1988年、チャールズ・J・ギブンズは『Wealth Without Risk: How to Develop a Personal Fortune Without Going Out on a Limb(仮邦題:リスクなき富:危険を冒さずに個人の財産を築く方法)』というベストセラー本を出版しました。
相続に関する内容だと推測します。なぜならリスクを取らずに裕福になる方法は他にないので。
(3億分の1の確率という世界最悪の賭けであるメガ・ミリオンズの宝くじでさえ、2ドルのリスクを取る必要があるのですから)。
投資を成功させるには、リスクを賢く管理することです。リスクを避けたり、排除したりすることはできません。それを受け止めて、対処するしかないのです。
全ての投資の選択にはリスクが伴います。
全ての資金を短期国債や定期預金といった現金投資で保有していても、インフレに伴って現金の持つ購買力が低下するという大きなリスクを負うことになります。
しかし何百万人もの投資家が、一時的にでも自分の投資価値が下がることを恐れて、まさにこのような選択をしているのです。
一見すると、それは理解できます。
景気の悪いニュースや政府の新しい統計に反応して株価が下がり、資産が減るのは嫌ですからね。
しかし長期的に見れば、極端な安全性には大きな代償が伴います。
超保守的なアプローチをとる投資家は、高い確率でショートフォールリスク、つまり投資において目標とする資産額、あるいは投資リターンに達しないリスクにさらされます。
多くの潜在的な投資家は、市場を巨大なカジノと見なしています。しかし長期的に見れば、それは事実とは全く異なります。歴史的に見ても、米国の株式市場で儲かる確率は、1日で50%、1年で68%、10年で88%、20年で100%なのです。1日単位の短期売買では損する可能性は50%なのですが、長期で保有すればするほど損する可能性は下がり、20年間保有することで0%になるということです。
忘れないでいただきたいのは、株式とは企業名が書かれた単なる紙切れではなく、企業の端数の持分だということです。あなたは企業の一部を所有するということです。
そして長期的に見て、株式には一つの決定的な特徴があります。それは、株価は業績に連動するということです。
歴史を振り返ってみても、四半期ごとに、そして毎年のように業績を伸ばした企業で、株価がついてこなかった企業は一つもありません。逆に、業績が年々悪化しているのに株価が上がり続けている企業を探してみてください。そんなことはありえないのです。
だからこそ、ウォーレン・バフェットの師匠、ベンジャミン・グレアムは株式市場について、「短期的には人気投票の場にすぎないが、長期的には価値測定器である」と言ったのです。
そしてその価値を計るものが業績です。
翌週、翌月の市場がどのような動きになろうと、長期的には企業の利益を反映したものになると考えられます。
数か月、数年ではなく、数十年という単位で評価するとき、普通株ほど投資家に報いるものはありません。
史上最大の富の創造者は、普通株なのです。
ペンシルバニア大学ウォートン校の教授であり、『株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド』の著者であるジェレミー・シーゲルは、過去数百年間のさまざまな資産のリターンについて徹底した歴史的考察を行いました。
彼の発見(Oxford クラブのリサーチ・チームによって2019年まで延長されました)は驚くべきことで、1802年に金に投資した1ドルは、2019年末には75ドルになっています。同じ金額を短期国債に投資すると4,430ドルになりました。また1ドルを債券に投資して利子を再投資すると3万4,198ドルの価値になり、そして1ドルを普通株に投資して配当を再投資すると、なんと2,970万ドルの価値になっていたのです。
もちろん、数百年前にあなたは存在していません。
そして冷凍技術の分野でよほどのことが起こらない限り、200年後にあなたはいないでしょう。
しかしそこまで長期的に考える必要はありません。
過去2世紀の中から好きな開始日を選んで、数十年単位で見ると、さまざまな資産クラスの投資リターンが驚くほど一貫していることがわかります。
その中でも特に勝ち組なのは株式です。1926年以降、株式市場は95年のうち70年でプラスのリターンを上げています。
今年も市場にとっては良い年になりそうですが、一部の人たちはこれをバブルと呼んでいます。確かにS&P500種株価指数の株価が、ドットコム時代以来の水準である実績PER 31倍*で取引されていることを考えると、バブルのように見えるかもしれません。
*(2021.8.9現在)
しかしそこには大きな違いがあります。それは、過去1年間の業績は、パンデミックの影響で大きく落ち込んでいるということです。
(編集部注:PERは株価が1株あたりの利益に対して何倍かを示す指標なので、アレックスは、株価が高すぎるのではなく、分母となる利益が低くなっているためPERが高くなっているということを言っています)。
第2四半期(4 – 6月期)の業績は、素晴らしいとしか言いようがありません。アナリストの予想では、企業業績は78%増でしたが、平均業績は1年前に比べて93%も増加しているのです。
この新たな基準で計算した今後12ヶ月間の予想利益を元にすると、PERは21倍となります。これは過去30年間の平均値とほぼ同じです。それに加えて、同期間で金利がこれほど低かったことはほとんどありません。そのため、消費者、企業、政府の借り入れコストが安くなります。そしてそれは同時に、債券に投資してもあまりいいリターンが望めないということでもあります。
(編集部注:PERを計算するための分母となる利益を最新の予測に合わせると、過去30年間の平均PERとほぼ同じとなるため、買われすぎ=バブル、の水準ではないということ。さらに金利が低く企業の借入による資金調達が容易な状況であるため、企業活動が活発化し、今後ますます利益が見込めるということ。そして、債券市場への投資資金が株式に投資される可能性があるということ。以上のことから、現在は株式投資家にとって良い状況であるということです)
株価が突然下がる可能性がないわけではありません。
その可能性は常にあるので、株式以外にも分散し、個別株のポジションにトレーリングストップを設定して、事前にリスクに備えて準備しておく必要があります。
しかし分散された株式ポートフォリオは、200年以上にわたって最良の投資選択であり続けています。そしてそれは当面の間、変わらないでしょう。
良い投資を。
アレックス
関連