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「金(きん)」は買うべきか?

以前にラスベガスのフリーダムフェストで講演を行う予定があった際、旅行中のトラブルが原因で、その講演をキャンセルしたことがあります。

その時のテーマは「長期投資に優れているのは金か株か?」というものでした。

このメールマガジンを長くご愛読いただいている方は、すでにその答えをご存じだと思います。

普通株で構成された分散型ポートフォリオが生み出す長期的なリターンに匹敵するものはありません(稀に見る優良株であればなおさらです)。

しかしフリーダムフェストには多くの貴金属信仰者が集まります。参加者はしばしば私に、50%、75%、あるいは全ポートフォリオを金にしていると主張するのです。

ですが、それはただの馬鹿げたアイデアです。

勘違いしないでください。私も金地金(インゴット)コインのコレクションを保有しています(時には金貨を取り出して眺めることもあります)。

また、Oxford クラブでは、いつでも売却できる流動性の高いポートフォリオ全体の5%を優良な金鉱株に投資することを推奨しています。

(生産性のない金地金とは異なり、金鉱企業はコストを下げ、生産量を増やし、効率を向上させることで収益を上げることができるのです)。

しかし、中には金そのものが究極のインフレヘッジであると主張する人もいます。

確かに金はリスク回避策になりますが、決して最良のものとは言えないでしょう。

このことを証明するために、金投資家が大好きなチャートと、彼らにとって想定外のチャートをご紹介します。

まずは、彼らが大好きなチャートから始めましょう。

紙幣vs金

これはウォートン・スクールのジェレミー・J・シーゲル博士が作成し、私の研究チームが直近数年分を追加したもので、1802年から2018年までのインフレ調整後の金とドルの価値を示しています。この期間には、景気拡大、景気後退、不況、金融パニック、戦争などが含まれます。

チャートからも分かるように、インフレの影響で銀行の貸金庫に預けられている紙幣1ドルの実質的な購買力は、わずか0.046ドルにまで低下しています。

これは非常に悲しいことであり、手元の紙幣を投資に回したいという動機にもなります。

一方、2018年末のインフレ調整後の金1ドルの価値は3.21ドルでした。

金がインフレの影響を受けても十分に持ちこたえているどころか、3倍以上の価値があるのです。

もし私が今後20年、30年の間、紙幣を持つか、金地金を持つかの選択を迫られたら、迷わず金を選ぶでしょう。

しかし現在では紙幣と金だけでなく、もっと多くの選択肢があります。例えば、割引短期国債や債券、あるいは分散した株式ポートフォリオに資金を投入することも可能です。

ここで金投資家が嫌いなグラフを見てみましょう。

実際のトータルリターン指数

これもシーゲル博士が厳密にまとめたデータをもとに、私の調査チームが追加したものです。

下の2本の線(ドルと金)は、最初のグラフと同じです。

しかしこのグラフは、投資家が割引短期国債を保有し償還期限が来たらそれを繰り越したり、債券を保有し利払いを再投資したり、株式を分散して保有しその配当を再投資したりした場合にどうなっていたかも示しています。

ご覧の通り、1802年に割引短期国債に1ドルを投資し継続的に繰り越しした場合、インフレ調整後の金額で267.73ドルになりました。これは、この期間の金のリターンをはるかに上回るものです。

債券に1ドルを投資し利払いを再投資すると、インフレ調整後で1,393.40ドルとなります。

また配当再投資型の普通株に投資した1ドルは、なんとインフレ調整後で139万ドル以上になりました。

金は究極のインフレヘッジでしょうか?そうとは言えませんね。

確かに、金の価格は近年大きく上昇しました。実際2020年8月には、過去最高の1オンス2089.20ドルを記録しましたが、それでも過去40年間、金はインフレに追いついていません。

思い出せば、1980年に金は1オンス850ドルだったのです。

ちなみに、株式については数百年以上前のデータはありませんが、金については何千年も前の記録があります。

そして、いつも「金には価値があって、紙幣はそうではない」と言われ続けています。

だからこそ長い間、金がお金だったのです。

しかし金は昔から、その価値を「維持する」以上のことはしていません。

だからこそ、金投資家たちが「金は上昇の時期に来ている」と言うと、私は「そうだね、何千年もかかるけどね」と言うのです。

上記のようなチャートを見れば、人々の考えは変わると思うでしょう。

しかし私の経験では、熱狂的な金投資家に株の優位性を語ることは、熱烈な社会主義者に資本主義の優位性を語るようなものなのです。

どうぞお好きなだけ議論してください。だからといって、多くの人が考えを改めるとは期待しませんが、、、

良い投資を。

アレックス

Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

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