「専門家」と「投資家」どちらを信じるべきか?
2年前、私はコロナウイルスの治療とワクチンの開発が成功しない限り、世界経済は正常な状態に戻ることができないと指摘していました。
しかしその時、医療の専門家はそれが実現するのは少なくとも12か月から18か月先のことだと述べていたのです。
しかし当時、株式市場は大幅に反発したことを覚えていますよね。つまり、投資家たちはもっと早く事態が解決していくことを予測していたということです。
なぜ、世界有数の科学者や研究者ではなく、何百万人もの投資家の動きを見るべきなのでしょうか?
まず言えるのは、「実績」があるということです。
合理的で利己的な人たちは、経済、金利、商品価格、規制、技術開発、法案、様々な産業の未来を考慮しています。そして、それらすべての情報が日々株価に反映されています。
投資家は単に意見を言うだけではありません。もし間違えば、彼ら自身大きな損失を被ってしまう可能性があるのです。
それこそ、市場が効率的だと言われる理由です。知りうる全てのことが、すぐ株価に反映されるのです。
投資家が高度な訓練を受けた科学者たちよりも優れた知識を持つ可能性があるということを、あなたは疑うかもしれませんね。
そんなあなたに、1つのお話をご紹介したいと思います。
1986年「チャレンジャー号爆発事故」というスペースシャトルの事故が米国で起こったことをご存知でしょうか?
1986年1月28日午前11時38分、米国NASAのチャレンジャー号は、フロリダ州ケープカナベラル沖の発射台から飛び立ち、その74秒後、上空10マイルで爆発しました。
打ち上げの模様はテレビで生中継されたので、このニュースはすぐに広まりました。
数分のうちに、投資家たちは、シャトルとメインエンジンを製造したロックウェル・インターナショナル (NYSE: ROK) 、地上支援を担当したロッキード・マーティン (NYSE: LMT) 、船の外部燃料タンクを製造したマーティン・マリエッタ (NYSE: MLM) 、固体燃料ブースターロケットを作ったモートン・サイオコール、この4つの企業から手を引き始めました。
この4銘柄において、最初はいずれも大きな打撃を受けたのですが…その日の終わりのこと。
3銘柄はわずかな下げにとどまり、ただモートン・サイオコール1社だけが、大きく値を下げて引けたのです。この日、モートン・サイオコールを犯人扱いするような公開情報はなかったにも関わらずです。
そして、6か月かかって大統領委員会が同社のOリングが原因だと結論づけています。一方で株式市場はすぐにモートン・サイオコールを事故の責任者と断定していたということになります。
NASAの科学者ですら知らないことを、どうして投資家が知っていたのでしょうか?
作家のジェームズ・スロウィッキー氏は、これを “集団の知恵(the wisdom of crowds)”と呼んでいます。
私たち全員が知っていることは、どんな個人やエリート集団が知っていることよりもはるかに大きいというものです。
その証拠に、私たちの周りにはこのようなことがたくさんあります。
例えば、レジス・フィルビン氏が出演していた「Who Wants to Be a Millionaire?(百万長者になりたい人は?)」という昔のテレビ番組があります。
*日本では「クイズ$ミリオネア」の名前で放映されていました。
これは4択クイズに正解していくことで高額賞金が得られるクイズ番組ですが、もし解答者が自信のない時は、自分で選んだ専門家や番組の視聴者に質問することができます。
そして実は、専門家の正答率が65%だったにも関わらず、視聴者の正答率は91%だったということなのです。
私たちは専門家の知性を高く評価していますし、尊敬もしています。しかしその一方で集団というのは彼らより賢いのです。
もちろん、専門家はそれを良く思っていないでしょう(事実、億万長者のマネー・マネージャー、ケン・フィッシャー氏は、株式市場を「大いなる屈辱」と呼んでいます)。
株価の上昇は一時的に起こるものだけではなく、経済が回復しつつあるという強力なシグナルにもなります。私は何年も講演活動を行い、このことを説明してきましたが、なかなか理解してもらえませんでした。
数年後、私はこの市場を「史上最も嫌がられた強気相場」と呼ぶようになりました。
私は株価の上昇が、先行きの見通しが良くなっていることを示す明確なシグナルだと思っていますが、人々は周囲を見渡してそうではないと判断しているということです。
そして、その多くの人たちが過去、景気拡大と強気相場で利益を出すというチャンスを逃しました。
あなたには、次に到来するチャンスを逃さないでほしいと思っています。
一部の読者から指摘があったのですが、私はウイルスに詳しい学者でもありませんし、疫学者でもありません。
しかし、35年間ポートフォリオ・マネージャーとリサーチ・アナリストを務めた経験から、株式市場の読み方について少しは理解しているつもりです。
アレックス
P.S.
次に到来するチャンスに乗るなら、この銘柄がオススメです…