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ジム・ロジャーズとの会議にて。

以前ラスベガスで開催されたフリーダムフェスト(自由な精神と自由な市場を目指す自由主義者の投資会議)にて、「私は何を見逃しているのか?すべての強気相場と弱気相場への究極の質問」と題したパネルディスカッションに参加しました。
 
これは経験豊富な投資家数人が集まって、自分たちが犯した最大の投資の失敗について議論し、学んだことを共有することで、参加者が同じ轍を踏まないようにしようという趣旨のものでした。
 
パネリストとして参加したのは、ベテラントレーダーのキース・フィッツジェラルド(マネー・マップ・プレスのチーフ・インベストメント・ストラテジスト)、国際投機家のダグ・ケイシー(ケイシー・リサーチの会長)、投資家および金融評論家のジム・ロジャーズ(1973年に億万長者のジョージ・ソロスと共同でクォンタム・ファンドを設立)といった面々です。
 
私たち4人のように、数十年にわたって世界の金融市場に投資してきた人には、戦争の話や忘れたい投資の話がたくさんあります。
 
しかし忘れてしまうのは間違いです。
 
なぜなら最悪の決断を覚えておくことで、二度と同じことを繰り返さないようにすることができるからです。
 
私たちは順番に、道を踏み外したさまざまな戦略とその理由を説明しましたが、その中でも私が特に感動したのは、ジム・ロジャーズの話でした。
 
このディスカッションの日までの一連のメールの中で、彼は正反対の態度で語っていました。
 
「私の失敗に対するアプローチは、とにかく失敗をしないことです!」
 
その言葉を聞いて、ウィル・ロジャーズの有名な「市場でお金を稼ぐ方法」の話を思い出しました。
 
「貯金を全部はたいて、いい株を買い、上がるまで持って、それから売ろう」。
「もし上がらなかったら?」と誰かが尋ねると、それに対する彼の答えは「その株を買うな」でした。
 
しかし、パネルディスカッションでのジムの告白は、本当に正直で、私が投資家に警告している通りのほぼ完璧な例だったのです。
 
元ヘッジファンド・マネージャーであるジム・ロジャーズは、ハイリスクを良く知っている人物です。
 
(1992年にクォンタム・ファンドが英ポンドの急激な切り下げの直前に空売りして、1日で10億ドルを稼いだことは有名な話です)。
 
約20年前のインターネットバブルの時、彼はゼロになると確信していた5社を空売りしました。
 
そしてその会社は彼の予想通り倒産しましたが、その前に彼はすべてを失ってしまったのです。
 
経済学者ジョン・メイナード・ケインズの言葉を借りれば、「あなたの支払能力より、市場の不合理性のほうが永続きする」ということです。
 
淡々とした口調でしたが、ジムはこの損失を何年も引きずっているようでした。
 
破綻したことを忘れる人はいませんし、また彼らはその理由も忘れません。
 
ここでの教訓は、「株の空売りは本質的にリスクが高い」ということです。株の上昇には限界がないので、潜在的なダウンサイドにも限界がないのです。
 
またレバレッジをかけている場合は、その痛手はあっという間に大きくなります。
 
しかし例えば買いのストップを用いて自分を律している場合などは、空売りは必ずしも悪い戦略とは言えません。
 
ジムの本当の間違いは、投資家にとって最も重要である「もし自分が間違っていたら」という自問をしなかったことだと私は思いました。
 
私は33年間、リサーチアナリスト、投資マネージャー、ファイナンシャルライターとして多くの投資家の悲惨な話を聞いてきました。その根源には、必ずこの重要な質問をしなかったことがあります。
 
委託証拠金を担架として差し入れた取引の買いを行う投資家は、深刻な市場低迷の結果を予測することができません(強気の市場で何十、何百ものプットを嬉々として売っている人も同様です)。
 
完全に現金で運用している投資家は、この先大幅な上昇を逃した後、最終的に投資して次の調整局面で苦しむか、それとも傍観して潜在的な上昇局面の可能性をさらに逃してしまうのか、といった厳しい決断を迫られることもあり得ます(そしてその先にある同じ質問は、さらに厳しいものかもしれません)。
 
すべての資金を守りの資産と言われる金につぎ込んでいるハードマネーの人々は、平和で繁栄という、彼らにとっては考えにも及ばない可能性に対するヘッジを怠っています。
 
また過小評価された、あるいは過大評価された一握りの株式にすべてを賭ける人は、短期的な市場の動きがまったく予測できないことをよく経験します。
 
いずれの場合も、「もし間違っていたら?」と考えることで、大惨事や超低収益を回避することができるのです。
 
ですので、あなた自身のためにも、自分のポートフォリオをよく見直してみましょう。
 
超保守的ではないか、レバレッジが高いのではないか、分散していないのではないか、あるいは極度に集中しているのではないか、などに注意してください。
 
自分が間違っていた場合のことを想像してみて、今すぐ必要な調整を行ってください。
 
良い投資を。
 
アレックス

Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

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