人は歴史上の偉大な発明家に憧れます。ベンジャミン・フランクリン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、トーマス・エジソン、ライト兄弟、スティーブ・ジョブズなど。
しかし我々自身が偉大な発明家であることはほとんどありません。
だから斬新な投資システムや、まったく新しい証券分析の手法を生み出そうとしても、あまり意味がないのです。
それよりも他人の優れたアイデアを臆面もなく模倣するほうが、はるかに儲かるし、手間もかかりません。
いくつか例を挙げてみましょう。
前職で私はポートフォリオマネジャーをしていたので、全米トップの株式ファンドマネージャーの上位保有銘柄を定期的に調査していました。(彼らは四半期ごとにフォーム13Fという書類で保有銘柄を報告することが義務付けられています。)
そこでは重複するアイデアを探し出し、その企業のどこが優れていて、全米トップのファンドマネージャーが熱心に購入しているのかを逆算していくのです。
このようにして私はたくさんの勝ち組銘柄を選び出し、そして何年もかけて自分の売買システムを模範、改良してきました。そのうちの一つはモメンタム銘柄を対象としたものです。
私は有名なCAN-SLIM(キャンスリム)システムの創始者であるウィリアム・オニールの著書や研究書を読み、彼が発行する新聞「インベスターズ・ビジネスデイリー」を毎号熟読しました。
そして彼が勧める手法のうち、うまくいったものはすべて取り入れ、うまくいかなかったものはすべて却下するか、少なくとも修正したのです。(例えばオニールは7%や8%のマイナスになった株を売却することを勧めていますが、それではストップが厳しすぎて、空回りしているように感じるほど頻繁に損切りしてしまうことになります。)
30年前、私は知識豊富なインサイダー、つまり企業の役員や取締役の取引に便乗することも学びました。(訳註:インサイダーが自社の株式を買うこと自体は問題ではありませんし、当該取引はフォーム4というフォーマットで報告義務があるためインターネットで公開されており、誰でも無料で閲覧し投資判断の参考にすることができます。)
私はモメンタムトレード戦略を発明したわけではありませんし、またインサイダーが購入する銘柄を注意深く監視した最初の人物でもありません。
私はこれらの優れたアイデアを徹底的に検証し、より良い結果を得るために微調整を続けてきただけで、ビジネスの世界ではよくあることです。
例えばウォルマートの創業者サム・ウォルトンはまったく何も発明せず、小売業界の誰もがやっている賢い方法をすべて真似しました。
その結果、彼は世界最大の小売店チェーンを作り、米国で最も裕福な一人になったのです。
鉄鋼メーカーのアンドリュー・カーネギーは、冶金学の急進的な革新によって巨額の富を得ようとするのに時間を惜しみませんでした。彼は「開拓は金にならない」と忠告しました。
バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット会長は、師匠であるベンジャミン・グレアムのやり方を真似しました。
そして私を含め、多くの人がバフェットのアプローチの一部を模倣しています。
ビジネスにおいても、投資においても、そして人生においても、なぜ多くの人がこのように真似しないのでしょうか?
難しい方法で物事を学ぶことを好む人もいるようですが、私にはその理由がわかりません。
ジョナス・ソークやアレクサンダー・グラハム・ベルのような人でない限り、ゼロから始めてまったく新しいものを生み出そうとするのは思い上がりです。
生み出すには時間もかかるし、イライラするし、お金もかかります。
しかし人間のDNAには、良いアイデアを簡単に取り入れることを妨げる何かがあるようで、それは残念なことです。
賢い人たちが何をしているかを観察すれば、彼らの最高のアイデアを自分の人生やビジネス、ポートフォリオに応用することが可能なのです。
インド系米国人のビジネスマンであるモニッシュ・パブライは、知名度は高くないかもしれませんが、同世代の中で傑出した投資家の一人です。
パブライは自分が成功したのは最も尊敬する人々の方法や原則、アイデアに従ったからだと主張しています。
「他の人が理解していない真実に出会ったとき、あなたはそれを大いに掴む必要がある。人類が理解していない真実を手に入れたら、いつでもそれは大きな競争力になる」と彼は述べています。
人によっては自分のアイデアが二次的だと見なされるのではないかと心配する人もいますが、パブライはそのような人ではありません。
彼が気にかけているのは、何が有効かということだけです。
彼を見習って、最高のアイデアを探す習慣をつけましょう。そして見つかれば、それを迷わず取り入れましょう。
なぜ多くの人がそうしないのでしょうか?
そうするためには、自分のエゴを封印する必要があるからです。
良い投資を。
アレックス
関連