投資情報

人々はストーリーが大好きです。

情報を与えてくれるし、私たちを楽しませてもくれるからです。

私たちは子供たちに物語を読み聞かせます。大人になっても小説を読みふけり、演劇を見に行き、映画やテレビドラマを見たりするでしょう。

地球の自然史や国の成り立ち、さらには人間としての自分を知るために、私たちは主にストーリーを通して学んでいるのです。

しかし投資家にとっては、冷静な数字ではなく、ストーリーに頼ることは致命的なミスになりかねません。

その例を見てみましょう。

ある友人が最近、数年の強気市場にもかかわらず、自分のポートフォリオが壊滅的な打撃を受けたのだと打ち明けました。

何があったのかと尋ねると、

「まず大麻株で打撃を受けて、次にミーム株で大打撃を受けた。そして今は暗号資産でやられている」と彼は答えたのです。

彼は全く異なる3つの分野でこれほどの損失を出したことに、驚きを隠せない様子でした。

話題になっているものに飛びついたり、もっと言えば、数字に頼るのではなくストーリーを信じて購入を繰り返すことが、資産を失う原因であると気付かなかったのです。

大麻株で考えてみると…

医療用や娯楽目的で米国大麻合法化が進み、数十億ドル規模の市場が急成長すると見て、何百万人もの投資家が品質や収益性の根拠を示すことなく飛びつきました。

しかし大麻は皆さんもご存知の通り雑草です。

栽培が容易で、米国では一部の地域で違法であることを除けば、業界には参入障壁がほとんどありません。そのためマーケットシェアや利益率を守るのが難しいのです。

またブランドの問題もあります。

蒸留酒を買う人が酒屋に行けば、バーボンを頼むのではなく、ジムビームやジャックダニエル、ワイルドターキーといったウイスキー銘柄を購入します。

ウォッカであれば、アブソルートやティトーズ、グレイグースなどが挙げられます。消費者にとって、これらのブランド名は品質と一貫性を表しているのです。

一方、薬局に来る人の場合はどうでしょうか。

彼らは一般的にブランドを指定することはありません。むしろ「これはリラックスした高揚感があり、こっちは活発な高揚感があります。そして、これは眠りにつくのに役立ちます」といったアドバイスを受けるのです。

確かにトゥルーリーブ、キュラリーフ、シューテラ・ウェルネスなどの大麻ブランドは存在します。しかしこれらのブランドは消費者に広く認知されているわけではなく、またその優れた品質は競合他社に複製される可能性があります。

これは投資家にとって深刻な障害です。

代表的な大麻関連の上場ファンドは、この7か月で価値の半分から3分の2を失いました。

そして多くの個別銘柄の価格破壊はかなりひどいものでした。

これは売上成長率、業績、利益率、市場シェアなどの実績ある指標ではなく、ストーリーを買うことのリスクです。

今年話題になったミーム株は、健全なファンダメンタルズではなくストーリーを買ってしまったことを示す、より顕著な例と言えるでしょう。

何百万人もの新規参入者や経験豊富なトレーダーが、ゲームストップ (NYSE: GME)やAMCエンターテインメント・ホールディングス (NYSE: AMC)、ブラックベリー (NYSE: BB)などの苦境に立たされている企業を、1月に入ってから高値圏で買いあさったのです。

その理由はなんでしょう?

空売りで儲けようとするヘッジファンドをソーシャルメディアユーザーである若者世代が苦しめている。株価を釣り上げる投機的な動きを集団で行なっているからだ。それによって株価が高騰している。あなたも永遠に持ち続け、決して売らないようにしよう!

初期のトレーダーは、大胆でかなり洗練された賭けをしました。そして後発のトレーダーは、市場史上最も愚かな賭けをしたのです。

その後の数週間で市場は50以上の史上最高値を記録しましたが、これらの銘柄は終値での高値から約40%から60%の価値を失いました。

これらの銘柄のバリュエーションがまだ不合理であることを考えると、さらなる痛みと苦しみが待ち受けているでしょう。

暗号資産については、何か月も前からこの熱狂的な動きについて警告してきました。

その理由はなんでしょう?

暗号資産は、最終的には不換紙幣や時代遅れの銀行システムに取って代わるでしょう。より多くの国(エルサルバドルなど)が暗号資産を法定通貨として採用し、より多くの企業(マイクロソフトなど)が暗号資産を支払いに利用し、そしてより多くの投資家が暗号資産を資産配分の一部とすれば、将来の上昇は事実上保証されたようなものなのです。

ビットコインは4月の高値から4分の1の価値を失いましたが、その下落はこれまでのところかなり秩序だったものであったと言えます。

ですがある時点で、暗号資産投資家はまるで長い落とし穴に落ちたような、劇的な下落を経験するでしょう。

コロラド州スプリングスで開催されたOxford クラブのプライベート・ウェルス・セミナーで、私は、暗号資産のメルトダウンは、インターネット株の代表的な指数が2000年3月の高値から2002年10月の安値まで77%も急落したドットコム不況を超えるだろうと予想しました。

もちろんアマゾン (Nasdaq: AMZN) やイーベイ (Nasdaq: EBAY) のように、いくつかのインターネット銘柄は何とか生き残り、繁栄しました。

しかしシスコシステムズ (Nasdaq: CSCO) やマイクロストラテジー (Nasdaq: MSTR) のように、20年前のピークを大きく下回る銘柄もあれば、イートイズやペットコムのように、もはや存在しない企業もあります。

暗号資産は正真正銘のイノベーションであり、まだ未定のいくつかの勝者が私たちの金融の未来に一役買うことになるのは明白です。

しかし現在の市場価格を正当化することはできません。

ジョン・ポールソン氏は、金融危機の際に住宅ローンの破綻で200億ドルの大金を手にした投資家ですが、暗号資産を「価値のない」バブルと呼んでいます。

ポールソン氏は私よりも弱気で、暗号資産を「何もない限られた供給」であり、「ゼロになる」と述べています。

バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット会長(チェアパーソン)は、おそらく現代で最も偉大な金融の天才ですが、彼も遠回しな言い方をしません。

彼はビットコインを「殺鼠剤を2つ掛け合わせたような毒」と呼んでいます。

多くの暗号資産投資家はこのことを知っていますが、全く気にしていないようです。彼らが気にするのは数字ではなくストーリーなのです。

しかしこのストーリーの結末は、悲劇的なものになるでしょう。

良い投資を。

アレックス

Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

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