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儲けて・・・そのお金をどうするの?

先月15人の友人と一緒に、フィレンツェからローマまでのトスカーナの田舎町を、古代の巡礼路であるヴィア・フランチジェーナに沿って町から町へとハイキングしてきました。

晴天に恵まれ、美しい景色を眺め、素晴らしい料理とワインを堪能し、興味深い会話にも事欠きませんでした。

途中、ハイカー仲間が、「資産配分やポートフォリオの分散、銘柄の選択、コスト削減、税金の最小化などについていろいろな本を読んだけれど、最も重要なことは誰も書かないね。つまり、儲けた後、お金をどうするのかについて」と言いました。

これは魅力的な質問ですが、その対象者はかなり少ないでしょう。

何千万人もの米国人が生活費のやりくりに苦労しています。仮にやりくりできていても、給料日までその日暮らしの生活をしている人もいます。あるいはそれがクリアできても、重要な経済的目標の達成までには程遠い人もいます。

しかし長期に渡って、賢く自分を律してきた人たちもいて、彼らはその恩恵を受ける態勢も整っています。

このような人たちは身の丈にあった生活をし、定期的に貯金をし、賢く投資をし、何年も、あるいは何十年も複利でお金を増やしてきました。

その結果、彼らは経済的自立を達成したのです。しかしこれには新たな課題が待ち受けています。

どれだけのお金を使って、どれだけのお金を寄付するのか。そして複利運用を続けるために、どれだけのお金を残すのか。

どんな場合にも通用するような答えはありません。

読者の皆さんにも、この問いに対する自分なりの答えを出していただきたいと思います。経済的自立を実現した後、次にどうすれば良いのでしょうか。

ここでは私自身の考えや経験をお伝えしたいと思います。

 

まず、「仕事」と「老後」について考えてみましょう(選ぶことができるほど豊かになったら。)

私が若い頃、退屈な仕事やストレスの多い仕事を続けていたとき、働かなくてもいいことを空想していました。

朝起きて好きなことをしたり、あるいは何もしなくてもいいだなんてなんて素晴らしいのだろうと思っていました。

今、私はかなり年を取り、何十年も前に退職できたはずですが、これはハーバード大学の心理学者ダニエル・ギルバートが言うところの「ミスウォンテイング(欲求ミス)」の典型的な例だと気付きました。

もし私がカリブ海のリゾート地に1週間行ったとしたら、初日は砂浜に裸足で歩きフローズンマルガリータ片手に過ごすでしょう。

でも次の日の朝になると不安になってきます。周りを見渡して「さて、これから何をしよう」と考えるでしょう。

そう、すぐに飽きてしまうのです。やりがいのある仕事がなければ、きっと周りの人に迷惑をかけてしまうでしょうね。

働くか引退するかはさておき、貯まった(変動する)お金をどうやって使い切るか。

それを決めるのは、ある人にとっては簡単なことです。

欲しいものがはっきりしていて、それを楽しむために忙しい人もいるのです。

一方で、何年も働いて倹約してきたのに、財産を使うのに苦労している成功者をたくさん知っています。

彼らは元本に手を付けず、キャピタルゲインや配当、利子を再投資することで成功しました。

しかしいざその財産を使い切るとなると、本当に苦労しています。

人によっては、それが間違ったことだとさえ感じています。

また、いくら財産を持っていてもお金がなくなるのが怖くて、なかなか使えない人もいます。

(これは「長生きリスク」と呼ばれるもので、人々がかつてないほど長生きしている今、退職後も優良株を保有すべき理由となっています。)

また、単純であるのが良いという人もいて、私はこのグループに入る傾向があります。

ヨットにもヴィンテージスポーツカーの収集にも興味はありません。一番の贅沢は本と音楽で、この2つは生涯かけて集めてきたものです。

美術品も少しは集めています。でもそれは自分が好きなものだけで、投資目的ではありません。

専門家の中には、物ではなく経験にお金を使うことを勧める人もいます。そのほうがより長く楽しめると主張するからです。

確かにそうかもしれません。メンテナンスや修理、保険、保管が必要なものを増やすよりも、思い出を作る方がいいに決まっています。

もちろん最終的には、自分がどのくらいのレベルの生活をしたいのか、どのくらいの費用をかけたいのか、そして何に使うのかを決めるのは自分自身です(読者の皆さんのご意見をお待ちしています。)

誰にどれだけ寄付するかというのは、個人的な問題です。

誰にでも好きな人や組織があるでしょう。

多くの人は自分の子供や孫に大きな財産を残したいと思うのが自然です。とはいえ、特に子供が若いうちは、あまり多くのものを残すのは間違いだと思います。

みんなが迷惑するようなモンスターを作りたくはありませんからね

バークシャー・ハサウェイ社の会長(チェアパーソン)であるウォーレン・バフェットは、「子供たちが好きなことをできるだけの資産は残すべきだが、何もしなくても良いほどの資産は残すべきではない」と言っていて、私はこれに賛成です。

 

もちろん、私たちが死ぬときだけでなく、今すぐにでもお金を使う価値のある人や組織はあります。

トスカーナの旅に参加していた退職した友人のグレンは、彼が自分の慈善心を満足させるために見つけた、思いがけない方法について話してくれました。

毎朝、ウォール・ストリート・ジャーナル紙を持って地元のコーヒーショップを訪れるのが彼の習慣だったのですが、そこで彼は「皿洗いのアルバイト募集」と書かれた紙が貼ってあるのを見つけました。

数週間経っても誰も応募してこないので、グレンが問い合わせたところ、「会社の歴史の中で最も資格過剰の応募者だ」と笑われてしまったようです。

しかし彼は時間があること、忙しいことが好きなこと、そしてそこで働く若くてエネルギッシュなスタッフが好きなことから、この仕事を引き受けました。

しかしパンデミックの最中、彼の同僚の何人かは家計に大きな打撃を受けました。

グレンは彼らに融資ではなく、プレゼントとして支援することにしました。

そこで彼はすべての寄付は匿名にしておくように雇用主にお願いしました(当然受け取った人はそれが同僚からの寄付であることは知りません。)

グレンの話に感動した私は、彼の動機を尋ねました。

彼が言うには、「難しいことではないよ。自分は必要以上に持っていて、そして彼らには不足している。寄付することで自分の気分が良くなるからね」。

ヘンリー・デイヴィッド・ソローは、真の豊かさとは「所有することではなく、楽しむこと」だと言いました。

グレンの充実した表情を見れば、これが彼にとって最高の満足に値することだったのは一目瞭然でした。

良い投資を。

アレックス

Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

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