはほとんどありません。

悲しいことに、マーケット・タイミングは機能しません。 (稀な例外は10年に1度くらいの割合で見られますが、それは投資家の幸福感がバリュエーションの高騰と重なった場合や、絶望的な悲観論がバリュエーションの底値と重なった場合です。)

経営陣が市場のタイミングを計ることについては、他の人より秀でているわけではないのです。

しかしこの方程式を裏返してみましょう。 なぜ多くの経営陣が、現在の市場価格で自社株を自腹で大量に購入するのでしょうか。

もちろんその答えは、彼らの経験と多くの知識に基づいて、株式が価値よりもはるかに低い価格で売られていると考えているからです。

経営陣の動きの大まかな指標は比較的意味がありません。 特定の企業における自社株売りは様々なケースがあります。 しかし個別の企業における大量の経営陣による自社株買いは、非常に重要な指標となるのです。

市場予測を気にする必要はありません。 その代わりに、役員や取締役が自社株に巨額の投資をしている企業に注目しましょう。

買いのシグナルを探しているのであれば、最高のシグナルの一つはそこに見つけられるのです。

良い投資を。

アレックス

PS
「買い」の対象となる企業を、私はいろんなシグナルを使って分析しています。

→詳しくはこちらです

Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

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