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金融リテラシー | タイム・プライス


投資家が見落としがちな「悲観の落とし穴」


多くの投資家は、将来についてあまりにも悲観的になりすぎているため、本来得られるはずのリターンよりも低い成果しか上げられていません。

そこで私は以前、政府の政策によって住宅や自動車、食料品、公共料金といったものが、ますます手の届きにくい存在になっていることを詳しく説明しました。

一方で民間セクターは状況を改善し、しかもそれらをより手頃なものにしています。

一見すると矛盾しているように聞こえますが、実際には矛盾ではありません。

物価が「高くなる」と同時に、「より手に入りやすくなる」ことはあり得るのです。


タイム・プライスという本当の「豊かさ」の物差し


手頃さを測るためには、モノやサービスの価格を、時間当たりの報酬(賃金と福利厚生)と比較する必要があります。

このときに得られる比率を「タイム・プライス(時間価格)」と呼びます。

タイム・プライスとは、平均的な労働者があるものを購入するために働かなければならない時間の長さを指します。

通常の価格はドルやセントで表されますが、タイム・プライスは時間や分で表されます。

つまり、ドル建てでは価格が上がっていても、必要な労働時間という意味では安くなっている、ということが起こり得るのです。

では、どちらがより意味のある指標でしょうか?

私たちの日常生活において、時間こそが最も限られ、再生不可能な資源です。

だからこそ、タイム・プライスは重要なのです。

そして、この指標は驚くべき事実を明らかにします。

ほとんどのものは、時間の経過とともに劇的に手頃になってきたのです。

ここが重要なポイントです。

CPI(消費者物価指数)は、あるものが高くなったかどうかを教えてくれます。

しかし、タイム・プライスは、それがどれだけ手に入りやすくなったかを教えてくれるのです。

タイム・プライスが、私たちの豊かさが時間とともに増えたのか減ったのかを測る優れた指標である理由は、次の3つです。

▼優れた指標であるタイム・プライス

  • その時点ごとの実際の価格と賃金を使うため、インフレを過小評価も過大評価もしない
  • 通貨の変動に左右されない(ユーロでも円でも、どの通貨でも測定できる)
  • 人々の生活水準の変化を標準化して測ることができる

データが示す驚くべき事実


マリアン・L・トゥピーとゲイル・L・プーリーは、著書『スーパ―アバンダンス』の中で、1980年から2020年までの40年間にわたり、50種類の商品(コモディティ)のコストを測定しました。

彼らが発見したのは一部の商品だけのタイム・プライスが下がった、ということではありません。

50品目すべてのタイム・プライスが下がっていたのです。

実際、原油、天然ガス、小麦、綿花、大豆、牛肉、トウモロコシ、豚肉、砂糖などを含む50商品の平均的なタイム・プライスの下落率は、実に75.2%にも達しました。

言い換えれば、ブルーカラー労働者は同じ量の商品を手に入れるために、75%も少ない労働時間で済むようになったということです。

もっとも、私たちはガソリンスタンドやスーパーマーケットにいるときを除けば、通常はコモディティそのものを買うわけではありません。

私たちが購入するのは完成品です。

しかし、完成品におけるタイム・プライスの下落も、同じくらい劇的でした。

多くの場合、さらに顕著です。

同じ40年間で、食器セットは51%、食洗機は62%、洗濯機は65%、男性用衣料は72%、自転車は74%、掃除機は83%、フードプロセッサーは86%、それぞれタイム・プライスが低下しました。

これは都合の良い例だけを選んだ結果ではありません。全面的な傾向なのです。

しかも、これはブルーカラー労働者の場合にすぎません。

ホワイトカラー労働者、特に大学卒業者は、所得水準が高く、しかもその伸びが速かったため、タイム・プライスはさらに大きく低下しました。

ノートパソコンやスマートフォン、薄型テレビのような製品については、1980年当時には存在すら想像されていなかったため、40年間のタイム・プライスの低下を測定することは不可能です。

他にも、測定が難しい価格低下は数多くあります。

例えば、1980年の平均的な書籍の価格と、現在グーグルのデジタル図書館から無料でダウンロードできる1,000万冊以上の本を、どうやって比較すればよいのでしょうか。

今日では、長距離電話の料金を気にする人はいません。しかし、私が育った頃は違いました。

大学時代、サウスカロライナの学校からバージニアの実家に電話をかけるには、AT&Tが夜間割引を提供する時間帯しか、私には手が出なかったのです。

今では、海外にいる友人とも、FaceTimeで無料通話をするのが当たり前です。

この50年間で、音楽の楽しみ方は、レコードから8トラック、カセット、CD、MP3、そしてストリーミングへと進化しました。

現在では、ほぼどんな曲でも、どこででも、いつでも、ほとんど無料同然で聴くことができます。

無料ではない商品でも、労働時間で測れば、はるかに手頃になったものは数多くあります。

1971年、ソフトコンタクトレンズ一組は65ドルで、眼科医によるフィッティングは約550ドル、合計615ドルでした。

当時、非熟練労働者の時給は約2ドルでした。

現在では、眼科検診は約120ドル、レンズは200ドル程度からあり、合計320ドルです。

非熟練労働者の時給は約16.51ドルです。

つまり、タイム・プライスは84%も低下したのです。

1970年、ニューヨークからロンドンへの往復航空券は550ドルでした。

当時、ブルーカラー労働者の時給は3.93ドルでした。(私の家族では、そんな贅沢ができる人たちは「ジェットセット」と見なされていました。)

現在、同じフライトは約467ドルで、ブルーカラー労働者の時給は約36.15ドルです。

タイム・プライスは91%も低下しました。

1972年には、マイアミ発カリブ海7日間クルーズが240ドルで予約できました。

当時のブルーカラー労働者の時給は約4.59ドルでした。

現在では、ポート・カナベラル発の7日間クルーズが549ドルで予約できます。

時給36.15ドルのブルーカラー労働者にとっては、価格は70%以上下がった計算になります。

アップルは1984年に、2,495ドルでマッキントッシュを発売しました。

当時、非熟練労働者の時給は約5ドルでした。

現在、新しいiMacは1,299ドルで販売されており、非熟練労働者の時給は約16.51ドルです。

タイム・プライスは84.2%低下しました。

しかも、2025年のMacと1984年のMacを比べることは、ランボルギーニとスケートボードを比べるようなものです。

これこそが、タイム・プライスによる「豊かさ」なのです。

すべての分野でタイム・プライスが下がったわけではありません。


【まとめ】例外分野と、それでも広がるチャンス


医療、大学の学費、保育費といった分野は、規制が多く、補助金も多く、労働集約的であるため、インフレを上回って上昇してきました。

これらの市場は、原型を一度作れば、複製コストがどんどん下がっていく「知識の経済」の恩恵を受けにくいのです。

それでも、こうした分野でも新たな選択肢が生まれています。

  • オンライン教育は、従来の学位取得よりも大幅に安く、柔軟性が高い
  • 医療分野でのAI活用は、診断精度を高め、医療を効率化し、コストを下げている
  • 多くの自由診療(レーシック、美容整形、歯科インプラントなど)は保険制度の外にあり、市場原理にさらされているため価格が大きく下がっている

このような点も踏まえて、あなたの投資計画も見直してみても良いかもしれません。

P.S.

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Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

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