投資情報

コモディティ、私が投資しない理由

長期投資において、そのリターンの90%を決めるのは資産配分(アセット・アロケーション)です。ですから、どの分野に投資するのかの投資判断は、最も重要です。

アセットアロケーションとは大型株、小型株、外国株、国内株、ハイグレード債、ハイイールド債、インフレ調整後の国債など、相関性の低いアセット(資産)クラスにポートフォリオをどうやって分配するかを意味します。

相関性が低いということは、これらの投資がすべて同時に同じ方向に動くわけではないということです。つまり、あるものが上昇すれば、他のものは逆の動きを(下落)したり、さほど上昇しなかったりと、違った値動きをすることを意味します。

読者の皆さまからいただく質問の中には、インデックス運用の新しい商品が続々と登場し、コモディティの流動性と投資性が年々高まっているにもかかわらず、なぜコモディティを推奨アセットクラスに含めないのか、というものもあります

(編集部注: コモディティ(Commodity)とは、一般に、「商品」のことを指す言葉で、コモディティ投資とは、商品先物市場で取引されているエネルギー(ガソリン、原油、灯油、天然ガスなど)、貴金属(金、プラチナ、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、など)、農産物(トウモロコシ、大豆、小麦、米、肉、砂糖、ゴム、など)といったコモディティ(商品)に投資することをいいます。)

その答えは、コモディティには付加価値が付かないからです。

特に原油や天然ガス、小麦、大豆、コーヒーなどは定期的に大幅な上昇を見せるので多くの人は驚かれるかもしれませんが、長期的に見れば付加価値は付かず、それが問題なのです。

株式や債券とは異なり、コモディティには利息や利益、配当が発生しません。

儲けを生み出すためには、一般的に需要と供給のバランスが崩れていることが必要です。例えば、2019年は米国中西部の洪水の影響で作付けが遅れ、トウモロコシが5年ぶりの高値を記録しました。しかし残念ながらこのような天候を事前に予測することは難しく、むしろ不可能でしょう。

助言者の中には、インフレ・ヘッジとしてコモディティを勧める人もいます。確かに、食品やエネルギー価格の上昇は、時としてインフレが起こる主な要因となります。でも長期的に見れば、最もリターンの高いアセットクラスである株式の方がはるかに優れているのです。

また価格の上下変動が気になる場合は、物価連動米国債(TIPS)を購入することで、政府が保証するインフレ率を辛うじて上回るリターンを得ることができます。

コモディティ投資家にとってのもう一つのハードルは、高いコストです。

ほとんどのコモディティ投資信託や上場投資信託(ETF)は、大豆や天然ガス、金属などを実際には保有していません。

その代わりに、将来の決まった時期にそれらのコモディティを購入する権利を手にする契約を所有しているのです。契約が満期になると、それを後の月に「乗り換え(ロールオーバー)」します。

しかしこれにはコストがかかり、コモディティに投資するファンドの費用は、株式や債券ETFの15〜20倍になることも多々あります。

ですがコモディティを敬遠する本当の理由は、その価格変動の大きさにもかかわらず、高いリターンが得られないことでしょう。

1980年、経済学者のジュリアン・サイモン博士は、『人口が爆弾する!』の著者である内向的な未来主義者ポール・エーリック博士と有名な賭けをしました。エーリックは著書の中で、世界の人口増加によって資源は希薄化し、やがて世界経済の破滅を引き起こすと警告しました。

外交的なサイモンはそれに対して半信半疑だったので、自分が選んだ5種類の原材料の価格が10年後には下がっている方に1,000ドルを賭けました。エーリックはそれを承諾し、大幅な価格上昇が予想される方にクロム、銅、スズ、ニッケル、タングステンの5種類の金属を選びました。

1980年から1990年にかけて、世界の人口は史上最大の8億人の増加となりました。しかしエーリックが選んだ5種類の金属の価格はいずれも値下がりし、スズに至ってはそれが50%以上減だったのです。

テクノロジーや代替品のおかげで、コモディティ価格は高値から下落する傾向にあり、実際、長期にわたってインフレを追う動きは見せていません。

実際、エネルギー製品、工業用金属、農産物、畜産物、貴金属など24種類の商品先物で構成されるゴールドマン・サックス商品指数(GSCI)は、20年前に比べてほとんど上昇していません。

もちろん、ほとんどの投資家は株式市場を通じて間接的にコモディティ市場に接しています。

もし平凡なS&P500種指数インデックスファンドを保有している場合、その資金の14%が基礎素材やエネルギー関連企業に投資されています。

しかし金鉱企業や石油・ガス開発企業などのコモディティ・ベースの企業は、生産量の増加やコスト削減、あるいはその両方によって利益を上げることができるという違いがあるのです。

つまり金を除くコモディティは、長期保有を前提としたバイ・アンド・ホールドのアセットクラスではありません。

また、商品先物や先物オプション取引の勉強代は高くつきます。

要するに、ほとんどの投資家はコモディティ投資を見送ることができるし、見送るべきだというのが私の考えです。

良い投資を。

アレックス

Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

関連する記事

Back to top button