忘れられがちな株価上昇・下落の本質
米国株式市場では7 – 9月期の決算発表が始まっています。
先週金曜に発表されたJPモルガン・チェース (NYSE: JPM)を皮切りに投資銀行の好決算が目立ち、株価上昇しています。
JPモルガン・チェースの直近株価(17日引け時点)は、決算発表前の水準から5.4%程上昇。
なぜ決算を受けて、株価が上昇したのでしょう?
発表された業績の実績値が良かった(前年比で伸びた)からでしょうか?
いえ、確かに、24年通期の純金利の見通しを従来の予想から引き上げたのですが、2024年7 – 9月期の純利益は前年同期比で2%減となりました。与信費用が膨らんだことが背景にあります。
決算直後に株価が上がった理由。主要因は、業績が市場の期待値を上回ったからです。
同社のピント社長は9月にアナリスト向けの説明の中で、『25年の純金利収入の見通しが高すぎる』と発言。市場の過熱感を抑え込みました。
期待値の発射台を低くしておいて、実績ベースで上回ってくる。
投資銀行の経営陣はお手のもので、市場の期待値『マネジメント』は金融機関の経営陣の必須スキルといえます。今回もしっかりとなされていました。
一方で、先週ロボタクシーデーのイベントを開催したテスラ (Nasdaq : TSLA) はその後、株価下落。
これは、市場の期待値と違う発表に終始した(というか市場が、自分たちの望む発表内容を勝手に期待した)ことも一因といえるかもしれません。
イーロン・マスク氏は長期視点で同社の見据える未来と投資について語ります。
かたや、市場(特にアメリカ)の機関投資家は、『せいぜい来年の業績までしか見ない(判断つかない)』というずれが生じていて、常にテスラ株への投資タイミングを難しくしているといえます。
イーロン・マスク氏はわかっていて意図的にずらしたままにしている側面がありますが、そういった目線も含め、投資家としては、市場の期待値(コンセンサス)を踏まえて、決算発表(会社による実績と予想値)を見て、買いなのか、売りなのかを判断する必要があります。
なんだか難しい、と思う方は多いと思います。なぜなら、セルサイド(投資銀行)のコンセンサスはネットの情報でも確認できますが、投資家の思惑の総和は誰にも確認できないからです。
だから、アクティブファンド(銘柄を選定して分散投資するファンド)は、勝つこともあれば負けることもある、ということです。
投資家はある程度の不確実性(=リスク)と向き合わないといけないし、そのリスクをどれだけとれるのか、理解したうえでリスクとリターンの関係を適切に保ちながら、投資をすることが重要です。
これは、プロの運用機関の発想ですが、もちろん投資家の中には、始めたばかりの方もいれば、本業が忙しくて、そんなに細かく、頻繁に見ていられないよ、という方も多いです。(というかそれが普通ですよね)
でも、そういった人にこそ、投資を継続していける環境やリテラシーが必要ということで、これまでは解けないパズルのようになっていました。
しかし、近年では投資環境が発達したので、従来解けなかったパズルが解けるようになってきています。
来年にはもっと投資環境が整います。
市場の期待値が分からない、決算発表やイベントで何が出るかわからない、株価がどっちに動くかわからない、という方であっても、
一定の期間(例えば1〜2か月の間)、一定程度(例えば10〜15%程度)の株価下落であれば許容しながらも、
損を抱えるリスクを、通常の株式保有よりも圧倒的に少なくしつつ、安定的にコツコツとリターンを積み重ねていけるような環境が手に入るようになりました。
ちょっとリスクが高い(株価の変動幅が高い)な、とか、目先はダメダメ(期待値が低い)けれど、5年後10年後には化けるかもしれないから持っておきたい、という銘柄が出てきた時に、
保守的な投資でコツコツと稼いだお金の中から投資をすれば、ある意味で、元手はゼロです。
そうやって投資の幅やバリエーションを拡げていける投資家が増えることを切に願っています。
それが、『日本の金融リテラシーが向上する』ことだと考えます。
世界屈指の航空機メーカーであるボーイングの株価が、長く低迷しています。
エアバス社としのぎを削る同社ですが、人員削減や投資不適格級への格下げ懸念を受けた増資観測など、課題が山積みです。コロナ禍の2020年以降、配当もストップしています。
我々日本人は、国策的な航空産業企業は窮地にあっても救われるという事実を見てきたので、アメリカでも同様に、同社を潰すわけがない、という連想が働きますが、かといって株価が上昇する材料が急に出てくるのかというと、疑問です。
ということで、下落している同社の決算発表が来週23日頃になされます。
市場はある程度悪材料を織り込んでいますが、何が発表されて、株価がどう動くのか。今回のメルマガテーマである、『株価上下の本質』を見る良い事例の一つといえます。
なお、2社の長期的な株価推移は以下。従来は似た値動きでしたが、パフォーマンス格差が拡大しています。
余談ですが、2年前の夏に書き上げた拙著ではエアバスをチョイスしていました。このほか、同書籍で展開した投資ロジック(利下げ環境下の対応や取引手法の高度化)については、これからようやくその効果を発揮するタイミングになってくると考えています。
志村暢彦
追伸1
米国株を中心とした長期資産形成においては、配当投資にフォーカスしたインカム・レターと、成長株にフォーカスしたキャピタル・レターにおいて、グローバルな視点で銘柄アイデアをご案内しています。
追伸2
私からの情報発信力を充実させるため、今更ではありますが、noteを利用しはじめました。
まだきちんと投稿できておらず、ほぼ空の状態ですが、近く投稿を始め、投資家に寄り添う旬な情報をお届けしていきたいと思っています。宜しければ、ご登録されてください。
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